表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る城で、わたしは恋をした ― 元気な少女と無表情な姫君の、ゆっくりとほどける心の距離 ―  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/51

第29話『舞踏会と、ふたりの歩幅』

ついに迎えた王宮の舞踏会。

格式と視線が渦巻く華やかな場所に、“王女の恋人”として立つティアナ。

緊張、戸惑い、それでも――その手を離さない覚悟が、ふたりを照らす。

城の大広間。

きらびやかな衣装、豪華なシャンデリア、響き渡る音楽と笑い声。

一年で最も華やかな夜といわれる、王家主催の舞踏会が始まっていた。


「……すごい、熱気ですね」


控室の窓から会場を見下ろしながら、ティアナは思わずつぶやいた。

見慣れたはずの場所が、今夜はまるで別世界のように感じられる。


「大丈夫。あなたはとても綺麗よ」


リュシアは静かに声をかけながら、ティアナの手を握る。


ティアナは深紅のドレスに、リュシアの選んだ銀の髪飾り。

普段の侍女服とはまるで違う、まさに“恋人”としての装いだった。


「……緊張してます」


「わたしも。けれど、ふたりで歩けばきっと大丈夫」


その言葉を合図に、扉が開いた。


大広間の視線が、一斉にふたりに向けられる。


王女リュシアと、その隣に立つ無名の侍女。

ただの付き添い――ではないと、誰もがすぐに気づく。


ふたりの距離。手のつなぎ方。

そして、向けられる視線にも臆さず笑みを返すその姿に、

空気が少しずつ変わっていく。


「……まるで夢を見ているようです」


ティアナが小さくささやく。


「夢じゃないわ。これは、わたしたちが選んだ“現実”よ」


リュシアは微笑みながら、ティアナの手を引いた。

そのまま、舞踏会の中心へと――堂々と、二人の歩幅をそろえて。


* * *


音楽がひときわ静まり、楽団が新たな曲を奏ではじめる。


「リュシア様……もしかして、踊るつもりですか?」


「もちろんよ。“最初のダンスは恋人と”って決めてたもの」


「わ、わたし踊りは……!」


「教えたじゃない、森の中で」


「そ、あれは木の棒をパートナーにして……!」


リュシアは小さく笑った。


「今夜は、本物よ」


そして、ふたりは軽やかにステップを踏む。

リュシアが導き、ティアナが少しずつ合わせていく。


最初はぎこちなかったふたりの足取りも、

やがてリズムに乗り、会場に調和した旋律が流れ出す。


――王女と侍女。

それは“禁忌”か、“新たな価値”か。


その答えを出すように、ふたりは確かに、堂々と踊っていた。

舞踏会の夜。視線に臆せず手を取り合ったふたりは、

「恋人」として初めて、人前に立ちました。

堂々と進んだその歩みは、新たな信頼と可能性の一歩。


次回、第30話は:

『そして、騒がしい朝が来る』

舞踏会の翌朝。

城内は大騒ぎ、そしてふたりは――ちょっと照れくさくて、幸せな目覚めを迎える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