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《天界急便》招かれざる女神、再び《自宅凸》

ブックマークありがとうございます。皆さんのブクマや、感想、評価は本当に励みになります!

「いやぁー、すごい人だったなあ。なんか本当にこれぞ救世主!って感じ、でてたよなぁ。キャリアもけっこうありそうだったし。僕もああいうすばらしい救世主になれるように頑張らないと・・・。」


マルクはイエスさんと過ごした素敵な時間の余韻に浸っていたが、流石に眠気を感じてきたのでそろそろ休むことにした。


「あぁ~、それにしても今日はいろんなことがありすぎたよ・・・。せめて夢のなかくらいは静かに・・・うん?」


〈コツ、コツ〉


真夜中だと言うのに、玄関のドアがノックされた。


(?こんな時間に一体?)


怪しく思いながら、戸口に立ち声をかける


「・・・、どなたですか?」


警戒するマルクとは対照的にくぐもった声だが明るい返事が返ってきた。


「ちわぁー!天界急便でぇーす!マルクさんにお届けものでぇーす。」


(?天界急便?と言うことは創造主様からの使いなんだろうか・・・。)


そう思いながら、僅かに玄関を開けると、サングラスにマスク姿、白と青の横縞の上着に、黒のズボンの制服らしきものを着た・・・


「・・・確実にテミスさんですよね?どうしたんですかその珍妙な格好は?」


そう、無限の彼方へ行ったはずのダ女神、テミスさんだった。


「えっ?や、やだなぁ。人違いですよぉ。」


(いやいやいや!どこからどう見てもダ女神のテミスさんですから!)


「ちょっとおっ!だあぁれがダ女神よっ!」


「・・・配達員さんは、何で僕の念話が聞こえてるんですかね?」


「・・・。い、いやぁ~バレちゃったら仕方ないわ!あ、あのね、サプライズでマルク君にプレゼントをね。」


「いえ、結構です(ニッコリ)じゃっ!」


【バタンッ!】


【ガゴッ!】


全力で閉めかけた扉に、(女)神速でテミスの足が挟みこまれた。


「・・・テミスさんの前世ってもしかして押し込み強盗か何かなんですか?」



「ちがうわよっ!失礼ねっ!マルク君の救世主人生のスタートを祝ってプレゼントを持ってきたのよぉ!だからね、おウチにい、れ、て?」


そう言いながら力任せにグイグイ体を押し込もうとするテミスを笑顔で押し返そうと試みるマルク。 


ダメだ・・・ビクともしない・・・いや、まだあきらめるには早いぞマルク!


「あー、ありがとうございます。せっかくですが、今日は少し素敵な出会いの余韻に浸りたい気分なので、明日にしませんか?それじゃ、そういうことで!おやすみなさい、せめて夢の中では平和を!」


そういって力強くドアを・・・閉めることができるはずが無かった。


「今見るのよっ!いーま!今じゃなきゃヤダー!」


「えぇ~何なんですかそのワガママ。・・・どうしてもですか?」


「ど、う、し、て、も、よっ!!」


「はぁー、仕方ない、どうぞ。」


・・・諦めた・・・ついにマルクは観念し女神をウチへ招き入れることにした。


マルク自身の力もかなり強化されたはずだとはいえ、どうせテミスさんの神界クラスの怪力を押し返せるはずがないことが、残念ながら判明してしまった。


それに、これ以上抵抗すると、せっかく尊敬するイエスさんが奇跡で直してくれたドアの方が耐えられないと気付いたので。


「あーあ、折角今日一日くらいは素晴らしいイエスさんとの出会いの余韻に浸っていたかったのに…。」


「んもぉ~!そんな辛気臭い顔しないのっ!おねぇさんマルク君の好みがわからなかったから、色々用意してきたのよ!結構奮発高かったんだからぁ♪」


そんなマルクに全く構うことなく、鼻歌を歌いながら、どこから取り出したのか何かの衣装や装束らしきものを次々に並べ始めるテミス。


「えーっとねぇ。まず治癒師とか宗教者のスタイルのイメージだとね、まずは袈裟でしょ、アルバでしょ、ヴィジャブでしょ、あとは~じゃんっ♪糞掃衣とかかな♪


この糞掃衣はそんじょそこらのお買い得品とは違うわよっ!なんと!私が参考にした仏教っていう宗教の逸話を参考にして、わざわざゴミ箱に捨てられた布を使って、天界の職人が一針一針丁寧に仕立てたこだわりの逸品なの!状態異常に対する絶対耐性の特殊効果があるのよっ!」


