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【魔王と】ルーデル無双と、謎の少年【転生者?】

爆音を響かせながら急速に上昇してゆくストゥーカの後部座席からマルクは外を眺めている。


下を見下ろす、


草原の風景はみるみる小さくなり、山を超え、遠くにはマルクが追われたばかりのシサナクの街までも見渡せる。


そして目線の横には見渡す限りの大空そして雲海が彼方まで広がっていた。


雄大な景色に、マルクは興奮を隠せない、


「すごいですね!ルーデルさん!最高な眺めですよ!」


ルーデルは操縦桿を握りながら誇らしげに言った。


「そうだろう!大空を飛ぶっていうのは気分がいい。イワンの奴等がいないのはちと物足りんがな。」


「何ですか?そのイワンって?」


「フンッ!図体ばかりでかいシロクマ共の事よ!」


憎々しげにそういうルーデルさん。


「?」


「まぁ知らんなら、それもまた幸せというものだ。奴等はキャベツ畑から次々と出荷されてくるからな。倒しても倒してもキリがない。」


「は、はぁ・・・。」


ルーデルさんの口調からして、因縁の相手とかそんなところなのだろうか。


それからしばらくの間、マルクはドラゴンを討伐に向かっているという本来の目的も忘れて空の散歩を楽しんでいた。


そしてその間に聞いた話は驚くことばかりだった。


ルーデルさんは牛乳飲んで、体操して、問答無用で相棒を今僕が座っている座席に乗っけると、この「すとぅーか」とかいう空飛ぶ鉄の鳥に乗って大空を駆け回り、異世界の戦場を暴れまわったらしい。 


そして何百もの地上を暴れまわる「せんしゃ」という鋼鉄の獅子や、何千もの「そうこうしゃ」や、「とらっく」という鋼鉄の獅子の仲間を倒し、おまけにクジラよりも大きな鋼鉄の船を沈めたこともあるという。


ここまですごいとどこまでを本当の話として信じるべきかマルクには見当がつかなかったが、


「まぁ、マルク君が信じられんのも無理はない。俺も他人がこんな話しをしてもホラ吹きの類だと思うか、それとも生涯の友と思うか、どちらかだろうからな。 だが俺は戦友に『分けてやった』戦果については割り引いて話しているつもりだぞ? 」


と、本人が言うくらいなので、少なくともある程度は本当なのだろうとその不敵な笑みを見て納得していた。


まるで高い山の頂上にいるような寒さの中、後部座席に用意されていた飛行服を着こむ。

これも魔道具の一種なのか時間がたつに連れてぽかぽかと体が暖かくなってきた。


その飛行服の暖かさと、高くなってきた日差しに照らされながら少しウトウトしかけていたその時、


「起きろ!マルク君!来たぞ、奴らだっ!」


鋭く叫ぶルーデルさんの声でマルクは目を覚ました。


身をよじってルーデルさんの座る前方の座席越しに外の視界を見ると幾つもの黒い小さな粒が微かに強化された視力に映っていた。


「あれ?ドラゴン以外の事は神託メールにはなかったはずなのに!」


「フン、おおかたでかいイワンがお友達を連れてきたんだろうよ!敵はノロマだが数が多い。囲まれんようにはぐれたやつから削るぞ!」


うれしそうにいうなり、ルーデルさんは機体を更に上昇させ、近づいていく。


距離が縮まるにつれ、次第に敵の姿が見えてくる、遠目には黒い点だったそれは翼をもった蛇のような姿へと変化して迫ってくる。その数は30ほどもいるだろうか。


「ワイバーン?!」


「ほぅ!ワイバーンとはな!あのスターリンの次に憎たらしい女神のやつめ!

