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父親。

作者: 日向子
掲載日:2014/09/06

今、

この小説を読んでみよう

と思って見てくれている貴方も


そこの忙しそうなサラリーマンも


重たいスーパーの袋を持ったお婆さんも


流行流行とオシャレなお姉さんも


おもちゃをねだる小さな子供も


そして、私も。


みんなみんな違うけど

みんなみんな母親がいて

みんなみんな父親がいる。

そうやって、みんな人は存在する。


__________________


ある男がいた。

頑固、俺様、短気、暴力的。


この4つだけを挙げるならば、彼はきっと最低な人だ。

誰もが口を揃えて彼を非難するだろう。


でも彼は

超がつく程の寂しがりや。本当はとても優しく、思いやりに溢れ、人の面倒見がよく、人を惹きつける魅力を持ち


多くの人に尊敬され、必要とされ

いつも堂々としていた。



そして、いつも愛されていた。



それが

その男こそが

私の世界にたった一人の

私の自慢の父親だ。


__________________


私が幼い頃の父の印象といえば


怖くて強い。

でも、ドライヤーで髪をセットする時だけ何故かゴリラ顏になる変わった人。

だった。


子供の教育に厳しい人で

保育園生の頃から英会話教室に

小学校に上がると更にそろばん教室にも通わされた。

母と友人の勧めで書道教室にも通った。

5年生になった頃には塾も加わった。


幼かった私は気付けば習い事漬けの生活を過ごしていた。


でも、そんなに嫌ではなかった。


英会話教室では学校以外での友達も出来たし、そろばん教室では集中して一つの事に取り組む時間が意外と楽しかったし、書道教室では字が綺麗になる度に誰か人が褒めてくれたし綺麗な字を書ける様になる事が嬉しかったし、塾では学校でも一番仲良しの友達、兼幼なじみとライバルみたいに競い合えて充実してた。


何よりもどの習い事も頑張れば頑張る程目に見えて自分が上達し成長していく姿が実感できて自分に誇りが持てていた。


そんな私を

母は喜んで褒めてくれた。

弟は尊敬してくれた。


でも父は

もっと頑張らないかんね、ひな。

と、厳しい評価を残していくだけだった。出来の良い従兄妹を褒める事はあっても、私の事を褒めてはくれなかった。


それが悔しかった。


いつか、いつか、

私もお父さんに褒めて貰うんだー‼︎

って、そう心で決めていた。


__________________


でも、結局そんな些細な願いも

叶わなかった。


5年生の秋、

両親が離婚を決めた。


そして私と弟とまだ3歳にもなってなかった幼い妹は父の元を去り母と家を出た。


あの時、母ではなく父を選んでいたら

私の今はもっと違っていたのだろうか。


それとも、去った後もイベント事の時だけでなく頻繁に連絡をしていたら


妹が会いたいと言った時、暇な時連絡するよ。と私達と距離を置く父をそっちのけで無理矢理会いに行っていたら


珍しく贈り遅れた父の日のプレゼント。

ちゃんと父の日に贈れていたら


父は

お父さんは

私の世界にたった一人の貴方は


今も生きていたのだろうか。


__________________


父の元を去った約8年前。

最後に会った去年の冬。


教育だけでなくTPOを考えた服装、お洒落に五月蝿かった貴方に影響されてから好きになったお洒落。

三日坊主の私が唯一ずっと飽きることなく好きなお洒落。


お洒落に携わる洋服、ファッションを将来仕事にしたい。と

どうにか少しでも成功して貴方に褒められたい。と

そんでもって、成人したら酒を片手に2人でお洒落について語り明かしたい。と

めちゃくちゃ成功したら、きっかけは素敵な父親の影響だと世界中に自慢したい。と


些細な願いと大きな野望を胸に

ファッションの短期大学に入学した今年の春。


ファッション界に行きたいのは貴方がきっかけなんだよ。と笑うと嬉しそうに笑って、頑張れ‼︎ひな‼︎って応援してくれたよね。



なんでいないの。

なんでいないの。


ナ ン デ イ ナ イ ノ ??


父の誕生日を祝った5月。


父の日のプレゼント遅くなるね。ごめんね。いつもありがとう。と電話した父の日。


その翌日。

貴方は何故か帰らぬ人となった。


__________________


もうすぐ三ヶ月が経つ。


父がいなくなった世界を過ごしだして

三ヶ月が経とうとしている。



今でも信じられない。


電話したら気ダルそうに、でも優しい声で笑ってくれそうな気がするんだ。


行きつけじゃない美容室で失敗した髪色を、その色は品が無かばい。ってダメ出ししてくれそうな気がするんだ。


形見として貰ったブレスレットも洋服も

貰った って言うよりは

お父さんコレ借りるね。って借りてる様な気分なんだ。



きっとね、これから何年経ったって

どんなに時間が流れたって

ずっとこんな感じなんだろう。


お墓参りとか御盆とか、現実を突きつけられる度に目頭が熱くなって目から汗から出るのだろう。


後悔しない様に生きてきたはずなのに

写真とか生前の言葉とか思い出に触れる度に会いたくて会いたくて会いたくて、

あり得ない位巨大な後悔の波にに押し寄せられるのだろう。



でもね、お父さん。

悪い事ばっかじゃないみたい。


貴方の元を去ってから年々疎遠になりかけていた、じいちゃん達との縁が戻ったんだ。

この前なんて何年ぶりか思い出せない程久しぶりに、ばあちゃんと買い物したんだよ。

来週末には、お父さんの実家の工場の社員旅行に一緒に行かせて貰うことになったよ。

今年の年末年始は従兄妹も含めてみんなで旅行に行くよ。


ねぇ、お父さん。

貴方はきっとこんな図を夢見ていたんでしょう?

みんな仲良く集まって和気あいあいとしたこの感じ。

お父さんが好きだったこの感じ。


久しぶりで凄く懐かしいこの感じ。



お父さん、私きっと幸せ者なんだよ。

お父さんを愛した人に囲まれて。

お父さんの娘として存在できて。

お父さんと同じ様に愛されて。



もっともっと話したい事も一緒にしたい事も、これからこれから山積みの様にあったけれど、会いたくて仕方ないけど


きっと1人で沢山悩んで寂しくて悲しくて幸せな人達を見る度辛かったんだよね?

ごめんね。気付いてあげられなくて。


お父さん。

大好きだよ。

ずっとずっと大好きだよ。


いつかまた会える日まで

どうか側で見守っていてね。


ありがとう。

貴方が私のお父さんで、私が貴方の娘で

本当に良かった。


貴方は今までも、これからも

私の世界にたった一人の自慢の大好きな父親。



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