拾う人
俺の隣にいる生徒。彼はどうやら物をよく落とす人らしかった。
物を落とすというのは、道を歩いていて財布を落としてしまうとかそういうことではない。教室の中で、机の上から物を落とす。シャープペンだったり消しゴムだったりだ。それはたぶん彼の不注意なのだが、俺に彼の注意の度合いを量ることはできない。
俺は彼が物を落とすたびに拾っていた。彼が気付いていようが気付いていまいが、隣の席だったからよく拾った。お礼を言われることも、言われないこともあった。俺と反対の方向に物が転がったときは、彼が気付いて自ら拾いにいくのを傍目に見ていた。
席替えがあった。初めての席替えだった。
俺の隣にいる生徒。彼女もまた、どうやら物をよく落とす人らしかった。
物を落とすというのは、道を歩いていて財布を落としてしまうとかそういうことではない。教室の中で、机の上から物を落とす。筆箱だったりプリントだったりだ。それはたぶん彼女の不注意なのだが、俺に彼女の注意の度合いを量ることはできない。
俺は彼女が物を落とすたびに拾っていた。彼女が気付いていようが気付いていまいが、隣の席だったからよく拾った。お礼を言われることも、言われないこともあった。俺と反対の方向に物が転がったときは、壁にぶつかって彼女の足元に落ちた。彼女が音で気付いて落し物を拾う姿を、傍目に見ていた。
席替えがあった。二回目の席替えだった。
俺の隣にいる生徒。名前も性別ももはや覚えていないが、その誰かも物をよく落とす人だった。
物を落とすというのは、道を歩いていて財布を落としてしまうとかそういうことではない。教室の中で、机の上から物を落とす。シャープペンだったり消しゴムだったり、筆箱だったりプリントだったりだ。それはたぶん本人の不注意なのだが、俺にとってはどうでもよかった。
俺は何も拾わなかった。誰かが気付こうが、誰も気付かなかろうが。隣の席の俺は一つも拾わなかった。お礼は一回も言われなかった。俺と反対の方向に物が転がったときは、転がった先に一番近い生徒が拾っていたらしい。誰かが拾う姿に対し、俺は見向きもしなかった。




