涼みに入った夜のスーパー、予期せぬ「訓練」の始まり
涼みに入った夜のスーパー、予期せぬ「訓練」の始まり
涼みに入った夜のスーパー、予期せぬ「訓練」の始まり
夜8時。
外はうだるような暑さだ。
「涼しくなるまでラジオ体操はお休み」
となるほど今年の夏は異常で、私は涼みを兼ねて近所のスーパーへ買い物にやってきた。
冷房の効いた店内でカゴを回していると、総菜売り場の奥から
「……でさ、あの人、暴力団の……」
というひそひそ話が聞こえ、ピクッと体が反応する。
地域のラジオ体操に集まる面々は防犯意識が高く、特に暴力団対策の『みんなの約束』である「不当要求
には絶対に恐れない・お金は出さない・関わりを持たない」を全員が叩き込まれていた。
「よし、いつでも毅然と行動しよう」
と胸に誓い、私はトイレットペーパーのケース売りをカートに乗せてセルフレジへ向かった。
手際よく会計を済ませて自動ドアを抜けた瞬間、強烈な熱気と共に心臓が跳ね上がった。
カートの底にある大きなケースのバーコードを、完全に打ち忘れていたのだ。
冷や汗が吹き出す。
その時、ラジオ体操で警察官から言われた
「悪質な輩は人間のちょっとした『弱み』や『ミス』に付け込んで脅してくる」
という言葉が脳裏をよぎった。
もしこのまま帰れば「万引き」という明確な弱みになり、ゆすりのターゲットにされかねない。
「これは暴力団対策訓練の実践編だ!」
と踵を返し、私は再び店内の光の中へと突き進んだ。
目指すはセルフレジの店員さんだ。コソコソせず、毅然と、堂々と、1番目の約束を胸に
「すみません!ケースのお会計を忘れてしまいました。もう一度通してよろしいですか?」
とはっきりと伝えた。
店員さんは一瞬驚いたが、
「気づいてくださってありがとうございます!」
と笑顔で応じてくれた。
店員さんの目の前で堂々とバーコードを「ピッ」と通し、支払いを済ませて今度こそ真っ白なレシートを
受け取った。
私の弱みは完全に消滅した。
毅然とした態度が未来のトラブルを未然に防いだのだ。
外へ出ると、夜風が少しだけ涼しく感じられた。
ラジオ体操で鍛えた防犯の知恵は、スーパーのレジ前でも100点満点の効果を発揮してくれた。
気楽に読んで。




