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悪役令嬢の恋愛事情  作者: 水無月静琉
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6.軟禁?

 あれからまず、兄様と和登くんが帰り支度をする為に生徒会室に戻ることになったのです。

 やっぱり一度は生徒会室に行かなくては駄目でした。

 初めは私と兄様を先に車へ行かせ、和登くんだけが生徒会室に戻り、自分の分と兄様の分の荷物を持ってこようとしました。それをわたしも一緒に行って、他の生徒会役員の方に一言、謝りたいと言って、3人で戻るようにし向けました。

 もちろん、わたしは兄様に抱えられて。


 生徒会役員の方達はとてもいい人ばかりで、二つ返事で兄様と和登くんの帰宅を許して頂けました。むしろ逆に、和登くんは絶対に連れて行くべきだと強く言ってきました。

 もしかして兄様の暴走癖について知っていらっしゃる? そう思って、和登くんの顔をみるとまた苦笑いしていました。

 えっ? 兄様、わたしのいない高校一年間で、どれだけシスコンぶりを披露したのですか?

 ん? それもあるけど、中等部の頃のわたし達の様子をご存知? えっ!? わたし達、そこまで有名でした!?

 なんて事でしょう……。自宅以外では極力、兄様をデレさせないようにしていたのに……バレているなんて……。




 精神的ダメージを抱えつつ、病院でレントゲンを撮ってもらいました。なんとか骨は無事だったようです。

 だけど診断の結果は全治1ヶ月の捻挫……、結構 重傷でしたね。


 痛み止めを飲んで、充分に冷やし、安静にしていたら痛みは大分治まりました。

 ですが三日間は極力、足を使わないようにと主治医の先生に言われたので、兄様が喜々としてわたしを抱き上げて運んでくれています。

 それだけでは終わらず、寝るまであれこれと世話を焼いてくれてました。お風呂まで一緒に入ろうとしたので、流石に両頬を抓んで引っ張って差し上げましたけどね。


 ……それすら、喜んでいましたが……。

 兄様……、流石にあなたの将来が心配になるのですけど……。



 ◇ ◇ ◇



 三日間は安静に、とのことでしたので入学式の翌日から学校をお休みさせて頂いていました。しかし安静といっても、三日目となると正直 暇を持て余すんですよね。

 お出掛けどころか、散歩することも出来ずにずっーと、自宅の中。体調が悪いわけではないので、やはりじっとしているのは退屈です。

 少しくらい歩いても問題ないだろうと、立ち上がると兄様がいる時は兄様が……、いなければ南波家で雇っている使用人がすっ飛んでくるんです……。

 大分良くなりましたし、そんなに慌てるほど重傷じゃありませんよ?

 だけど、あまり迷惑を掛けるのは心苦しいので、仕方がなく居間のソファーに収まって、新しく刊行されたばかりの小説を読むことにしました。



 ふぅ、とキリのいいところまで読んだ本を置くと、和登くんの来訪が伝えられました。


「潮里、調子はどうだ?」


 居間に通されてきた和登くんが開口一番にわたしの調子を窺ってくれました。

 お見舞いに来てくれたらしいです。わたしの好きなケーキショップ『プティ・アンジュ』の紙袋を携えて。

 もしかしてそれは、シュークリームですかっ!? 流石、和登くんですっ! とても食べたかったんです!


「いらっしゃい、和登くん。わざわざありがとう。大分、良くなったわ」

「二日間、来れなくて悪かったな」

「仕方がないよ、和登くんは生徒会役員だもの。同じ立場のはずの兄様は……」

「凪だしな…」


 聞いてください!

 兄様は生徒会の仕事を放りだして、授業が終わると同時に帰宅していたんですよ!

 それどころか、自分も学校を休む! とまで言っていたんです。毎朝、運転手の笹木さんの協力を得て、無理矢理 登校させましたが……。

 心配してくれて、あれこれ世話を焼いてくれる事自体はわたしだって嬉しいんですよ? だけど、自分の役目を放り出してまでわたしに掛かり切りになるのは嫌なんです。


「今日はお仕事、大丈夫なの?」

「凪を椅子に縛り付けて任せてきたから大丈夫だろ?」

「さすが、和登くん。容赦ないわね……」


 ……椅子に縛り付けてきたんですか? 大胆ですね、和登くん……。

 それにそれって他の役員さん、仕事をしづらいんじゃないですか? 精神的暴力になりません? えっ!? 快く協力してくれた?

 生徒会の皆さま……、なんて心の強い方ばかりなんでしょう……。



 普段の兄様は冷静沈着、物事の数歩先を読んで行動する方なんです。

 だけど、わたしの事に関してだけ思慮深さというものが吹っ飛んでしまい、わたし主体で本能行動を始めるんです。

 可愛い洋服を見て、『可愛い』と呟けば即買いし、あるお菓子を食べて、『美味しい』と呟けば数十箱単位で注文したり……。

 洋服は一着なので素直に買って貰いますが、数十箱のお菓子の時はもう必死で『そんなに食べられません!』と兄様にしがみついて止めています。

 本当に迂闊なことは口に出来ません。これは幼いうちに学びました!

 ですので今は甘える時は甘えますが、過ぎたことをするようであればしっかりと叱るようにしています。

 幼い頃から一緒だった和登くんもそれを心得ているので、今回のように行き過ぎの時は、実力行使で兄様を止めてくれています。


「潮里に関わっている事で凪相手に寛容を見せたら、暴走しかしないだろ?」

「本当は優秀な人なんですけど……」


 そんな事(暴走)が続くと、実はわたしが悪いのでは? と思うことがあるんですよね。


「凪の問題であって、潮里のせいじゃないからな。そこんとこ間違えるなよ」


 和登くんがわたしの側にやって来て、ぽんぽん、と頭を撫でてくれました。

 ふふふっ。わたし、和登くんが優しく撫でてくれるの、気持ちがふわふわになって好きなんですよね。

 いつも和登くんは落ち込んだ時や気に病むわたしを機敏に感じ取り、いつも慰めてくれます。和登くんはとっても紳士的で優しいんです。


 そんな優しい和登くんをヒロインの逆ハーレムなんかに巻き込まれないようにしないと!

 わたしは改めて、決意しました。





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