植村至昭 【チョキ】
俺の名前は、植村至昭。 最近『服従機』を手に入れた。 其れは、日本にしか無く30人限定らしい。 何処で手に入れたのかは、忘れたが。 此の『服従機』は三種類有るらしい。 『グー』と『パー』と『チョキ』。 俺は、『チョキ』の『服従機』を持っている。 持っているというか、体内にある。 此の『服従機』は、飲んでから活用するのだ。 此れは、ゲームをする為に有るのだ。 ルールは、簡単。 『グー』は『チョキ』に勝つ。『チョキ』は『パー』に勝つ。『パー』は『グー』に勝つ。ジャンケント一緒だ。例えば、『グー』が『チョキ』の人に触れれば其の時点で『グー』の勝ちになる。そして、『グー』の人は『パー』の人を服従出来るというのだ。 俺は、大学1年生。日本で1番低いと言われる大学に入っている。其の中でも成績が低い。下から数えた方が早い程だ。つまり、俺は、只の馬鹿という事だ。 「あぁ、つまんねぇ」俺は、今、喫茶店で椅子に座りながらオレンジジュースをストローで吸っている。「なぁ、美香子。何か、楽しい事無い?」 俺は、向かいに座る女性を見た。 真田美香子。俺と同じ大学で同級生。何時も俺は彼女の事を美香子と呼んでいる。格好は、派手だが、優しい奴だ。 美香子は、俺の彼女ではない。言うなら、浮気相手だ。俺には既に同じ大学で同級生の彼女がいる。名前は、篠田明子。然し、コイツにはもう飽きた。理由は、無いが如何でも良くなった。だから、ここ1週間は、全く会っていない。その代わりに美香子と毎日の様に会っている。そして、明子に会っている時以上に楽しんでいる。 「えぇ。私といちゃ、楽しくないぃ?」美香子は、艶の有る声で言った。「よぉーーーーーーーくぅぅぅんっ」 美香子は、俺の事をよーくんと呼んでいる。きっと、よーくんの『よ』は至昭の『よ』から取ったのだろう。此の名前は、別に嫌いではない。 「楽しぃよ。明子といるより」 美紀子は、俺が明子と付き合っている事を知ってはいるが付き合ってくれる。俺的には、今一番の最高の女だ。 ブーブーブーブーブー。 突然、上着の胸ポケットに入っている携帯電話がバイブ音を鳴らした。俺は、すぐさま携帯電話を胸ポケットから取り出した。そして開いた。 「やべぇ。明子からだ」 「そんなに嫌なら別れちゃえばいいのに」 「其れが分かれさせてくんねぇんだよ。しかも、携帯電話のコール無視したら、後々面倒臭ぇ事になるし」 其れは事実であった。だから、コールは無視出来ない。 「もしもし」 俺は、明子からの電話に出た。 『もしもし。明子だけどぉ』 「如何した? 明子」 『今から会えない? 明子、とっても詰まんなぁい』 明子の『今から会えない?』という質問は、『必ず会いなさい』という命令に近い意味を持っていた。つまり、了承しなければいけない。 「わ……分かった。会おう」 俺は、渋々了承した。 『じゃあさ、私の家でね』 「分かった」 俺は電話を切った。 「悪ぃ。美香子。今から、明子と会わなきゃいけない用事が出来た」俺は、椅子から立ち上がった。「お金置いとくからさ」 俺は、財布から1000円札を取り出すとテーブルの上に置いた。 「じゃあな」 「また今度ね」 美香子は、つまらなそうに言った。 俺は、喫茶店から出ると、急いで明子の家に向かった。 ★ ピーンポーン。 俺は、アパートの2階に住む明子の家の前に立つとインターホンを押した。「明子ぉ、来たぞぉ」俺は叫んだ。 ガチャ。 ドアが開いた。 明子が出てきた。 其の時、俺の身体が突然痺れた。 「入って」 明子が言った。 俺は痺れる身体に鞭を打ち、身体を動かし家に入った。 俺は玄関で靴を脱いだ。 其の時、前にいた明子が突然俺に抱きついてきた。 「至昭君、好き」 そして、俺に接吻してきた。 「なっ……」 明子が唇を離した。 「貴方は、私だけの物」 明子の甘い香りがした。 其の時、俺の意識が朦朧とし始めた。 如何したんだ? 一体俺の身体に何があった? 「服従完了」 明子が笑った。 まさか、と俺は思った。 身体が痺れたのは、明子が『グー』の『服従機』を持っていたからだったのだ。如何やら、此の『服従機』には、自分には、負ける相手が近くにいると身体を痺れさせる効果があるようだ。まさか、明子が『服従機』を持っていたとは。しかも、俺の弱点の『グー』を。 「貴方は、もう、私の物」 もう、俺の身体が言う事を気かなくなった。 「此のゲーム、私の勝ち」 もう殆ど、明子の声が聞こえない。 「貴方は、一生私の物」 あぁ、もう駄目だ。 「貴方は、美香子の物じゃない」 ……え。 「貴方は、美香子の物じゃない」 あぁ、知ってたのか。 「貴方は、一生、私の物」 そして俺の意識が無くなり、俺の身体は明子の物となった。 1人服従 残り29人
【支配者と服従者】【支配者 篠原明子 服従者 植村至昭】




