悪魔執事長の務め
執事長ケイン視点。
オロカナ王国上空に私は首を三つ宙に浮かせたまま、転移すると城壁を飛び越えました。
「首が!?ひあっ!!」
城壁を守る兵が腰を抜かします。
首ごときで情けないですね。
「魔王軍の使者として参りました。国王陛下に取り次ぎをお願い致します」
私は微笑むと、首三つを引き渡して頼みました。
兵は慌て首三つを抱え、城下町を走って行きます。
椅子をマジックバックから取り出すと、私は読書をして待つことにしました。
やがて、武装した騎士団が現れ私を取り囲みます。
「貴様が使者と言う魔族か!?」
「えぇ、そうですが?」
聞かれたので私は答えます。
「国王陛下は魔族ごときに会わん!!此処で滅されたくなければ早く帰れ!!」
騎士団長が叫びますね。
「我が魔王国は、オロカナ王国と和平を結びに来たのです。これ以上無益な血を流したくはありません。それでも国王陛下は会わぬと?」
「くどい!!貴様らみたいな邪悪な悪魔に会わぬわ!!」
私が聞くと、騎士団長が答えた。
「そうですか、ならば致し方ありませんね。交渉決裂と言う事で攻めさせて貰います」
執事らしく私は、右手に銀食器のナイフを握る。
「やれ!!」
「「「うおお!!」」」
騎士団が私に斬りかかる。
だが、あまりにも遅い減点ですね。
ザシュッ
私はナイフを一閃させ、騎士団三人の首を斬り付けました。
「が」
「ぐ」
「あ」
騎士団三人は首を斬られ、絶命して倒れます。
「魔王国より近い内に正式な侵攻を宣言致します。今日の所は小手調べですね。貴方達人間が愚かな生き物で良かったです。では、ごきげんよう」
私は笑って騎士団長に言うと、恭しく一礼して転移するのだった。
魔王城に戻ると、私は直ぐにアルカディア様に御報告をしました。
「そう、人間は思考する能力も放棄したのかしら?チャンスを上げたのに無為にするなんて理解不能だわ」
アルカディア様は刺繍をしながら、私に答えると溜め息を付かれます。
「使者として向かってくれてありがとう。魔王軍騎士団と有力な魔族達に伝令を伝えなさい。人間王国侵攻の準備をしなさいとね」
「御意に御座います」
アルカディア様に命じられ、私は一礼するとアルカディア様の部屋を後にした。
廊下でメリオサと擦れ違う。
「お前も行くのですか?」
「御命令があれば行きましょう」
メリオサに聞かれ私は答える。
「今夜は高揚した魔族の活気で眠れませんね」
「魔族は夜に生きる種族ですからね」
私とメリオサは頷き合うと、何事もなかったように姿を消す。
「侵攻の準備、確かに承りました」
真面目な騎士団長は返事をしました。
「ひゃはは!!人間王国の侵攻だぜ!!」
「魔術の実験出来る!!」
「腕がなるわね!!きゃはは!!」
「餌狩りですね」
実力者達は直ぐに高揚した。
私は役目を果たすと、やっと魔王城に戻り本日の業務日誌を書く。
本日、人間王国に宣戦布告。
アルカディア様の成長は著しい。
亡き側妃ディートリッヒ様に似ておられる。
聡明なディートリッヒ様が健在ならば、同じ判断を下されただろう。
母子は似て同じものかもしれない。
あの日、雪の日。
ヒジリタリウス様の癇癪で、ディートリッヒ様は不意を突かれて絶命された。
残された生まれたばかりのアルカディア様を主君と見定め、復讐の機会を伺ってきた。
「もうそろそろですね。あの女をアルカディア様なら殺せる」
私は主ディートリッヒ様の写真に祈りを捧げると、ベッドへと入るのでした。
執事長の朝は早いのです。




