《わが家が》 ナザレ出身の大工さん(?)を召喚 《吹き飛んだ》
初感想いただきましたっ!!脳内が狂喜乱舞です。
投稿時間って何時がベストなんでしょうね…(;´・ω・)
「まったりしてる場合じゃなかった。えぇーと、とりあえずこの家をどうにかしないと騒ぎになるな・・・。」
家同士が散歩できる距離ほど離れているとはいえ、近くの村人がこの壁一枚と椅子とテーブルというシュールな我が家を見つけるのも時間の問題だろう。
とりあえず少し気持ちはすっきりしたので、テミスを呼び出そうと念話の指輪をオンにしたが、
『この念話者は、念波の届かない場所におられるか、相手の意識がないため、かかりません。暫くたってから念波を送り直しください。ご利用、ありがとうございました。ブッ、ツー、ツー、ツー。』
というやけに丁寧な口調のテミスさんの声が流れて、その後は逆に一方的に切れてしまった。
何度か念波を飛ばしたが変化はない。
「うーん、テミスさんが喋ってるわけじゃないのか?なんか口調も変だしなぁ。」
どうやら暫くはテミスに連絡を取ることができないようだ・・・。
「うーん、むやみやたらとカードに頼るのもどうかと思うんだけど、さすがに家はどうしようもないからなぁ。救世主として、注目を浴びるのは仕方ないとして、いきなり家が吹っ飛んだ農民としては目立ちたくないからね。」
すこしためらいつつもマルクはカードの山札から
「えいっ!」
(できれば大工さんと建築関係とかそれ系の人、来てください!)
そう願いながら一枚のカードを引いた。
今度の萌え萌えテミスちゃんは何故かメイド服姿のイラストだった。
スカートの両端を摘まむようにもち、ポーズをとっている。
「・・・。」
その姿が精神を蝕むが、それはあえてスルーしてカードをターンする、
「ナザレのイエス 武器:なし」
そう書かれたカード。細身の体に、頭に冠のようなものをつけているように見える。
ゆったりした衣を纏った男の姿。大工やその関係者には見えないが・・・。
淡くカードが輝きだし、男は現れた。
(気のせいかな、イエスさん自身が光ってる気がするけど・・・?)
イエスは自愛に満ちた柔和な笑みを浮かべながらマルクに告げる、
「親愛なる人の子マルクよ。友として、私は何のお役に立てるでしょうか?」
その姿はなんだかとても神々しい・・・。
はっ!いかん、なぜか見とれてしまう。 家だ家、ダメ元で頼んでみよう。
「え~と、すみません。家が消し飛んでしまったので、元通りにして欲しいんですけど?」
「!い、家・・・ですか?その、人の子が住む?」
柔和な表情のイエスさんがちょっとだけ固まったあと、当たり前のことを聞き返してきた。
やはり大工さんではないのだろう、申し訳ないことをしてしまった。
「??はい、あの、やっぱり、そんなの無理ですよねっ!すみません、いきなり呼び出して無茶なお願いをしてしまって!」
「や、そんなこともないのですが・・・。一応大工の見習い、というより父は大工でしたから・・・。わかりました、やってみましょう。」
そういうと祈るように呟いた、
「全ての理を、神の恩寵のもと、復し給え。アーメン。」
視界がぼやけた次の瞬間、時間が巻き戻った錯覚に陥った。
全てが、そう、目に映るもの全てが、女神が天井をぶブチ抜いて射出される前のまま、元通りに戻っている。
「?!すごい!イエスさん、魔法使いだったんですね!奇跡みたいだ!全部元通りになるなんて!」
「いやぁ、魔法じゃなくて、その、奇跡の方なんですけどね。ハハハ。」
「えっ?それって、まさか・・・イエスさんって?」
「はい、もうマルクさんと違って現役は引退してるんですけど、マルクさんと同じ救世主をやっていましたよ。」
イエスさんは優しくも魅力的な笑みでマルクに微笑んだ。
・・・その後、マルクはイエスさんからといろいろな話を聞いた。
イエスさんにはテミスのようなクレイジーな女神もいなかった代わりに、マルクが受けた基礎講座のようなものもなかった。
たまに神託を受けながらの手探り状態で、救世主として苦労の連続だったようだ。
