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【濫用はダメ!ゼッタイ!】アリーナ勝手に魔法のカードで召喚をする。

「んっ・・・」


そう小さく呻いて身じろぎするアリーナ。


意識を失い、マルクの治療が治療を施した後もアリーナはずっと眠ったままだった。


今は真新しい肌着に着せ替えられ、王宮内のアリーナにあてがわれた一室。


マルクは王宮勤めの侍女達がアリーナの身繕いをしている間以外ずっと彼女の枕元に付き添っていた。


すると身じろぎのあと、唐突にパチリと大きな目を見開いて独り言のように言う。


「・・・ここは?」


「目が覚めた?良かったぁ~。傷は治したんだけどなかなか起きないから心配したよ。」


心配そうに言うマルクにそのとき初めて気づいたようにゆっくりと手の甲を額に乗せたままの姿でマルクを視線に捕らえた。


そして腹部に手をやるが、『何もなかったかのように』そこには何の違和感も感じられなかった。


「アンタ・・・治療してくれたの?」


「うん、一応。っていっても鎧のおかげで打撲くらいだけだったみたいだけどね。」


指差した先にはシベニクさんによって盛大に凹んだ鎧が転がっている。


チョイ悪オヤジ、容赦なしである。


「フン・・・、お人よし。」


大きく伸びをすると体の様子を確かめるように腕を振り回したあと、軽く勢いを付けて身軽に寝台から起き上がった。


「まぁ、それだけがとりえみたいなもんだしね。」


苦笑して答えるマルクに直接は答えず、視線をはずしてアーリアは言った。


「・・・アンタ、救世主なんだって?」


「えーっと、まぁ一応そういうことになってるんだけど。」


「だっさ。」


「え、えっと・・・。」


「アンタよくそんな恥ずかしい呼び名で表を歩けるわね、私はムリ。」


斬って捨てるようにいうアリーナ。


「ははは、まぁ、たしかに。」


しかしマルクは苦笑するのみである。(いれてみれば確かにそうだと思ったので・・・。)


そんな挑発にまったく乗ってこないマルクを見て、アリーナはあきらめたようなため息を吐いてぽつりと言った。


「・・・剣よ。」


「えっ?」


「見たでしょあんたも、私の剣は特別なの。元の持ち主だとかいう凄腕の剣豪の魂が宿ってるんだってさ。

普段は私の力を増幅したりサポートするだけだけど。 


ああいう風に私が押されちゃうと体を『借りて』敵を叩き斬るってわけよ。」


そう一気に言って、寝台に勢いよく腰掛けながら頬杖をつくアリーナ。


「そうなんだ・・・。それを、その・・・女神から?」


「そうよ、『お前には何の才能もない。だからこれをくれてやる。ありがたく思え。』だって。そう言われたの、ほんっとムカつくわ!」


そう拳を握る彼女は怒ってはいるが、微笑ましくも見える。


「そっか、じゃあ僕と一緒だね。」


「え?」


「僕も言われたんだ、『戦闘系のスキルは全然才能ない』って。」


「でも・・・回復魔法使えるじゃん。」


アリーナがいい、またそっぽを向くのであわててマルクは補足する。


「あっ!これはね。ほんの少しだけ適正があったからテミスって言う女神様が限界まで力を引き上げてくれたらしいけど・・・。」


「あー、そういえば私も言われたわ。 『素早さと体力は人並み以上だからその辺りは幾らかマシにしてやった』とかなんとか。」


そう悔しそうに言うアリーナ、


「あはは、一緒だ。」


マルクが笑うと、アリーナはこちらへ向き直りジト目でにらみながら、


「あたしも回復魔法とかが良かったなー」


等と言い出すので、マルクは困ってしまう。


(自分の治癒魔法が羨ましいのかな? そんな良い物でもないんだけど・・・。)


「「・・・」」


そこで会話が途切れ沈黙が続く。


しばしの時間が流れ、気まずくなったマルクが会話の糸口を探して口を開きかけた時、アリーナが独り言のように言った。


「あのね、襲われたの。」


「えっ?」


「魔物に、私達の村が。」


その顔にはどんな感情も浮かんでいなかった。


ただおきたことを淡々と語り始める。


「そう、だったんだ・・・。」


「それでね、そのときに『女神だ』って名乗るやつがいきなり現れてね。」


「契約しろ、って?」


「ええ、『するかしないかはお前の自由だが、しないとお前と村人は死ぬだろうな』だってさ。そんなの契約するに決まってるじゃん!」


しかし、そのときの瞬間を思い出したのか理不尽な運命の選択にアリーナは再び憤っていた。


「まぁ、そうだよねぇ。」


マルクも苦笑しながらそう答えるしかなかった。


テミスさんに散々振り回されてきたせいか、『女神なんてやっぱりそんなモンなんだな』という心境に至りつつあり、普通なら十分理不尽な運命の押し付けにもそこまで怒りの感情はわかなかったが。


