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第94話 精霊たちの挑戦

魔法訓練が続くなか、ヒカリは精霊たちの成長を見守りながら、次の課題を与えることにした。


「みんな、そろそろ実戦形式でやってみようか」


「実戦形式?」


ルーファが首を傾げ、エルとフロストも不安そうな顔をする。


「そう、実際の戦闘を想定して、即座に魔法を発動できるか試してみるんだ」


「むむむ……我はやるのじゃ!」


フロストが胸を張って宣言すると、ルーファとエルも負けじと頷く。


「やるからには本気でいくわ!」


「ぼ、僕も頑張るよ……!」


カインは腕を組んで頷いた。


「なら、まずは俺が相手をしてやる」


「えっ!?カインが相手!?」


ルーファとエルが驚いた声を上げる。フロストも少し警戒した様子でカインを見た。


「相手にとって不足無しなのじゃ!」


「ほう、フロストやる気満々ではないか!」

カインは不敵に笑い、構えを取る。


「じゃあ、ルールを説明するね」

ヒカリが話し始めると、全員が真剣な表情で耳を傾けた。


「カインは本気ではなく、手加減した攻撃を仕掛ける。みんなはそれを回避しつつ、反撃の魔法を当てること」


「回避しながら攻撃か……難しそうね」


ルーファが呟くが、やる気は十分だった。


「時間制限は十分間。誰かがカインに攻撃を当てたら終了。いい?」


「「「了解!」」」

精霊たちは気合を入れて構えた。


「では――始め!」

ヒカリの合図と同時に、カインが素早く動いた。


「まずは手始めに……《火弾》!」


カインの掌から小さな火球が飛ぶ。


「きゃっ!」

ルーファが風を操って横に飛ぶ。エルとフロストもそれぞれ回避するが、フロストはぎりぎりで避けた。


「むむむ……おぬしの攻撃、速すぎるのじゃ!」


「これでも手加減してるぞ?」


カインはさらに動きながら、《火弾》を連続で放つ。


「くっ……!」


ルーファはすぐに反撃に移る。


「《風刃》!」

鋭い風の刃がカインに向かって飛ぶ。しかし――


「甘い!」

カインは軽く横に動くだけで回避した。


「そ、そんな!」


「次は俺の番だぞ!」

カインは素早く移動し、エルの前に現れる。


「エル、次はお前だ!」


「えっ、ええっ!?」

焦るエルに向かって、カインが《火弾》を放つ。


「うわっ!」

エルはとっさに《水盾》を展開し、火弾を防ぐ。だが、その勢いで後ろに転がった。


「し、失敗した……」


「まだ終わりじゃないぞ!」

カインはすぐに距離を詰める。しかし――


「ここは我がやるのじゃ!!」

フロストが割って入り、《氷槍》を放つ。


「ほう、なかなかやるな!」

カインは嬉しそうに笑いながら、その攻撃を避けた。だが、フロストの攻撃は続く。


「むむむ、今度こそ当てるのじゃ!」

フロストは次々と《氷槍》を放つ。しかしカインは巧みに回避し、笑みを浮かべる。


「まだまだだな!」


「くっ……!」


フロストが悔しがる中、ルーファが攻撃のチャンスを狙っていた。


(……このままじゃ、全然攻撃が当たらない。でも、今なら――!)


ルーファは素早く上空に舞い上がり、一気に魔力を練る。


「《真空の刃》!」

通常の《風刃》とは違い、圧縮した風の刃がカインに向かって放たれる。


「ほう……!」

カインはそれを見て、ニヤリと笑う。しかし――


「《水弾》!!」

エルがタイミングを合わせて《水弾》を放つ。


「さらに追撃!《氷槍》!!」

フロストも攻撃を加えた。


「これは……面白い!」

カインは笑いながらも、攻撃を避けきれず、《水弾》が肩に直撃した。


「よしっ!」

エルが喜びの声を上げる。


「やったのじゃ!」

フロストも満面の笑みを浮かべた。ルーファも大きく頷く。


「作戦勝ちね!」


「……ふっ、やるじゃないか」

カインは肩をさすりながら笑った。


「今回の勝負は、お前たちの勝ちだな」


「えへへ……!」


エルは照れながら笑い、ルーファとフロストも満足そうだった。


ヒカリは微笑みながら、精霊たちの成長を感じていた。


「みんな、すごく成長したね」


「むむむ、当然なのじゃ!」


「ぼ、僕も少しは強くなれたかな……?」


「うん、十分強くなってるよ」


ヒカリは優しくエルの頭を撫でた。


「これからももっと強くなれるよ」


「うん!」


精霊たちは、それぞれの成長を感じながら、新たな鍛錬へと進んでいくのだった。

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