第18話『こっそり恋文、ばれて大混乱』
ふたりの間で交わされる、誰にも見せない“恋文”。
けれど甘く静かな秘密も、油断すれば――誰かの手に渡ってしまう。
偶然? 運命? それとも――お騒がせな天罰?
王城に巻き起こる小さな騒動と、揺るがぬ恋の行方。
ティアナは、控えの間に一人座りながら、そっと封筒を胸に押し当てた。
中には、彼女が昨夜こっそり書いた“恋文”――リュシアへの、まっすぐな気持ちを綴った手紙だ。
(今日の午前、リュシアさまの机にこっそり置く予定だったのに……!)
だが、その日は思いのほか忙しく、タイミングを逃していた。
ようやく空いた昼休み、彼女は手紙を持ってリュシアの私室へ向かう。
──が。
その途中、彼女の目の前に現れたのは、リュシアの幼なじみであり、騎士団に出入りするおしゃべりな貴族令嬢・マリーネだった。
「やっほー、ティアナちゃん♪ その封筒、もしかしてお手紙? 誰宛? 王女さま~?」
「えっ……な、なんで分かるんですか!?」
「うそ、ほんとに!? 当てずっぽうだったのに!!」
「えっ!? あっ、今のナシで!! 忘れてくださいマリーネさん!!」
「そう言われて忘れる人間が、この世にいるとでも!? ふふん、ティアナちゃんもついに来たわね、恋のステージに!」
「ああああ~~!! 返してください、今すぐ~~~!」
「ダメ~~! わたしがリュシア様に代わりに渡してあげるっ☆」
「お願いですから、騒がないで……!!」
まさかの恋文バレ(しかも強キャラ相手)。
ティアナの顔は耳まで真っ赤だった。
* * *
その日の夕方。
リュシアの部屋にて――
「……ふふ」
「っ、やっぱりもう読んでますよね!?」
「ええ、マリーネが鼻息荒く持ってきたわ。“こんな純情なお手紙ある!? あるの!? これ宝物ですわ~~!”って叫びながら」
「もう無理です……城を出ます……」
「ふふ、逃げないで。手紙、すごく嬉しかったわ。
特に、“あなたの笑顔が、わたしの朝を照らします”ってところ……綺麗だった」
「やっぱり読まれてる……っ!」
ティアナは崩れ落ちそうになりながら、それでもどこか救われた気持ちだった。
(……秘密はバレちゃったけど、リュシアさまは笑ってくれた)
その後、ふたりはマリーネにきつい口止めと、アイス菓子二つを“黙ってて料”として贈り、
どうにか城中に広まる前に事態を収束させた。
――と思いたい。
“ふたりの秘密”が、思わぬ形で第三者にバレてしまった今回。
でも、大切なものが壊れることはなかった。
むしろそれは、絆の強さを確かめる小さな試練――だったのかもしれません。
次回、第19話は:
『恋人と過ごす、雨の日の午後』
外は雨。静かな午後。
部屋にふたりきり、特別なことは何もなくても、心がとろけていくような――甘い時間。




