第50話(最終話) 『あなたと生きる、この世界で』
出会いは偶然で、想いは少しずつ重なって――
そして今、ふたりは確かに「同じ未来」を見ている。
王女と侍女、立場を越えて紡いできた恋の物語、ここに完結。
季節は巡り、春の終わり。
庭の花々が色とりどりに咲き誇る頃。
今日、王宮ではとある小さな“式”が行われていた。
それは国に発表されるものではなく、
リュシアとティアナ、ふたりだけの“約束の儀式”。
豪奢なドレスも、国賓も、祝辞もいらない。
ただ、ふたりの心がそこにあるだけ。
「――あなたと生きていきたい」
リュシアの手が、ティアナの手を取った。
「王女としてじゃなく、一人の人間として。
わたしはあなたと、笑って、泣いて、迷って、支えあっていきたいの」
「……わたしも、同じです」
ティアナの声は震えていたけれど、確かだった。
「王女様だったあなたに、恋をしてしまったこと。
それを誇れるように、わたしもこれから強くなります」
ふたりの手が重なったその瞬間、
城の鐘が、静かに鳴り響いた。
まるで祝福のように。
* * *
そして――数年後。
ふたりは、静かな町のはずれにある一軒の家で暮らしていた。
リュシアは王家の義務を果たし、
後継を正式に譲ったあと、穏やかに城を去った。
ティアナは今も変わらず彼女の隣で、
“恋人”として、“家族”として、日々を生きている。
朝はふたりでパンを焼き、
昼は近くの子どもたちに読み聞かせをして、
夜は小さな暖炉の前で、手をつないで眠る。
特別なことは何もない。
けれど――
「……幸せ、だね」
ある夜、リュシアがそう呟いた。
「はい。これ以上の幸せは、きっとありません」
ティアナはそう答えて、そっとキスをした。
“あなたと生きる、この世界で”
その言葉が、今のふたりのすべてだった。
ふたりが出会い、恋に落ち、
立場や不安を越えて結ばれるまでの物語、
お楽しみいただきありがとうございました。
これは終わりではなく、
きっと“新しい始まり”の物語でもあります。
どこかの異世界で、今日も彼女たちは笑い合い、
変わらぬ日々を、静かに過ごしていることでしょう。




