第4話『姫さまのご機嫌と、まさかの対決!?』
リュシア王女の“素顔”にふれたティアナ。
少しずつ心の距離が縮まっていく中、
ある日突然、姫さまから告げられたのは――なんと勝負のお誘い!?
「ティアナ。ちょっと来なさい」
「はい! なんでしょうリュシアさま!」
呼ばれて振り返ったティアナは、
リュシア王女の手元にあるものを見て、固まった。
「……それ、クッキーの缶……?」
「ええ。“手作りしてみた”ものよ」
「まさか……」
「そう。勝負よ」
「で、ですよねー!」
王女が思いつきで勝負を仕掛けてくるとは思わなかったけど、
目の前には本当に、いかにも高級そうなクッキー缶が置かれている。
「ティアナ、あなたも昨日、厨房で“焼き菓子を作ってみた”と言っていたわね?」
「えっ、それ見てたんですか?」
「……ふふ。侍女の動きには気を配っているのよ」
リュシアが珍しく楽しそうな顔をしていることに、ティアナは気づいた。
「というわけで、お互いに一枚ずつ出して、
どちらが“美味しい”かを判定しましょう」
「えっ、誰に判定してもらうんですか?」
「……わたし」
「自分で自分のやつに勝負を挑むんですか!?」
「公平に評価するつもりよ。侍女として、あなたの実力を試すのも兼ねて」
(もはや侍女試験なのかおやつタイムなのか分からない……!)
でも、楽しそうな姫を見るのが、ちょっと嬉しい。
* * *
ティアナは、昨日焼いた“アーモンドクッキー”を提出した。
材料は庶民的なものだけど、焦げもなく、なかなかうまく焼けたと思っている。
一方、リュシアの作品は“レモンとローズのサブレ”。
さすが姫君、使ってる材料からして気品がすごい。
まずはティアナのクッキーを口にするリュシア。
「……香ばしい。素朴だけど、悪くないわね」
次に、自作のサブレを一口。
「……味に深みはあるけれど、バターが少し重いかも」
「自己評価に厳しっ!」
しばし考えたあと、リュシアは静かに結論を出した。
「――引き分け、ね」
「おお……」
「あなたのは“家庭のあたたかさ”がある。わたしのは“計算された風味”。」
「なんかそれ、恋愛に置き換えても語れそうですね」
「……?」
「いえ、なんでもないです!」
ふたりは、ふっと顔を見合わせて――笑った。
なんてことのない午後。
けれど、それはたしかに、心がちょっと近づいた時間だった。
勝負の名を借りた、ささやかなコミュニケーション。
でもその中に、ふたりの関係がやわらかく育っていく気配がありました。
次回、第5話は:
『姫さまと秘密の夜のお散歩』
ティアナが眠れなかった夜、偶然出会ったのは……
星空の下、ふたりきりの静かな冒険が始まります。