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人形といぬ  作者: 波雀
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餌付け

私の幼なじみは最近餌付けに嵌まっているらしい。

餌付けされているのは、彼曰く妹。それ以外的には天使、もしくは彼の恋人(予定)。

だって、ねえ?今まで男も女も分け隔てなく近寄るなオーラを出していた彼が。彼女にはベタベタの甘々なのだから。


水月ちゃん(ウチの天使)はお昼の弁当を私と食べる。たまに一緒に食べたいと言ってくる女子生徒が1人か2人加わる。

お弁当を食べ終わってお喋りしていると、ふらっと彼はやってくる。水月ちゃんの自称兄、柏木涼くん。

彼はジュースか、購買で買ったデザートを1つ持ってくる。

彼が呼ぶと、はい兄さんとそちらを向く。彼女は素直なのだ。


「プリンですね。牛乳瓶みたいですね」


それは購買に売っている中でも人気の商品。彼女が言ったように、手の平に乗るくらいの大きさをした牛乳瓶に入っている。見た目の可愛らしさと味の良さから女子に人気。昼休みの初め10分で売りきれることもある数量限定もの。

珍しそうに、水月ちゃんがじっくり眺めるのを横目に、私はため息をつく。


「可愛い?」

「かわいい・・・・・・そうですね、可愛いです」

「・・・・・・あんま傾けんな」


水月ちゃんを見ていると、彼女はまるで無知で無垢な子供のようだと思うことがある。好奇心旺盛で今だって柏木くんに言われなければ、プリンの容器をひっくり返していたと思う。彼はプリンを取り上げてさっさと開けてしまうと、ごくごく自然な事のように食べさせ始める。所謂「あーん」だ。うん。もう、驚かない。

それよりも水月ちゃんの表情を観察する。

プリンを口にした彼女は、ほんの少し目を見開いて、それから一瞬固まる。そしてふっと呼気と共に表情筋に入っていた力を抜く。


「美味しい?」

「はい、美味しいです。でも、1番はお父さんのプリンです」

「そっか」


そうやってちょっとでも水月ちゃんの表情に変化があると、ほら。彼女よりも分かり易く表情を崩すのだ。彼女と変わらないくらい無表情が常である柏木涼が。

そして、それを見たいがために私たちとお昼を共にしたい子が後を絶たないのだ。

デザート一つ彼女が食べ切るだけの時間はこうしてゆったり過ぎていく。

ただし当事者以外はそうでもない。でもそれは彼らは知らなくて良いこと。

餌付けされる水月ちゃん可愛い。可愛いは正義。雑音は無視。

それがこの時間を穏やかに過ごすコツなのだ。

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