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恋のフルスイング

作者: SA10 in 佐藤

イベントで使用。朗読劇脚本 de す

遠藤「ついに柄本君を呼び出しちゃった……。告白……緊張するなぁ……うまくいくかなぁ……」


長澤「大丈夫!」


高岡「そんなあなたのために!」


青嶋「私たちがついているから!」


遠藤「えっ!? 何!? 誰ですか!?」


BGM(明るい) CI.


長澤「私たちは遠藤美菜、あなた自身と同一の存在」


高岡「告白前の緊張によって現れたひと時の幻」


青嶋「ありていに言うならば一時性多重人格障害」


遠藤「私、病気なんですか!?」


長澤「病気とかそんなことはどうでもいいのよ。

私は長澤よろしく」


高岡「今はこの告白を成功させることが一番重要なことでしょ! 私は高岡ね」


青嶋「些細な事にとらわれてはだめ! 私は青嶋です」


遠藤「え……名前があるんですか?」


長澤「あなたから生まれたといっても別人格だからね、まぁ一応便宜上という事で」


遠藤「はぁ……、とにかく気味が悪いので消えてもらえますか? 怖いし」


長澤「そんなこと言っていいのかしら? あなたの恋の打率は1割以下」


遠藤「ん? ……恋の……?」


高岡「ここ3年はまさかの0割。こんな調子では今回の告白だってうまくいくわけがないわ」


青嶋「そんなあなたを強力なラブスラッガーにしてあげようという──」


遠藤「えっ、ちょっと待ってください。さっきから何か古くないですか?」


長澤「古い?」


遠藤「何か90年代初期というか。恋の打率とか。今そんなこと言わないですよ。私00年以降生まれなのに」


高岡「昔、お父さんの影響であぶ刑事とか見てたでしょう。その影響じゃない? 石原軍団に入るんだって意気込んでたじゃない」


遠藤「わー! わー! ちょっとなんでソンなんこと知ってるんですか!?」


長澤「だから言ったでしょう」


高岡「私たちはあなただって」


青嶋「一時性多重──」


遠藤「それはもういいですよ! ……まぁ、仮にあなた達が私の……また別の私だとして何をしてくれるんですか?」


長澤「私はあなたの攻撃的な面を受け持っているの。攻めの姿勢でどんどん得点を稼いで相手の印象を良くして行くわ」


遠藤「はぁ」


高岡「私はあなたの守備的な面を受け持っているの。守りを硬くして私の暗部を相手に見せないことで幻想を抱かせるわ」


遠藤「腹黒いですね、わたし。それであなたは?」


青嶋「わたしは実況」


遠藤「……実況?」


青嶋「わたしは昔、あなたが狂ったようにマキバオーを歌っていたときに表れた──」


遠藤「あーあー! わかりました! そのときに産まれた私なんですね!」


青嶋「恥ずかしがること無いのに」


長澤「とにかく私たちが協力するから今日こそ彼のスタメン入りするのよ!」


高岡「ルパンもびっくり恋の盗塁王よ!」


遠藤「何言ってんだろうこの人たちは」


長澤「あっ、彼が来たわ」


高岡「とりあえず先発は任せるわ。頑張って!」


柄本「あぁ、ごめんごめん! 待った?」


遠藤「あっ、大丈夫! 私も今来たばかりだから」


BGM(明るい) FO.

BGM(試合開始) CI.


青嶋「さぁ注目の試合。プレイボールです。もう後が無い、女としてここは何としてでも勝ちたいところです。さぁ遠藤選手、第一投目投げます」


遠藤「あ、あ、あの。子供は何人欲しいですか!?」


青嶋「さぁ、いきなりのワイルドピッチ! デッドボールです! ありえません! バッター柄本選手もコレにはドン引きの表情だ! 選手兼解説の長澤、高岡さん。これはどう見ますか」