「・・・・(仏教が何かはわかんないけど、絶対にテミスさんの理解が間違っている気がする・・・。)。」


「あ、戦闘系もあるのよ!フルプレートに、スケイルメイルでしょーあとは大鎧、パワードスーツ、世紀末ファッション、○なっしースーツ。夢の国のネズミ、なんてのもあるわよっ♪」


「・・・、一応聞きますけど、これはなんですか一体?」



「やだわぁ♪マルク君の救世主ファッションに決まってるでしょ!私のお勧めはこの世紀末ファッションね!やっぱり第一印象が大切よ!!」


(え~・・・。)


テミスさんは興奮しながら語り続ける、


「この無意味に攻撃的且つ威嚇的なトゲトゲ、アヴァンギャルドなモヒカンっ!鋲を無意味に撃ち込みまくった革ジャン!まさに救世主にふさわしい威厳と風格だわっ!!」


(威厳も風格も欠片も感じられないんですが)


それも聞いて驚かないでよっ!トゲトゲの素材はアダマンタイト製!鉄壁の防御と、攻撃力を兼ね備えた優れものよ!肩を突き出してのタックルなんかが有効よっ!!革ジャンはベヒモスの革製!人界の刃なら傷つけることも難しいでしょうね!そしてモヒカンはペガサスのタテガミをオレンジに染色したわ!処女の攻撃は弱点だからモヒカンでは受けないでねっ!」


(無駄に豪華!!処女の攻撃をモヒカンで受け止めようとするシチュエーションってどんなのなんだ・・・。)


限りないツッコミの嵐を頭の中が吹き荒れるマルク少年の頭の中に浮かんだイメージは、救世主ではなく、どう考えても救世主に歯向かうやられ役になりそうな、荒馬に跨った無法者の姿だ。


テミスは構わず続ける、



「夢の国のネズミもすごいの!異世界のいわくつきの装備品でね!これを着用していると、常に黒服の暗殺者たちに付け狙われるらしいわよっ!!恐らく呪われたアイテムね、コレは!」


「何ですかそのハードモードな救世主人生!絶対嫌ですよ。何考えてるんですかっ!」


「でもね、陰のあるダークヒーローっていうか、意外性のある救世主もいいかなー?なんて思わない?」


「着ぐるみ着てる時点で、ダークヒーローも何もないですよ。ひたすらクレイジーなだけですから。仮に僕がそれを着た人に救世主宣言されたら、脱兎のごとく逃げますから。」


「えぇー、そうかしら?ワガママねぇ、じゃあマルク君はどれがいいのよっ?!」


「いや、この中からは選べない・・・っていうかまだ始まったばかりですし、そんなにかしこまる必要はないんじゃ・・・」


「だぁ~めぇ~よっ!!救世主が舐められたらおしまいなのよっ!フカしてナンボの商売じゃないっ!中身も!見た目も!地味で!平凡で!低スペックな!マルク君だからこそっ!!見た目はとっても大事なのよっ!!」


「・・・。」


「心配しないで!天界一のファッショニスタとの噂で持ちきりな、テミスさんに全てを委ねなさいっ!貴方は蝶になるのよっ!醜いサナギから空を美しく舞う蝶にっ!!マルク君も覚悟を決めさいっ!」


興奮して捲し立て、鼻息荒くらんらんと輝く怪しい瞳で肩を掴むテミスに、マルクは長い努力の末作った笑顔で言った、


「・・・テミスさん、ちょっと外へお散歩に行きませんか?衣装についていろいろお話したいですし・・・ちょっとクラクラしちゃって。(にっこり)」


「あら!大丈夫?そうよね!いきなりこんな素敵な衣装に囲まれたらびっくりしちゃうわよねっ!」


二人が連れ立って「散歩」に出かけて程なく…テミスは蝶になった。


マルクの強い意志で再び召喚されたトールによって。


夜空に美しく輝く蝶に。


「なんでぇええええええええ!!!!!うっひょぉおおおおおお!!」


雷と一体化して、光の速さで遠ざかる。

取り残された叫びをあとに残して。




そして星になって彼方へ消えてゆく姿を目を細めて眺める二人。


「トールさん、きれいですね。」


「・・・」


マルクは穏やかな表情でしばらくトールと共にその美しい光景を眺めていたが、完全に見えなくなったので、トールと握手を交わし、還る彼を見送ってから家へと戻っていった。


そして律儀にテミスが散乱させた衣装を一つ一つきれいに畳み、整頓すると、一つ伸びをしてイエスさんとの楽しかった一日を思い出しながら、彼は心地よい眠りにおちたのであった・・・。


「ふわぁ〜!ほんっとに疲れたぁ〜。今度こそ、せめて夢の中では平和を〜ムニャm・・・」

いつもお読みくださりありがとうございます。


凝りないテミスさんにさすがのマルク君もトール召喚待ったなし!笑

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