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【白い死神】 敵襲 【伊庭八+鬼副長】

ここにきて新たに評価いただきました。ありがとうございます!

すみません、仕事の都合により、数日お休みさせていただくかもしれません。

完結まであと一息のところ申し訳ないのですが・・・。

紛れもない、敵襲だ。


広間を囲む建物のありとあらゆる屋根に黒い影があった。


暗い草色の装束で全身を覆っており、個性は意図的に殺されている。 


30人ほどの集団のそれは魔法だろう、短弓からとは思えないいしゆみのような威力の矢を飛ばし、次々と鎧を貫いて兵士達を打ち減らしてゆく。


「ちいっ!」


シベニクさんはアリーナと高速で迫る矢を振り払いながら、抱きかかえるようにマクスウェル王を引き寄せると怒号をで号令を飛ばす。


「近衛重装歩兵集合っ! 陛下を守り参らせよっ!」


「「「ハッ!」」」


その声で一瞬の動揺から立ち直った兵士達が装備の割りに素早い身のこなしで集まると王の周りに大盾の壁が出来た。 そのまま一塊となって王を囲んだままジリジリと後退してゆく。


その時、


【ターンッ!】


その乾いた破裂音に一瞬場が凍りつくが、グラリと倒れたのは広間を囲んだ装束姿の一人だった。


【ターンッ!】【ターンッ!】【ターンッ!】


最初の一発を皮切りに連続した破裂音が響き、装束姿の襲撃者は次々と倒れてゆく。


狙われていることは理解しているがどこからどうやって反撃を受けているのかが全くわからず、逃げていても謎の攻撃で倒される。


そして二度と起き上がらない。


明らかに襲撃者達は動揺しているようだった。


マルクは勿論、襲撃者も知りえないことだが彼等は全て『ヘッドショット』によって一撃で頭を撃ちぬかれ、息絶えていた。


(マルク君、聞こえるかね?姿が見えず敵を把握するのが遅れ、先制を許してしまった。 すまない、今から掃討を開始する。)


(シモ・ヘイヘさん?! 良かった! 姿が朝からずっと見えないので不安でした)


そう聞こえてきた念話は朝王宮に来ると同時に呼び出したカードから出てきた「シモ・ヘイへ」さんであった。


もっともルーデルさんの時と同じように、カードが消えても最初から姿は見えず、


(マルク君、状況は把握している。安心したまえ、できうる限りの事はすると約束しよう。)


と最初に念話で言ってきたのと、暫くして、


(配置についた。いつ状況を開始しても結構だ。)


という念話が聞こえてきたのみだったので、正直不安だった。


それでも今までのカードが(アリーナの呼び出した義昭さん以外)しっかり仕事をしてくれていたので、マルクはシモ・ヘイヘさんの言葉を信用して自分はシベニクさんとアリーナと共に襲撃に備えることにしたのだった。


安堵の声を上げるマルクに淡々と答えるヘイヘさん。


(居場所を隠匿するのも作戦の重要な要素なのだ。 まさかやつらも襲撃の直前まで魔法で居場所を隠匿するとは誤算だったが。 卑劣な襲撃者どもは当分私の狙撃地点などわかるまい。 まさか三百メートル先の尖塔から狙撃されているとは中世のような世界の住人の思考では思いもよらんだろうからな・・・。)


「マルクさん!こいつは?!」


やや驚きの色を交えて問いかけてるシベニクさん。


「シベニクさん安心してください味方ですっ! 女神の使徒が今襲撃者達を狙撃しています!」


「おおっ! 例のドラゴンを打ち倒したというあれか!」


「ええ、違う使途の方ではありますが!」


「なんなのよっ!隠し玉があるんなら先に教えないさいよっ!」


「なんにせよ助かる! お手柄だマルクさん! 奴らめ、逃げるのに必死で矢を射る暇は無いと見える。 このまま陛下を王城へ・・・」


断続的に響く銃声の中、アリーナが文句を言い、シベニクさんがそう言いかけた時、重装歩兵の壁の一部が吹き飛んだ。


吹き飛ばされた重装歩兵は大盾諸共、くの字になって空中に舞い上がり、地面に叩きつけられると血反吐を吐いて動かなくなる。


「おのれっ何もn・・・?! 何なんだコイツ等は!?」


「あいつらの矢のせいなの? 気持ち悪いったりゃありしないわ!」


怒号と共に剣を構え振り返ったシベニクさんの視線の先に異様な物体がいた。


矢を受けて倒れたはずの兵士『だった者』が・・・。


体は赤黒く膨張し、耐え切れなくなった鎧は弾け、着ていた服もぼろきれとなって纏わり付くのみである。


目は完全に正気を失い、憤怒の表情に彩られている。


その怪物は一体ではなかった。 初撃の矢に倒れた兵士たちが全て異様な姿に膨張して周りの兵士を暴風のようになぎ倒しながらこちらへ向かって進んでくる。


【ターンッ!】


シモ・ヘイヘさんの攻撃だ。


王の囲みを破壊しようとしていた先ほどの一体の体が破裂音と共にゆっくり傾ぐ。


・・・が何事も無かったかのように体勢を立て直すと重装歩兵達をなぎ倒し始めた。


「なんなのよっ?! 効かないじゃないっ!」


その様子に慌ててアリーナは王を護りながら後退する。


(マルク君! いかんぞ! こいつはモシン・ナガンの火力では歯が立たん!)