長澤「男性に免疫が無く舞い上がってますねー」


高岡「ここからたち直すことを期待しています」


柄本「……えーっと……野球チームが作れるくらい?」


青嶋「ここで柄本選手さりげないフォローでヒットを打ちます! が、セカンドに転がる!」


遠藤「ど、どうせなら2軍ができるまで作らない?」


青嶋「まさかのエラー! ライトがボールをつかみ一塁に返します、が、」


長澤「エラーは機械が起こすんじゃない、人間が起こすんだという踊る大走査線の言葉を思い出しますねー」


高岡「とにかく自分のペースに戻したいですねー」


柄本「18人、かぁ……ちょっと多いかな……?」


遠藤「あ! ごめんなさい! いきなりこんな話しちゃって!」


柄本「まぁ……いいんだけどさ……」


遠藤「あ、お腹すかない? どこかでゴハンでも食べない」


青嶋「さぁここでストレート!」


柄本「うーん、あんまりお腹すいてないんだよねー。マックでいい?」


青嶋「打ったー! さっさと食べて帰りたい柄本氏! 甘い球は見逃さなかったー! ぐんぐん伸びる!」


遠藤「あっ……そうだね。それじゃあマックで」


青嶋「ホームラン! 3ランホームランです! 初戦は柄本選手の圧勝、早々に3点獲得と大きく引き離します」


長澤「まずいですねぇ。今後の試合展開が心配です」


高岡「まだ逆転の可能性はありますのでねばってほしいですね」


青嶋「それでは会場をマクドナルドに移しての続行となります」


BGM(試合開始) FO.

暗転

2.マクド○ナルド

BGM(マック) CI.


青嶋「さぁ会場をここ、170億円の赤字を出したマクドナルド、都内某店舗にてお送りします。選手兼解説の長澤さん」


長澤「先ほどの試合から柄本選手は攻め攻めの状態ですね。とにかく早く帰りたいという恐怖にも似た攻撃的なプレーです。ここで守りに失敗するとコールドゲームになりかねません。ここは高岡さんに任せるべきでしょう」


高岡「というわけで選手交代ね」


遠藤「え、交代ってどういう……」


高岡「さっきはごめんなさい。私緊張してしまって……」


遠藤「あれ!? 勝手にしゃべってる!?」


青嶋「さぁ、遠藤選手の表面意識を乗っ取って高岡さんのプレーが始まります」


遠藤「乗っ取る!?」


高岡「わたし、昔から男の人の前だと緊張しちゃって……」


柄本「ああそうなんだ」


高岡「特に気になる人の前だと余計に緊張しちゃって……私、変ですよね?」


青嶋「軽めのストレートで目を慣らせてからのえぐいスライダー! さらにじっと目を見つめる剛速球! 1アウト!」


柄本「いやぁ、そんなことないよ! 遠藤さん可愛いから自身持ったほうがいいって!」


高岡「本当ですか!? うれしいなぁ」


青嶋「と言いつつの過度のボディータッチ! 有無を言わさぬストレートによる圧倒! 2アウトです!」


遠藤「ちょっと、私の体でへんな事しないでよ!」


長澤「遠藤ちゃん、あなたにこの言葉を送りましょう」


遠藤「なによ」


長澤「羊として百年生きるよりも、ライオンとして一日生きる方が良い(イタリアのことわざ)」


遠藤「……何いってんの? ていうか何でそんな言葉知ってるの? 私、知らないのに──」


青嶋「さぁ試合続行です! ほぼ完全な試合運びでまたまた2ストライク! ここは決めの一手で押し通したい高岡選手! ここの投球ですが──」


高岡「あ、もうこんな時間、帰らなくっちゃ」


青嶋「? ここに来てスローボールです」


長澤「いや……まさかこれは」


柄本「えっ、ちょっと待ってよ。せっかくだしもうちょっと付き合ってくれないかな? 近くにおいしいお酒が飲めるところ見つけたんだ」


青嶋「フライ! 高く上がったー! これは単なるスローボールではなく打たせて取る魔球! まさに思惑通り!」


長澤「ここでまさかの『あばれジャイアンツ』ですよ。今、日本でこの魔球を使って許されるのは叶姉妹ぐらいですねー」


遠藤「やっぱり古いですよね、やり方が」


高岡「ええー、でも門限が……」


遠藤「門限ないですけどね、一人暮らしだから」


柄本「ほんの2~3時間だから! 終電には絶対間に合うし、本当に良い店なんだよ。どうかな」


高岡「う~ん、仕方ないですね。ちょっとだけですよ?」


柄本「本当!? やったぁ。それじゃあ行こうか? 遅くならないうちに」


高岡「はーい」


青嶋「エラーも無くフライを取り3アウト。最終戦、試合場を柄本選手いわく洒落てるバーに移してお送りします」


遠藤「この実況誰に対して送ってるの?」


BGM(マック) FO.

 暗転

3.洒落てるバー

BGMバー CI.


