表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る城で、わたしは恋をした ― 元気な少女と無表情な姫君の、ゆっくりとほどける心の距離 ―  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/51

第17話『ふたりの秘密と、小さな贈り物』

“恋人ごっこ”から“本物の恋人”へ。

その境界線を越えたふたりが、最初に交わすのは――誰にも知られない“ふたりの秘密”。

そして、はじめて贈る、小さくてあたたかいプレゼントの物語。

「――これ、受け取ってください」


ティアナがそっと差し出したのは、掌におさまる小さな包み。

中身は、手縫いのリボンチャームだった。

銀糸で縁取りされ、リュシアの髪色に似た淡い紫で彩られている。


「……これ、もしかして」


「はい。昨日、夜なべして……縫いました。

リュシアの髪につけたら、きっと似合うなって、ずっと思ってて……」


リュシアは包みをほどき、しばらく黙ってそれを見つめていた。

やがて、そっと指先で撫でながらつぶやく。


「……温室で言っていたわね。“あなたの髪を何度でも結びたい”って」


「……はい」


「なら、これはその証ね。

受け取るわ、ティアナ。“わたしのものになって”という意味も込めて?」


「ひゃっ……そ、それはちょっと恥ずかしいです……!」


「ふふ。照れてるところ、可愛いわよ」


そのまま、リュシアは鏡の前に立ち、

チャームを髪の左側に結びつける。


「どう? 似合ってるかしら」


「……世界でいちばん、綺麗です」


「また大げさなことを」


「大げさじゃありません。本当の気持ちですから」


リュシアが照れたように目を逸らす。

その横顔があまりに愛おしくて、ティアナは思わず小声でつぶやいた。


「……もっと、ふたりだけの時間がほしいなぁ」


「じゃあ作りましょう。

誰にも知られないように、静かで甘い時間を――“ふたりの秘密”として」


* * *


それから数日、ふたりは周囲には変わらぬ主従として振る舞いながらも、

人目のない片隅で手をつないだり、

手紙のやりとりでこっそり甘い言葉を交わすようになっていた。


「ねぇ、今度わたしの部屋で、ふたりきりで本を読みませんか?」


「それは、ただの読書ですか?」


「“ただの”じゃないわ。“恋人同士で一緒に読む読書”よ」


「それってつまり……」


「ええ、“特別”ってこと」


甘く、ゆっくりと熟れていく関係。

贈り物を通して心を交わしながら、

ふたりの恋は、確かに深まっていた。

初めてのプレゼントは、心のこもった手作りのチャーム。

それは、言葉以上に強く、ふたりの関係を結びつけていきます。

“誰にも見せない恋”だからこそ、大切に重ねる日々がある――。


次回、第18話は:

『こっそり恋文、ばれて大混乱』

ふたりだけの秘密の恋文交換が、思わぬ形で“第三者”にバレてしまい……!?

ドタバタの中でも、ふたりの絆は崩れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