【蹴鞠将軍】ハズレくじのゆくえ【自分が足蹴にされるの巻】
(ちょっと・・・あんまり強そうじゃないわよ? どうなってんの?)
(知りませんよ!勝手に呼び出すから!)
(あっ、そういう冷たいこと言うのね。ふーん。)
(いやいやいやー)
そう2人が念話で応酬しているとおもむろに男が口を開いた。
「お主がワシを呼び出したのか? 女よ。」
そう言いながら威厳を出そうとしているがアリーナよりも随分背が低く華奢なので、完全に迫力負けしている。
・・・本人は気にせず胸を張ってイキっているが。
「そうよ! おっさん、偉そうね。」
「当たり前じゃ! ワシは、室町幕府第15代の将軍足利義昭なるぞっ! 本来は貴様ら下賤の者など口をきくことすら出来ん尊い身じゃ! だが特別に直接言葉を交わすことを許そう。 して此度は何故儂を呼んだのじゃ、申してみよ。」
「明日この国の王様が暗殺されるの。」
「ほう! それで我を新たな王に据えようというのか! 殊勝なことじゃ、褒めて遣わす!」
「「・・・」」
とことんポジティヴな人である。
どうやら『ショーグン』というのは『カマクラバクフ」ではよほど身分の高い地位のようだ。
「アンタばっかじゃないの! 殺されないようにすんのよ! あんたも手伝いなさいよっ!」
「うぬぬ、無礼な小娘じゃ! おのれ手打ちにいたすぞ! 誰かある! であえ!」
「「・・・」」
勿論誰も来ない、当然ながら。
「・・・そろそろ切ってもイイかしら? ショーグンさん?」
「まぁまぁ、落ち着いてアーリアちゃん!」
剣を抜き、慌ててマルクに羽交い絞めされているアーリアにさっきまでの態度は霧散し、崩れ落ちるようにヘタリこむ義昭さん。
「おっおっ、落ち着け! お主女のくせに弾正忠より恐ろしい奴じゃの! 何が所望じゃ!申してみよ!」
「分かればいいのよ。暗殺を阻止すんのよ、アンタもなんか協力しなさいよ。」
「なんじゃ! そんなことか。 ちとまっておれよ・・・。」
そ石畳に座り込むと、薄く、白く、きれいな長い紙に何かを書き始めた。
「よし! これでよかろう! ほれ、女。 これを遣わす。」
「なによこれ? あ!もしかしてアンタ魔法使いなの?! 確かにどう見ても戦士には見えないもんね! で? コレは高位魔法? それとも何かの召喚陣なの?」
目を輝かせながら言うアリーナに義昭は再び立ち上がるとふんぞり返っていった。
「逆賊撃つべし! との檄文じゃ!」
「は?」
「察しが悪いのう、女。 この儂、将軍義昭の名でその国王とか申す者に仇為す者どもを逆賊として討つことを命じた書じゃ! これで兵を集めるなり、軍資金を調達するなりするが良い。 礼には及ばんぞ、女よ。 」
誇らしげに言う義昭さんの前でアリーナはワナワナと震えていた。
「・・・いいわ。」
「ん? なんじゃと?」
「もう還っていいって言ったのよ! この役立たず! 」
「な、なんと無礼な! この比類なき尊き身分の儂に向かって!」
最後のプライドを振り絞って口角に泡を飛ばしながら喚く義昭さんについにアリーナは我慢の限界に達したようだ。
「・・・」
【パチリ】
「な、何をする、鯉口を切りおって! 弾正忠でもワシに直接刃を向けたりはせなんだぞっ!」
「いいからさっさと還れぇえええ!!!」
乱暴に扉を開け放つと石畳の廊下へ義昭さんを蹴り出すアリーナ。
「無礼者ぉおおお!!~~~~~・・・・。」
そう叫びながら義昭さんは石壁にぶつかる前に透けるように消えて還っていった。
「ハズレ・・・だったね。」
「・・・そうみたいね。」
「必要ないのに勝手に使うから・・・。」
「うっさいわよ。 ほら、返すわ!」
「あ!とっ!とっ!」
マルクにカードの束を放るアリーナ。
それきりまた会話は途絶えた。
「あ・・・じゃあそろそろ帰るね。なんかゴメン長居しちゃって。」
部屋を出ようとするマルクにアリーナはそっぽをむきながら言った。
「・・・ありがと(ボソッ」
「え?」
「ありがとうって言ったのよ! ちゃんと聞いてなさいよさっきから。 ボヤっとしすぎでしょアンタ!」
「ど、どういたしまして。」
聞き返したマルクに今度は真正面を向いて怒ったような剣幕で言うアリーナ。