「アンタは?」


「ん、僕?」


「アンタは何で『救世主』の契約しちゃったのよ?」


アリーナは逆にマルクに問う。


「いや、そのなんか、『石鹸あげるから!』とかなんとか・・・」


言いかけたマルクに被せるようにアリーナの甲高い声が響いた。


「ハァ!? バッカじゃないの? 信じらんないんだけど。」


確かに今の表現は誤解を生む。


「うーん、なんと言うべきか・・・。断って逃げようとしたんだけど、全然逃げられなくて・・・。


『断ってもいいけど絶対断れないこの状況』


って感じでさ・・・。」


慌てて弁解すると、あんがいアリーナはすぐ納得してくれた。


「ふぅん。まぁウチの『アスタルテ』も


『アリーナは私を酷いと言うが、テミス程ではない。他の女神を知らんからそういうのだ』


とか言ってたしね。お互いえらいのに目を付けられちゃったわね。」


気の毒そうな表情でマルクを見るアリーナ、まったくそのとおりだ。


「アリーナの女神様はアスタルテって言うのか。 そうだねぇー。普通に農民として穏やかに生きたかったんだけどなぁ。」


「あんな奴に様なんてつけるんじゃないわよ! ・・・あれ? アンタ貴族様じゃないの? 苗字持ってたじゃん?」


訝しげに問うアリーナ。


あんな態度だったが、ちゃんと自己紹介を覚えていてくれたらしい。


「違うよ、いや、6年くらいは貴族だったけど。」


「・・・ワケわかんないんだけど?」


「えーと、養子とかいろいろあってさ。やっと慣れたかなーって思ったら去年領地が魔物に襲われてねー。」


「・・・」


「幸い、領民の人たちは早めに逃げることができたし、僕も元々住んでたおばあちゃんの家で生活し始めたんだけど。 今度は女神でしょ? も~本当に参っちゃうよ。」


そういって頭をポリポリと搔く仕草のマルクに初めてアリーナが笑った。


「フフッ、アンタもなかなか運のない人生ね。」


「ほんとそうだよ、ハハハッ。」


それにつられてマルクが笑う。


そこで思い出したようにアリーナが、


「そう言えばさ、アンタの武器って何よ? 今の口ぶりだと、私の身体強化のスキルと同じで治癒魔法はオマケみたいなもんなんでしょ?」


そう言いって探るようにマルクを見つめてくる。


あまり女性にまじまじと見つめられることのないユーリアはそれだけでタジタジである。


(因みにサイコ女神はノーカンである。 勿論。)



「え、えっと。これ、なんだけど・・・。」


マルクは懐から女神特性マジックアイテムのカードの束を取り出す。


「アンタ・・・私をバカにしてんの? ・・・斬るわよ?」


手元を見ると一番上の絵柄は猫耳肉球の萌え萌えテミスちゃんであった・・・。


「ちょ、ちょっと待って! ふざけてるのは僕じゃなくて、テミスさんっていうか。 これはテミスさんのマジックアイテムでね・・・」


そういいつつ、説明を始めるマルク。


最初は眉根を寄せて聞いていたアリーナも説明の終わりには目を輝かせていた。


「ちょっとアンタ! 何よその反則みたいなアイテムは!  ずるいわっ! 貸しなさいよっ!」


そう言うが早いかカードをマルクの手からもぎ取り、鼻息荒くカードを見つめるアリーナ。


「あっ! ちょっと! これは必要のある時だけしか使っちゃいけないんですけど・・・。」


「何ケチ臭いこと言ってんのよ! 減るもんじゃないんでしょ! 私が必要と言ったら必要なのよ!出てこい! すんごい強いヤツ!」


(なんてアバウトな・・・)


そして『No more! カード泥棒!』というプラカードと共に謎のコスプレをした萌え萌えテミスちゃんを裏返すと不思議な身なりの貧相な髭面の細面のおっさんが描かれていた。


カードの下にはこうある。


【将軍:足利アシカガ 義昭ヨシアキ】 【特技:蹴鞠】


そしてカードが光り、目の前に男が現れた・・・。

お読みくださりありがとうございます。

濫用はダメ!ゼッタイ!(何の話?



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