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チート公開! 主人公?なにそれ美味しいの? 2

 いい予感は外れる癖、悪い予感というのはいつも的中する。

 暴風が、吹き荒れ草木を揺らし、空からは雨の代わりに紅蓮の炎が降り注ぐ。

 空を見上げると、漆黒の空に生える、赤、緑、青と色とりどりのドラゴン達。

 雷音のような咆哮が響き渡る。


「……たっく、うるせぇ」

 そう、赤城が呟き、指を鳴らすと、竜達に変化が現れる。

 赤い竜は四方から圧迫されたように拉げ、

 緑の竜は地面に叩きつけられ、

 青い竜は腹部に何かがめり込み、

 

 そのまま、地面に落とされ、そのまま動かなくなる。

 恐らく、竜達は何が起きたのか、理解さえ出来ていないだろう。

 目を凝らすと、彼の背から、壁が生えているように見える。

 巨大すぎて何だか分からないのだ。少し離れればそれが何か解る。

 それは、腕。彼の背から生えた巨大な三本の腕だ。

 

 『巨人の一撃(ヘカトンテイル)

 8つの手を持ち、その腕を持って歴史を切り開いた英雄の前世を持つ赤城のユニークスキル。

 二つしか手を持てない人の身であるがゆえ、その腕は肉体では再現できず。

 再現できない手は、その魔力を持って、その神性を顕にする。


 仲間たちから歓声があがる。

 ひらひら、とその手を振るが、しかし、赤城の表情は晴れることはない。

 竜さえも一撃で下す、その腕をもってしてもこの状況を切り抜けるのは難しいと理解しているからだ。


 山側から続く砲撃。無論、反撃の為に、虎の子のパンツァー部隊を向かわせている。

 恐らく、時間をかければ、殲滅は可能だろう。

 しかし、だ。

 右から迫る視界を覆い尽くす大量の炎弾。


 巨人の一撃(ヘカトンテイル)を振るう。空中に裂く炎の花。

 轟音が周囲の音を一瞬にして奪う。

 それと同時に、巨人の一撃(ヘカトンテイル)の一本にヒビが入り、そして――

(くそっ!)


 ――重力に従い、崩れ落ちる。


 一日のうち、扱える腕は八本。この激戦の中、一本を失う痛手に赤城は顔をしかめる。

「ざけんじゃねーぞ」

 赤城は、更に腕を増やす。今度は人の手とかわらない大きさ。そして、その手に握られるのは、弓矢。

「……死を持って償え」

 放たれる。

 暴食(グーラ)の岩槻彩音。その能力は、『所有者の手を離れたアイテム・スキルの回収』だ。

 だから、彼女を叩くには、手で持った武器で叩き切るか、或いは、

(――気づかれることなき、遠距離からの一撃必殺)

 

 例え、遠距離からの攻撃を奪うことのできる暴食(グーラ)も、気づかなければどうしようもない。

 暴食(グーラ)はこちらを見ている。が、その視線は自分に向いていない。

 距離がありすぎるのだ。巨大な腕を背負っているからといって、自分を守るように展開する人の壁は自分の姿を覆い隠している。

(今っ!)


 矢を放つ。

 巨人の一撃(ヘカトンテイル)の手から放たれたその矢は真っ直ぐ、暴食(グーラ)に目掛けて飛び、そして――

 彼女の姿が消える。

 横から飛び出した影が彼女を抱き抱え矢の射線上から逃げ出したのだ。

黒川慎二(エスケープマン)か」

 円卓の騎士の一人、黒川慎二。彼の戦闘能力はそこまで高いわけではない。

 元々、娘とのコミュニケーションに苦戦し、同じゲームをやることでその距離を縮めようとしたごく普通のサラリーマン。

 世界がこうなる前からVRMMOをやっていた為、ステータスは高めだが、それでも円卓の座につける程、強かったわけではない。

 彼が円卓にいる理由。一つは文官としての能力。もう一つは、彼の臆病さからくる危険回避能力だ。


 撤退戦、暗殺対象の護衛など。『守る』ことにおいてはトップクラスの能力を持つ。

(ああ、だから、彼女も前線に出てきた訳だ)

 背後に彼が控えている。いざとなれば彼が退路を切り開くであろう。

 だからこそ、『彼女』は前線に出てきたのだ。


 空に再び、竜が出現する。

 仲間達の間で悲鳴があがる。何を驚く?

 今は『彼女』の発生させたイベントの最中。

 『竜将の進軍』だったか?なら、その竜将を狩るか、『彼女』を殺さなければこのイベントは終わらない。


 この状況に赤城は、普段の余裕を捨てて、舌打ちをする。

 予想外だ。円卓が出しゃばってくるのは予想していた。だが、彼女が出てくるのは予想外だ。


 自軍の左翼から悲鳴が上がる。

 竜によって削り取られた左翼に、甲冑の騎士達が突撃をかける。

 少数精鋭の部隊なのだろう。

 龍で打撃を受けた左翼はその勢いに飲まれ、道を切り開く。その道の進路上にいるのは赤城一佐。

 迫り来る敵の気配に、赤城は武器を構え……



「ああ、やっぱ、あんたと相手しなければいけないって訳だ」

 赤城はため息を大きく吐く。

「ええ、お久しぶり、というべきでしょうか? 『巨人の一撃(ヘカトンテイル)』赤城一佐」

 そこにいるのは、銀の甲冑を着込んだ少女。

 跪きたくなる。その威風に。容姿ではない。彼女の容姿は美しくはあるが、威圧感を与えるものではない。

 その内面から醸し出す空気。前世の自分でさえ持ち得なかった王者としての資質に圧倒される。



 本当に、ついていない。円卓一人相手するのにも大変だというのに暴食(グーラ)、エスケープマンの二名。そして……

 そんな規格外な連中を纏め上げる『彼女』にまで相手をする羽目になるとは……


「ああ、やっぱ、てめぇが相手か。円卓の国『神奈川』、『国王』朝倉涼葉」

 その言葉に朝倉は小さく笑う……


「ええ、私が相手です。我が地、国民を傷つけたその罪……」

 笑いながら、手に持った剣を振り上げる。

 それは聖剣カリバーン。一般プレイヤーが持つことのできないGM専用装備。

「……その身で、償いなさい」

 その言葉と共にその手ににぎった聖剣を彼に向かって叩きつけた。



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