青嶋「さぁ会場を移しての試合再開です。ここで一気に攻め落とすべく長澤選手を投入、試合を決められるのか!」


高岡「試合の流れは先ほどからこちらに流れていますのでかなり有利に動けると思います」


遠藤「たのむからへんな事しないでよ……」


柄本「どう、このお店? 良い雰囲気でしょ」


青嶋「さぁ柄本選手、内角低めストレート」


長澤「全然ダメね。ゴミ溜めの方がまだましだわ」


青嶋「おおっとフルスイングでの空振り! 1ストライク! しかしこの振りは強烈だ!」


柄本「えっ……そうかな……結構良いかなって思ってたんだけど……気に入らなかったかな……」


青嶋「ここでド直球ストレート! 長澤選手完全に見えています!」


長澤「でも……あなたと一緒なら悪くないわね」


青嶋「打ったー! ナウなトレンディドラマでも絶対言わない決め台詞! 狂乱の時代! マハラジャが今蘇る! ボールは3遊間を抜けてレフトの元へ! この間、悠々と一塁へコマを進めます」


高岡「あえて強烈な空振りで意欲をそいでから、甘い球を誘い出す高等テクニックですね」


遠藤「90年代どころか80年代に入ってきてません?」


青嶋「さぁ注目の2打席目ですがどのような試合運びをするのでしょうか?」


長澤「そういえば柄本さん、趣味とか何かあるのかしら」


青嶋「バントの姿勢ですねぇ。趣味から話題を広げるつもりでしょうか? 案外堅実な戦略ですね」


高岡「いや……これはもしかして……」


柄本「趣味? うーんそうだなぁ。ドライブとか? かな 遠藤さんは? なにかあるの?」


長澤「最近手相に凝ってるの。見てあげるわ」


青嶋「バントの姿勢からのバスター! うまい! レフトへ大きく飛んでいきました!」


高岡「攻めの姿勢は崩しませんねー」


遠藤「そのうち目薬とか盛りそうですね」


長澤「あら、恋愛線が長いわね」


青嶋「まだ攻める!」


長澤「近いうちに恋人ができるわね」


青嶋「止まりません!」


長澤「その彼女になる女の子には今日会っているわね」


青嶋「もはや投げてもいない球を打っている状態! 圧倒的攻撃力! あっという間に満塁にしてしまった!」


柄本「えっ……そうなの?」


長澤「ええ、でもね。それは私ではないの」


柄本「? どういうこと?」


BGMバー FO.


長澤「と、いうわけで遠藤ちゃん。最後はあなたの番よ」


遠藤「えっ……。私?」


高岡「ここからはあなたの言葉で伝えなければ鳴らない言葉があるはずよ」


遠藤「でも、私、緊張してうまくしゃべれない……」


青嶋「それはね重要な事じゃないわ」


遠藤「えっ……」


長澤「どんなに口がうまくても駆け引きが上手でも心のこもった言葉にはかなわないものよ」


高岡「想いのこもったスイングは必ず当たるわ」


青嶋「3対0の満塁、打席はあなた。ホームランで逆転勝利よ」


長澤「さぁ、頑張りなさい! あなたの想いを伝えるの!」


 (間)


柄本「遠藤さん? どうしたのさっきから黙っちゃって……」


遠藤「あの……」


柄本「……遠藤さん?」


BGM(ラブソングを探して) FI.


遠藤「あの、いままでの私は私じゃないっていうか……いや、私なんですけど、そうじゃなくて……。私なんだけど私じゃないんです」


柄本「私じゃない……?」


遠藤「でも今は私なんです……。えっと……それで……私は……、私は! 柄本さんがすごい好きなんです! はじめて会ったときから好きだったんです! ずっと想ってました! だから私と……付き合ってください……」


青嶋「……遠藤選手大きく打ち上げました」


BGM(ラブソングを探して) FO.


柄本「……ありがとう、すごくうれしいよ。……君はいろんな表情を持っている不思議で、魅力的な子だ」


遠藤「えっ……それじゃあ……」


柄本「でも、君に言ってないことがあるんだ」


遠藤「えっ?」


柄本「それはね……。僕の頭の中に変な奴がいるんだよ!」


遠藤「……はっ?」


柄本「何かサッカーの妖精とか名乗ってて、今もサッカーの実況風に今の状況を語ってるんだよ! やっぱりこれって人格障害って奴なのかな!? 一人でいると気が変になりそうだからなるべく人といるようにしたんだけど、どうするべきかな!? やっぱり病院に行くべきかな!?」


青嶋「ここで柄本選手3メートル近い跳躍をみせホームランを阻止! 遠藤選手心がおれ、無念の試合棄権により柄本選手の勝利です!」


長澤「よっぽど男を見る目が無いんですねー」


高岡「次の試合に期待しましょう」


青嶋「えー実況は私、青嶋と選手兼解説の長澤、高岡さんでお送りしました! 次回の試合までしばしのお別れです! それでは皆さん!」


長澤 高岡 青嶋「さようならー!」


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