第11話
長めの休憩を終え、俺は再び第6層へと足を踏み出した。
6層はこれまでの階層に比べ、遥かに広大な洞窟空間が続いていた。
湿った土と岩壁がどこまでも広がり、単独での探索は時間の消耗が大きい。
俺は、上質なオーク肉の確保と、真鍮の古鍵の使い道である祠探しを並行し、オークコマンダーを狩りながら探索を進めた。
しばらくオークコマンダーとオークの群れを躱し、単独個体を仕留める作業を続けた頃、洞窟の壁が大きくえぐれた場所を発見した。
苔がびっしりと張り付いた岩の窪みに、風化が進んだ小さな石造りの祠が建っている。
人の背丈ほどの大きさで、祠の正面には真鍮色の小さな鍵穴があった。
(これか……!)
俺は興奮を抑えきれず、すぐに祠に『検索』を発動する。
【解析情報 解析結果:技の祠】
「技の祠!」
俺は祠のまわりにモンスターが潜んでいないかを確認し、安全を確保した。
間隙の環から真鍮の古鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。
カチリ、という硬い音が響いた。
直後、祠の背面に隣接していた岩壁が、
ゴゴォン!
と重い音を立てて内側へ崩れ落ちた。
奥へと続く通路が現れる。
警戒しつつ、通路の奥へと進む。
通路を抜けた先には、教室くらいの広さの空間があった。
松明の光に照らされたその空間には、中央に宝箱が一つ、
そしてその隣に、古びた刀を持った一体のスケルトンが立っていた。
(トラップではなく、番人か)
俺はスケルトンにすぐに『検索』をかける。
【解析情報 解析結果:武者スケルトン。耐久力は低いが、刀を使い巧みな剣戟を放つ。】
「武者スケルトン……」
武者スケルトンは、古びた刀を構え、流れるような動作で俺に向かって踏み込んできた。
キンッ、ヒュンッ!
その剣戟は、これまでのスケルトンとは比較にならないほど鋭く、的確だった。
俺は剣を振るうが、武者スケルトンは俺の攻撃の隙を的確に見抜き、その度に刀を突き出してくる。
(速い!そして無駄がない!)
その剣術は、俺の技量を遥かに凌駕していたが、武者スケルトン自身の耐久力は低い。
俺は剣戟を避けながら、一瞬の隙を突き、力いっぱい剣を振り抜いた。
ドガッ!
武者スケルトンは、その一撃にあっさり倒れ、光の粒子となった。
【経験値:500を獲得しました】
(500経験値か…)
ドロップアイテムとして魔核と、古びた刀が床に転がっていた。俺はそれを間隙の環に収納する。
俺は豪華な宝箱に手を伸ばし、蓋を開けた。
中には、序級剣術の書が納められていた。
(序級剣術の書!)
さっそく書を使い、俺のスキルリストに『序級剣術』が追加された。
(これで15,000DPが浮いた!)
周囲に他に隠された宝箱がないか探したが、見つからなかった。
この技の祠を中間拠点と定め、探索へ戻ることにした。
祠を後にし、洞窟の探索へと戻る。
数時間後、休憩のため祠に戻った俺は、驚愕の光景を目にした。
広間の中心に、古びた刀を持った武者スケルトンが、再びスポーンしていた。
(こいつ何度もスポーンするのか?)
俺は武者スケルトンと再び戦い、倒す。
しかし、その剣で切り結ぶ度に、序級剣術を得たことにより自分よりも、武者スケルトンの剣捌きの方が遥かに卓越していることに気づく。
(こいつ、剣の扱いが巧い....!)
俺はすぐさま、部屋を出入りしてみた。
そうすると、武者スケルトンが再度スポーンしているではないか。
俺はメイン武器を、間隙の環から取り出した古びた刀に持ち替えた。
「リペア」
リペアの淡い光が古びた刀を包み、新品同様の切れ味を持つ真新しい刀へと蘇らせる。
その後、武者スケルトンと戦い、その度に部屋に出入りした。
この部屋に入るたびに、武者スケルトンは1体だけスポーンする。
武者スケルトンが部屋に存在していると、2体目はスポーンしない。
この部屋は武者スケルトンしかスポーンしないようだった。
この仕組みに気づいた俺は、最高の練習相手を得た。
武者スケルトンと何度も、何度も、戦う。
30歳のニートではあるが、俺は男だ。
刀を巧みに使う武者スケルトンの剣術に、純粋に憧れ、夢中になった。
武者スケルトンの卓越した剣術を身体に叩き込み、ひたすら学ぶ。
腹が減ったら上質なオーク肉を食い、祠の間で眠る。
これを繰り返し、二日間。
俺は、ついに光に包まれた。
【スキルがレベルアップしました!】
俺の序級剣術は、習級剣術にレベルアップした。
武者スケルトンに敬意を払い、成長の証明として最後に本気で戦った。
習級剣術は、もはや武者スケルトンの剣術と遜色ない、洗練された域に達していた。
そろそろ設定とかごちゃついてると思うので、設定集一回載せます




