第13話『王都の影と、守りたい人』
告白は一度保留――けれど、心はもう揺るぎない。
そんな矢先、城に届いたのは「王都に異変あり」との急報だった。
リュシアを守るため、ティアナは“ただの侍女”ではいられなくなる。
王女と侍女、その境界を越えて――物語は動き始める。
「王都南部にて、不審な集団の目撃情報多数。
現地の騎士団が出動したとのことですが……」
執務室に緊張が走っていた。
リュシアは王太后の代理として会議に同席していたが、
その横に控えるティアナの顔にもただならぬ気配が宿っていた。
「リュシアさま、念のため、侍従の部屋に戻っていてください」
「……いいえ、わたしも残ります。これは国の問題。目を背けるわけにはいきません」
きっぱりと告げたその姿に、ティアナは一瞬、息をのんだ。
(……やっぱり、強い人だ)
けれど同時に――
この人を、守りたいと思った。
たとえ、立場が違っても。
たとえ、名前を並べられなくても。
(わたしは、リュシアさまの隣にいたい)
そのとき、騎士団副長が声をかけてきた。
「……あなた、ティアナ嬢だね。護衛役を頼めるか?」
「えっ、わたしが?」
「王女の身近にいる中で、最も信頼されているのは君だろう。
剣も扱えると聞いた」
リュシアがちらりとティアナを見る。
その瞳に、問うような光。
ティアナは、すぐにうなずいた。
「……はい。わたしにやらせてください」
* * *
数時間後。
王都の周囲に展開する騎士団の報せにより、
“魔術を操る流浪の集団”が、南の森にて確認された。
ただの民間人ではなく、何らかの目的を持って王都に接近していたらしい。
「リュシアさま、しばらくは外出をお控えください。万が一にも備えて……」
「了解したわ」
「それと……わたしのことは、ただの侍女ではなく“警護”として扱ってください」
「……それで、あなたが納得できるのなら」
少しだけ寂しげに微笑むリュシア。
けれどティアナは、はっきりと言った。
「守りたいんです。リュシアさまの隣で。侍女でも、護衛でも、それ以上でも――」
言いかけて、息を呑む。
それは、あの時言えなかった“言葉”と同じ温度だった。
リュシアはふっと視線を落とし、少しだけ近づいてきた。
「じゃあ……この戦いが終わったら、続きを聞かせて」
「……はい。必ず」
騎士団の報告、警備の増強、そして静かに張りつめる城の空気。
その中で、ふたりの心だけが――温かい約束を交わしていた。
王都に忍び寄る影と、不穏な気配。
そんな中、ティアナは“護る者”としてリュシアの傍に立つ決意を固めました。
この危機を越えたとき、ふたりの関係はどう変わるのか――
次回、第14話は:
『最前線にて、彼女の剣が光るとき』
魔術師の集団に、ついに接触。
リュシアを守るために抜かれる剣と、戦いの中でこぼれる本音。