(そっ、そんな!)


シモ・ヘイヘさんの焦りを含んだ念話に動揺するマルクをよそに、シベニクさんは崩壊しつつある重装歩兵の壁に代わり、自らが盾となるべく重装歩兵を蹂躙する怪物の前の躍り出る。


「アリーナ! 王を護れ! オラアっ! 調子こいてんじゃねぇぞ! この化け物が!」


「ゴロォオオッス!」


【ドガァアッ】


怪物の雄たけびと共にシベニクさんを狙って打ち下ろされた拳が石畳を粉々に砕くが、シベニクさんの姿はそこには無い。


「ハッ、もう一回死んできやがれ!」


そういうなり、懐へ走りこむと怪物の心臓へ自らの剣を深く突き立てた。


「これでどう、 『グフフフフッ!』 な、なにっ?! くっ!」


怪物は笑っていた、シベニクさんの剣を深々と胸につきたてたまま。


それどころか自分の胸に突き立った剣を怪力で掴み、引き抜こうとするシベニクさんの動きを制すると、空いた腕でシベニクさんの胴体を抱くように締め上げる。


【ベゴッ!】


鈍い悲鳴を上げてシベニクさんの胴を守るプレートアーマーが凹む。


「か、はっ!ゲホッ! く、くそがぁああっ!」



痛みに顔を歪めながらも鬼の形相で、剣を手放し、怪物に殴りかかろうとするシベニクさん。


しかし形勢は絶望的・・・、その時突然硬質な音が響いた。


【キンッ!】


そしてドサリとシベニクさんを拘束していた腕が地面に落ち、シベニクさんが投げ出される。


「がはっ!ゲホッ、ゲホッ! ・・・もうちっと・・・やさしく、おろ、せ・・・。」


アリーナだ。


「何泥臭いことやってんのよ!しっかりしなさいよ、怪力オヤジ!マルク早く手当てを!」


「わ、わかった!」


マルクにそう呼びかけると強化された力で軽々とシベニクを抱えるとマルクの元へそのまま走ってくる。


しかし、後ろから片腕を切り落とされた尚追撃をかけようとする怪物、その時シモ・ヘイヘさんの緊迫した念話が響く、 


(今そちらへ武器を持ち替えて全力で向かっている! が、いま少しかかる! 何とかそれまで持たせてくれ! 時間を稼ぐんだ!)


(けど・・・。)


(私を呼び出したカードがあるだろう?! 二枚目を切れ!)


(えっ?! でも・・・)


(いいから早くしろッ! いまは躊躇している暇は無い! )


(わかりました!)


そうシモ・ヘイヘさんに応えると、マルクは祈るようにカードを引いた。


光に包まれ、一人の男が姿を現す。


そう、本来の戦場に呼び出された男が。


「マルク殿、久しいな! わかってるな! 私の本来の俺の使いどころってやつを!」


「あなたは?! 土方さん!」


「ちぃとばかし早く呼んでくれても良かったんだが。 まぁ、主役は遅れてくるもんだからな!」


そういいながらマルクから今シベニクをマルクの前に横たえたアリーナに向かって声をかける。

 

「おい、そこのお嬢さん。」


「? なによ? あんた誰?」


「おれは鬼副長の土方ってモンだ。 ちっとばかしそいつに体を貸してやってくれねぇかな?」


そういいながら、アリーナの腰に下げられた剣を指差す。


当然アリーナは困惑顔だ。


「はぁ? なにいって、いって・・・『久しぶりだな、おぬしみたいな鬼が天界におるとはのう。』・・・。」


アリーナの声は途中で口調まで変わり、放つ雰囲気まで変わる。


どうやらシベニクさんとの試合のときと同じように『彼』が身体を一時的に借りたようだ。


「うるせえよ! お前こそこんなとこでお嬢さんの守役とはなかなか面白いことやってるじゃねぇか?」


『フン、おぬしこそ余計なお世話だ。ちとこの戦はこの娘には荷が勝ちすぎるからな・・・。 おっと、お喋りは後だ。来よるぞ! 図体ばかりでかい悪鬼共め!』


「だな、いくぜ『イバハチ』!」


『応ッ!』


そういうなり、二人は翔けるように怪物達へと向かっていった。


こうしてその背後でマルクがシベニクさんの治療を始める中、異世界で「伊庭八」と「鬼副長」として恐れられた二人が異世界で猛威を振るう時間がやってきた。




お読みいただきありがとうございます。 あと数話で完結の予定です。

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