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【代理戦争勃発】 鬼のシベニク VS 救世主(?)アリーナ

いつもお読みくださりありがとうございます。

あまりにPVが伸び悩んでいる事と、執筆ペースの関係で、この「残念女神」シリーズは一旦国王暗殺編をもって終わりにさせて頂きたいと思います。いつも読んでいただいている方は、あと暫くおつきあいください。


「失礼いたします。」


聞こえてきたのは女性の声だった。


扉が開くとともに現れる女性。


年のころはマルクと変わらない、16歳と言ったところだろうか。


背はマルクより少し低い165センチほど、勿論女性としてはかなり高い。


均整の取れた引き締まった肢体に褐色の肌。


赤毛の長い髪を馬の尾のように束ねて、後ろへ流している。


顔つきは美人だが、眉は細く、目は大きいが、マルクを品定めするように細められていて気が強そうだ。


鎧は急所のみをプレートで覆い、それ以外は硬質な艶のある革鎧でカバーしている。


腰に佩くのはショートソードよりわずかに長い湾曲した細身の刀剣。


あまり見たことのない拵えで、異国情緒を感じさせるような雰囲気だ。


「紹介しよう。 この者が先ほど言っておった剣士アリーナじゃ。 アリーナよ、ここにおられるマルク殿もそなたと同くワシの暗殺の神託を受け、わざわざ王都まで足を運んでくださったのじゃ。」


「・・・そうですか。」


「マルク・ホーバットと申します。(不幸な)縁あって救世主として遣わされました。アリーナさん、よろしくお願いします。」


「・・・」


マクスウェル王にいかにもぞんざいに一言答えたきり、マルクの自己紹介には一言も答えない。


少女は黙ってマルクを品定めするような視線でジロジロと見ていたが、


「・・・フン。」


一言いうとそっぽを向いてしまった。


「えっ・・・、あ、あのー」


戸惑うマルクの脇で、怒気を爆発させたチョイ悪オヤジがいた。


勿論シベニクさんである。


「・・・陛下、アリーナ殿はかなりの剣技の持ち主とか。ぜひ手合わせをさせて頂けませんかねぇ?」


「おぉ! それはいい考えじゃ! かつて王国最強の剣士と呼ばれたお主も最近は良き相手に飢えておろう。さっそく練兵場を空けさせるゆえ、思う存分剣で語り合うとよい!」


マクスウェル陛下の表情はあくまで明るい。


強者同士の戦いを単純に楽しみにしているようだ、この場の何とも言えない険悪な雰囲気には勿論気づいていない。


「私は別に構わないわ。」


「そりゃありがたい。 思う存分、剣で語り合おうお嬢さん。」


相変わらず興味なさげにそっぽを向いたまま答えるアリーナ。


少女に向かって獣性の濃い笑みを浮かべて嬉しそうに低い声で言うシベニクさん。


こうして救世主(?)アリーナと対面して5分で、いきなりマルクを蚊帳の外にした代理戦争が勃発したのであった。


「何でこんなことに・・・。」


一人マルクの困惑を置き去りにして・・・。


********************************



数刻ののち、国王と僅かな近習が護衛の兵士と共に練兵場に興味津々の表情で集まっていた。


勿論その視線の先には「鬼シベニク」と言われた王国最強の剣士と、ふらりと現れて食客として遇されていた凄腕だという剣士、アリーナがいる。


因みにマルクは国王の側で所在なさげに立っていた、そして心配そうに言う。


「けど、本当にやるんですか・・・『真剣』で・・・。せめて試合用の刃引きした剣とかにしませんか・・・。」


「心配するなよマルクさん。どう考えても俺がこのお嬢さんに後れを取るとは思えねぇ。

それにだ、マルクさんがいれば死なない程度の傷ならあっという間に治せるだろ?」


アリーナを睨みつけながら言うシベニクさん、もはや『鬼』は戦闘モードだ。


「そりゃそうですけど・・・。アリーナさんもそれでいいんですか?」


その様子に呆れつつ、ダメもとでアリーナにも問うがこちらも返事は似たようなものだ。


「構わないわよ。だって私が負けるはずがないもの。」


「言ってくれるな嬢ちゃん。へへへっ。」


かえってシベニクさんの怒りの炎に油を注ぐ結果となってしまった。


(まぁ、最悪死んでも何とか出来るんだろうけど、あんまりグロいのは見たくないなぁ・・・。)


そうグロ耐性のないマルクは心の中で呟く。


「よいかなお二人とも。非公式とは言え、御前試合である。頭上と胸に付けられた花飾りどちらか一つを落すか、いずれかが武器を取り落とした時点で勝負ありとする。正々堂々と勝負するように。」