無理やり契約を結ばされた時はいつか背後から愛機で叩き落してやろうと思っていたが、この世界の空中戦もなかなか楽しめそうだ!」


驚きを込めて言うマルク対して、ルーデルさんは楽しげなトーンでいう。どうやらこの人は根っからの戦闘狂のようだ・・・。


しかしルーデルさんの口ぶりだと、あの女神はあちこちでやはり同じような手口を使っているようだ。


タチが悪い・・・。。


ほどなくして、機体がほぼワイバーンの真上まで来たとき、ルーデルさんは心底楽しそうに言った。


「マルク君!行くぞ!目を回すなよっ!」


言うなり機体が真下のワイバーンの群れに向かって凄まじいスピードで落下してゆく。


「わっ!わぁああああああああ!ルーデルさん!ルーデルさん!落ちてます!落ちてますよ!」


「黙って見ていたまえ!急降下による一撃離脱だ!もっとも、ワイバーンに使うのは私も初めてだがね!」


「そんなぁあああああ!」


機体は激しく振動し、体は浮き上がりそうになるところを座席に固定したバンドが容赦なく締め付けて息も満足に出来ない。


その時、


【ダ、ダンッ!】


という破裂音が響いて機体が一瞬後ろにブレたような気がした、そしてルーデルさんの得意げな声が響く、


「おい、マルク君!見てみたまえ!墜ちるぞ!」


というルーデルさんの声に後ろに目をやると、翼に大穴を開けたワイバーンが錐もみをしながら落ちてゆくところだった。


「す、すごい!」


「まだまだいるぞ!幸いドラゴンはまだ到着しておらん。今のうちにワイバーンを始末する!」


そう言いながらルーデルさんは操縦桿を操り、機体は再び急上昇してゆく。



そして、急上昇と急降下を繰り返し、その度にマルクは襲い掛かるGと吐き気に耐えながら、自分も必死に後部機銃で追いすがるワイバーンたちを迎撃する。


「そうだっ!慌てるな、ワイバーンの飛んでいく先をイメージして撃てっ!動きの多い頭部ではなく翼を狙え!」


「そんな器用なことっ!くるなっ!くるなぁああぁ!」


【ダダダダダダッ!!】


ルーデルの的確なアドバイスにより、錯乱気味のマルクの放った銃弾がワイバーンの羽をずたずたに引き裂いてゆく。


「た、倒した・・・?」


「おぉっ!君は筋がいいな!ガーデルマンの代わりにスカウトしたいくらいだ!ハハハッ!」


「遠慮しておきます…。うぷっ・・・。」


ルーデルさんが嬉しげに言い、マルクが青い顔でそう答えた時には空にワイバーンの群れは一掃されていた。


その時、


「マルク君!来たぞ!」


「えっ?うわあぁっ!」


そう言うと同時にルーデルさんがいきなり機体を大きく横へ逸らした。


ゴオオッ!!


大きな風切り音がして巨大な火の玉がマルクたちの乗る機体のすぐ脇を通過してゆく。


「あ、アレが!」」


「あぁ、遂に本日の主役のお出ましだ!」


火球の軌道の先には、口から火焔を迸らせるドラゴンがいた。


ワイバーンを全滅させられた怒りからかこちらへ向けて怒りの咆哮を上げている。


「奴め!自分の編隊を潰されて、随分おかんむりのようだな!」


そう言いながらドラゴンへ加速しながら迫るルーデルさん。


すると空中に静止しているように見えるドラゴンはこちらへ口を大きく開けると大きく息を吸い込み始めた。


「ルーデルさん!」


「分かってる!歯を食いしばれマルク君!舌を噛むぞっ!」


そのままルーデルさんは矢のように愛機を加速させる。


ブオォッ!!グワッ!


マルクたちの行く手一面が炎に包まれる。


火焔に塗りつぶされた空の中、炎に包まれながらマルク達のストゥーカは墜ちてゆく。


火焔に巻かれて焼け落ちる蝶ように・・・


だが、


「急降下爆撃機で火の輪くぐりとはなかなか乙なもんだ!」


刹那、ルーデルさんの軽口とともに、機種がマルクの意識が一瞬刈り取られる勢いで、乱暴に引き起こされる。


急降下から一転上昇し、飛翔するドラゴンの足元に躍り出ると、炎を潜り抜けた怪鳥は両翼下に取り付けられた凶暴な37mm砲の火を噴いた。


「くらえ!」


【ダ、ダァンッ!! ダ、ダァンッ!!】 


 一瞬にして左の翼に大穴が開く。


「まだまだ!先ほどの礼だ!もう一皿いかがかね!遠慮はいらんぞ!」


【ダ、ダァンッ!! ダ、ダァンッ!!】


ルーデルの声と共に腹の底にまで響く連続した発射音が二回、大空に響いた。


『グゥオガアアアアアアアアアッツ!!』


左右の翼に大穴を開けたドラゴンは咆哮を上げながら飛ぶ力を失いゆっくりと落ちてゆく。もはや自力で飛ぶことは出来ないだろう。


そしてこの高さから落下すればいかにドラゴンといえど無事ではすまないはずだ。


「やった!ルーデルさん!やりましたね!これでクローディア領も・・・?ん?なんだアレ?」


その時マルクはドラゴンの背にとんでもないものを見つけた。


どう見ても人影が見える気がするのだ。


「?!ルーデルさん見てください!あそこ!ドラゴンの背中を!」


「?なにっ!あれは・・・!」


ルーデルはそう言いながら操縦桿を倒すと、落ちてゆくドラゴンへ迫ってゆく。


近づくにつれ見えてきたものが間違いではないとわかり、マルクは更に訳がわからなくなった。


漆黒の鎧を身に纏った少年がその背中にいたのである。


少年はジタバタして、こちらを指さしながら懸命に何かを叫んでいる。


それを見ながらマルクはルーデルさんにお願いしてギリギリまでドラゴンの背中の少年まで機体を寄せてもらった。


そして風防を開けるとその喚き声が微かに風に乗って流れてきた、


「くっそぉー!ズルいぞお前!戦闘機とかチートだろーがっ!剣と魔法の世界に何てモン持ち込んでくるんだよぉ!こんなのアリかよっ!きったねぇ!きったねぇ!」


「戦闘機ではないよ坊や、コレは急降下爆撃機だ、こんなナリはしているがね。」


そう冷静に指摘するルーデルさんに噛み付くように少年は叫ぶ、


「うるせぇよ!お前には言ってねぇ!そういう問題じゃねぇんだよ!この戦争屋め!くっそぉおおおお!俺のデビュー戦に泥を塗りやがって!お前だな!ウチのカーリーが言ってた要注意女神の手先っていうのは!」


「おーい、君はなんでこんな事をー?!テミスさんの事を知ってるのかー?!」


そう呼びかけるマルクに相変わらずわめきながら少年は言う。


「うるっせぇーっ!!今度はぶっ倒してやるから覚悟しとけぇえええ!!」


「やれやれ、騒々しい青年だな。」


「・・・」


どうやら質問に答えてくれる気はないらしく、そのまま喚き散らしながら漆黒の鎧の少年はドラゴンともども北の山脈の方へ墜ちていったのだった・・・。



お読みくださった方、ありがとうございました。

ルーデルさんの経歴はすべて本当です、というかこれより遥かに凄いです。

まさに人外。

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