マルクはタジタジである。
「フン・・・。明日ヘマしないでよね。」
そう偉そうにいいながらマルクを指さすアリーナ。
「うん、いよいよ明日だね。」
マルクはあくまでも笑顔だ。
「そうよ、だからアンタもさっさとあの怪力オヤジの所へ帰って寝なさいよ!」
「わかったよ、じゃあお休み。元気になったみたいでよかったよ。」
マルクは笑顔のまま手を振りつつ部屋を後にしていった。
「・・・オヤスミ」
閉まるドアを見届けたアリーナはベッドへダイブしゴロゴロしながら一人不満げを装いながら言う・・・。
「まったく、どこまでお人よしなのよアイツは。 調子狂うわ・・・。」
だがその表情はどこかうれしげに見えた。
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次の日、閲兵式は予定通り盛大に催された。
マルクとアリーナの予言を聞いて心配する者ももちろんいた。
だが大方の反応は違う。
信半疑か、ハナから馬鹿にしているかのどちらかだ。
だがそれでもマルクとユーリアがマクスウェルの警護に当たるべく閲兵式に列席を許されている。
国王自らがマルクを「救世主」であると認定した事が大きかった。
(アリーナは「救世主」を自称していないので公認はされていない。)
さらにシベニクさんもマルクの後ろ盾になってくれたので、
「国王は我等がお守りする! 余所者がでしゃばるな!」
と噛み付いてきた(らしい)武断派の連中も表面上は大人しくして、マルクたちに絶賛敵意に満ちた視線を送ってくるに留まっている。
更にあの試合の後、騎士団に働きかけてアリーナを臨時の「客将」扱いにすることで警護のために列席する肩書きを整えてくれていた。
見た目に反してしっかり事務的な仕事もソツなくこなしてくれているシベニクさん、できる男である。
「ほれっ!身分証明書と、客将の徽章だ。無くすんじゃねぇぞ。」
朝、控えの間。
アリーナに乱暴に押し付けるシベニクさん。
「別に頼んでないのに・・・。アンタも意外にお節介なのね、おっさん。」
「うるせぇ、お前のためじゃねぇよ。陛下の為に『腕の立つ』護衛が必要なだけだ。勘違いすんな嬢ちゃん。」
「も~なんで二人とも素直になれないかなぁ・・・。」
「「なにがよ(だよ)っ?!」」
「・・・」
という一幕があり、3人はめでたく(?)王のそばで揃って警護の任にあたっていた。
閲兵式はいよいよ大詰めだ。王宮から煌びやかな式典用の鎧兜に身を包み出発した騎士たちが王都の中心にある広間へと集まってゆく。
国王が王都の広間に設けられた即席の王座に威令を正して鎮座している。
マルク達も、大臣や諸侯が立ち並ぶ列とは反対に陣取ってその様子を眺めていた。
続々と近衛騎士団をはじめとする騎士が整然と立ち並んでゆく様はさすがに圧巻だった。
その隊列を間近に見ながらシベニクさんが視線は前に向けたまま、声量を抑えて隣のマルクにささやく。
「こねぇな・・・。」
「えぇ、予言は(90%で)必ずしも絶対ではないとも言ってましたから・・・。」
「ふむ、そんなもんか・・・。」
「まぁでもこのまま何事も起きなければ僕はまたえせ救世主呼ばわりされてしまいますね・・・。」
少しだけ自嘲をこめてマルクが言うとシベニクさんはムキになったように囁き返す、
「馬鹿いうな、そんなことは俺がさせねぇよ。」
そのとき、それまで一言も発しなかったアリーナが鋭い声で二人へ呼びかける。
目と鼻の先では、最後の重装槍騎兵が広間へと入り、整列が終わろうとする頃、
「剣が騒いでるわ、殺気よ!」
それを聞いて迷わず玉座の前に躍り出て、王を庇う形で剣を構えるシベニクさん、ほぼ同時にアリーナ、一拍遅れてマルクも飛び出す。
「なっ!何事ですかシベニク殿! 陛下の御前ですぞ!」
「襲撃だ!」
その時、風を裂く音が聞こえ、大量の弓矢が空から広間へ降り注いだ。
お読みくださりありがとうございます。
史実ではそれなりの人物だったとはおもうのですが、すっかり今川義元と言いこの人と言い、拭えないマイナスイメージがw
1000%コーエーの風評被害です、本当にありがとうございました。
後暫し応援よろしくお願いいたします。