その二人の様子に見届け人の騎士団長もやや呆れ気味に注意を促す。


そう、真剣を用いてとは言え殺し合いではないのだ。 


なのにこの今にも血を見そうな剣呑すぎる雰囲気に、騎士団長とユーリアはドン引きしていた。


無邪気にショー感覚で楽しんでいるマクスウェル王と近習は修羅場と縁遠い世界で暮らしているせいか、全く気付いた様子はない。


ある意味幸せな人たちである。


そして、見届け人の言葉のあと、いよいよ合図とともに試合が始まる。


「はじめっ!」


号令と共に振り下ろされた見届け人の合図とともに、先に仕掛けたのはアリーナだった。


というより、アリーナの爆発的な人間離れした加速にシベニクは初動を受けに回らざるを得なかった。


「たぁあああっ!」


【ギイィンッ!】


「くっ!」


低い姿勢のまま爆速で一気にシベニクさんの懐に入り込んだアリーナが剣を真横に一閃する。


それをシベニクは辛うじて自らの剣で捌いていた。


「フフフッ!やるじゃない、褒めてあげるわおじさん。でもその年でいつまで持つのかしら?」


そう言いながらさらに踏み込むと残像が見えるほどの剣戟でシベニクに打ち込む。


【ギインッ!】


【ギインッ!】


【ギインッ!】


「くっ?!」


息もつかせぬ連撃で襲い掛かるアリーナにシベニクは防戦一方で押し込まれている、顔には驚きの表情が刻まれていた。


「あははは、どうしたの? もう降参かしら?それなら武器を放るか、花飾りを差し出しなさいよっ! 終わらせてあげるわ。」


そうあざ笑いながら繰り出した一撃は、だがかみ合うことなく虚しく空を切った。


「えっ?」


突然の予定調和の終わりに、呆気にとられたアリーナ。


次の瞬間には太刀筋を冷静に読み切ったシベニクが至近距離に迫っていた。


「ナメるなガキがぁっ!」


そう言いつつアリーナの胸元の飾り花の標的に向かって自身の剣を奔らせる。


「ッ!」


【ギャリッ!】


アリーナは辛うじて鍔元で受けるが体制は大きく崩れた。


「オラアッ!」


そこへ更に容赦なくシベニクは追い打ちをかける。


鉄靴を履いた足でアリーナの胴を思い切り蹴り上げたのである。


「?!がっ・・・!!」


アリーナはもはや声にもならない呻きをあげて後方へ文字通り吹き飛んだ。


「アリーナさんっ!!」


マルクはすぐさ魔治癒魔法を施そうと駆けよる。


それを尻目にシベニクさんは冷たく言い放つ。


「確かに嬢ちゃんのスピードはすげぇ。剣速も尋常じゃねぇ。


だがそれだけといやぁそれだけだ。


目が慣れてしまえばどうってことはねぇよ。


型の種類も少ねぇし、動きに駆け引きの要素が全くねぇ。


そんな馬鹿正直な剣じゃそのうち命を落とすだろうよ。


今のうちに・・・」


『この未熟者が・・・。拙者がやる、「貸せ」。』


「・・・なに?」


「えっ?」


いきなり響いたくぐもった声に、シベニクとマルクのみならずその場にいた全員の視線が集まる。


そこには吐しゃ物で汚れた口を拭いながらゆらりと立ち上がったアリーナの姿があった。


表情は先ほどまでのような人を小馬鹿にしたような表情ではなくむしろ静謐な水面のように静かな印象だ。


その刀剣にはいつの間にか青い炎のような揺らめきを纏っていた。


姿勢を低くし、腰だめに構えるとゆっくりと剣を鞘へ納める。


そして、


『参る。』


次の瞬間、試合開始の時よりも早いスピードでシベニクへ飛ぶように迫る。


「くっ!」


瞬きの時間、慌てて剣を構えるシベニクとアリーナが交錯した。


【キン】


静かに再び剣を納刀する硬質な音が響き、


【クワワンッッ!】


数瞬ののち、受けた姿勢のまま固まったシベニクの剣の折れ飛んだ半分が石畳へと落ち、耳を騒がせる音を立てながら転がった。


「・・・しょ、勝負ありっ!!」


更にそれから数舜遅れて上ずった見届け人の号令が響く。


「おおっ!さすがは両人じゃ!すばらしい、素晴らしい試合じゃったぞ!」


異常なレベルの勝負を前にあくまでも無邪気に興奮して歓声を上げる王。 


とことん幸せな人である。


「・・・。」


その王の言葉にも反応できず、シベニクさんは折れ飛んで石畳に転がった自分の剣を無言で見つめていた。


そしてアリーナさんはその直後、崩れるように倒れ意識を失ったのだった・・・。


「アリーナさん、しっかり!」


マルクは今度こそ治癒魔法を施すべく倒れこんだアリーナへと駆けよった。



前書きにも書きましたが、モチベーションと執筆ペースの関係で、一旦このマクスウェル王の事件が終了するまでで、小説を完結させて頂きたいと思います。


それ以降はもう一つの連載作品


N6649DG

夢は国家公務員!?~異世界なのに転生者に優しくないこの世界~


に注力していきたいと思います。


楽しみにしてくださっていた方がいたらごめんなさい。

今少し続きますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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