メイド長の仕事
悪魔メイド長メリオサ視点。
我が魔王女アルカディア様は非常に御聡明だ。
血気盛んな魔族に比べれば、一度は慈悲を与えるアルカディア様はお優しいかもしれない。
だが、必ず一度だけだ。
約束を守らない人間や勇者には容赦しない。
圧倒的な魔力はガダルバーナ様に似て、その気性は隠されているが限り無く竜王妃ヒジリタリウス様に似ておられる。
我々悪魔メイドは、主であったヒジリタリウス様からアルカディア様を主にと仕える主君を変えた。
元々、ヒジリタリウス様が采配を苦手として居たからだ。
アルカディア様に変わってから、魔王騎士団が作られ、悪魔メイド部隊、悪魔執事部隊も作られた。
悪魔は擬態が得意で、主に影として動ける。
先程の勇者を狩った悪魔メイド達も、同様に転移門探しの諜報活動をしていて偶然発見し駆除したに過ぎない。
魔王騎士団は魔王城や、城下町、各地の町や村を巡回して警護している。
悪魔執事部隊は、直接三人をお守りする懐刀部隊だ。
今はアルカディア選考の下、魔王軍四天王を決めてる最中。
大事な時に問題を起こした人間に、私は殺意を抱いて仕方ない。
「メリオサ、人間王国侵攻の際に敢えて魔族達に好き勝手許せばどうかしら?」
アルカディア様は自室に戻られると、首を傾けて問い掛ける。
「そうなれば、手柄欲しさに魔族が暴れまわりましょう。もしや、戦功を上げた者達の中から四天王を選ばれるのですか?」
私は驚いて目を丸くする。
「えぇ、その方が効率的だと思ったからよ。魔族は実力主義、ならば戦功を上げた者から選べば他の魔族からも文句は出ない筈だわ」
自然にアルカディア様は答えた。
恐ろしい。まだ300歳だと言うのにもう見通されているとは……。
力押しのガダルバーナ様や、癇癪持ちのヒジリタリウス様とは違う強さを持って居られる。
「では、他の魔族にそのようにお伝え致します。使者は誰を立てますか?」
「そうね、使者は悪魔執事長のケインに任せるわ。彼なら古くから仕えてくれてる優秀な執事だから良い返事を貰って来るでしょう」
花が咲くような笑みを浮かべアルカディア様は答えた。
「……そのように致します」
私は一礼してアルカディア様の私室から辞する。
廊下に出ると、他の悪魔メイドや悪魔執事達が待っていた。
勿論、代表してケインも。
「姫様はなんと?」
「使者はケインに任せると仰有って居ました。それと、人間王国侵攻の際に魔族には敢えて自由にさせるとも」
ケインに聞かれ私は答えた。
「姫様らしいお考えですね。では、首を手土産に人間王国へ参りましょうか。……あぁ、エルフ研究者達の調査で転移門先が判明しました。オロカナ王国ですよ」
ケインは私に教えると背を向ける。
「一応聞きますが、護衛は必要ですか?」
「いりませんよ、私一人で対処可能です」
私が聞くと、ケインは笑って答えその場から姿を消す。
「さて、ケインに代わって私が悪魔執事部隊の指揮も取ります。普段通り実務をこなしなさい」
「「「はっ!!」」」
私が命じると、悪魔執事部隊は散開した。
「悪魔メイド部隊も、通常実務を」
「「「承知いたしました」」」
私は命じると、悪魔メイド部隊も散開する。
ふう、長い一日になりそうだわ。
まだ夜は始まったばかり。
私は溜め息をつくと、アルカディア様の下へ戻るのだった。