イエスさんの話にマルクは時に感動し、時に涙しながら真剣に聞いていた。
いつの間にか、救世主同士二人はすっかり打ち解けていた。
口調もくだけ、わきあいあいと話す二人はとても楽しそうだ。
「いやぁ、それでね!もうホントお恥ずかしい話なんですけど、僕が一番目をかけていた弟子に密告されちゃいましてね。それもなんと銀貨30枚ですよ?酷くないですか!?」
「あぁーそれは凹みますねぇ・・・。」
ノッてきたイエスさんの話をマルクが相槌を打ちながら聞いている。
「しかも、最後は十字架を背負わされてまいっちゃいましたよ。最初は頑張って平気なフリしてたんですけど、クタクタになっちゃって、さすがにしんどいなー、座りたいなー、って。私、あんまり体力あるほうじゃないから・・・。」
「イエスさんは独学だったから、ちょっと基礎値が偏っちゃってんですねぇ。」
「いや~ホントにそうなんですよ。でね、最後は槍で刺されてね。これがまた痛いんですよグリグリぃーって!やり方がもう意地が悪いんです。ワザとこうやって槍を捻ってね・・・」
身振り手振りを交えながら更にテンションの上がってきたイエスさんをマルクは悪いと思いつつ遮った、
「イエスさーん!ちょーっとストップで。僕ちょっとそういうの苦手なんで・・・磔刑の実況はもうそのくらいで勘弁してください。」
「おや、そうですか、これからがいいところなんですけど、ハハハ。で、結局その怪我がもとで私死んじゃいましてねぇ・・・。」
(・・・・)
「・・・まっ、すぐ生き返ったんですけどね!」
「なんだぁ、間があるから一瞬びっくりしましたよぉ。そりゃそうですよねー。」
いたずらっぽく言うイエスさんは実はけっこうお茶目な人のようだ。
「あーでも、すぐって言っても私の場合3日くらいかかりましたけどね。」
「あー・・・、3日かぁ。ちょっと3日死にっぱなしとかは、辛いなぁ。ちょっと臭いとか気になるかも・・・。やっぱり、復活って大変ですよねぇ。テミスさんはあんなだから『簡単だよー』みたいに言ってましたけど。」
「いやぁ、これもお恥ずかしい話なんですけど、どうやって復活するかも私当時は曖昧で。棺の中でね、あーでもないこうでもないとやってるうちに時間が経っちゃいましてね。コツがわかればすぐだったんで、マルクさんはきっとサクッと生き返れますよー。自信持ってください!」
「そうなんですね、頑張ります!!って、僕死ぬのいやなんですけど!」
「そうでした、そうでした、ごめんなさいマルクさん。フフフッ。」
こうして意気投合したイエスさんとの話は盛り上がったが、真夜中を過ぎたころ、イエスさんがそろそろお暇すると言い出した。
「いやぁ、予想外に長居をしてしまいました、そろそろお暇しますね。今日はとても楽しかったです。最初に『家を直して下さい』って言われたときは正直ちょっとびっくりしましたけどね。」
「あの時は本当にすみませんでした。まさかイエスさんが同じ救世主の先輩で、しかもこんな尊敬できる素敵な方だったなんて知らなかったので、つい・・・。」
「いえいえ、私も大工の息子に生まれたくせに、今まで一度も自分で家を建てたことがありませんでしたからね、弟子たちにいい土産話ができました。
もっとも、あれでは建てたうちに入らないと言われてしまいそうですけどね、ハハハ。」
「そうですね、一瞬でしたからね、フフフッ。・・・、では、イエスさんお元気で。今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ、いいんですよ。・・・、マルクさんに善き救世主として神のお導きがありますように。」
互いに言葉を交わすと、硬く握手を交わした。
イエスさんは手を振りながら、あの微笑を浮かべ、透けるように消えて、還っていった・・・。
きっと実際に会ったらすごく話しやすい人だと思うんですよね、イエスさん。
んなわきゃないかな?笑
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