第9話 クラリスとヒカリ、心が通じる瞬間
「……ヒカリ?」
クラリスが不思議そうに俺を見つめている。
庭園でエドワード王子と話した後、彼女は自室に戻り、静かに窓辺に腰を下ろしていた。俺もいつものように彼女のそばで漂いながら、様子を見守っていたのだが……。
(……あれ?やっぱりクラリス、俺の言葉が分かるのか?)
さっき、俺は思わず
「王子と仲良くなりすぎるなよ!」と念じるように光を揺らした。すると、クラリスが驚いた表情を見せたのだ。
「ヒカリ……今、何か言ったの?」
(えっ……マジで? いや、試してみるしかないか)
俺はふわふわと光を揺らしながら、強く念じる。
(クラリス、俺の声が聞こえるか?)
「……!」
クラリスの目が大きく見開かれる。
「今の……ヒカリ、あなたが話したの?」
(やっぱり聞こえてる!)
「やっぱり……! 私、あなたの声が分かるようになったの?」
クラリスは驚きながらも、嬉しそうに微笑む。
「ヒカリは、ずっと私と話そうとしていたのね?」
(そうだ! ずっと伝えたかったんだ!)
「……ふふ、嬉しいわ」
クラリスの笑顔がいつも以上に柔らかい。
「私、最初はただの光の精霊なのかと思っていたけれど……あなた、ちゃんと意思を持っていたのね」
(そうだよ! 俺は、クラリスを見守るためにここにいるんだ!)
「……ありがとう、ヒカリ」
(!?)
クラリスがそっと手を伸ばし、俺の光に触れようとする。もちろん、精霊である俺に直接触れることはできないけれど、その気持ちが伝わってくるようだった。
「ヒカリは、ずっと私を見守ってくれていたのね」
(当たり前だろ! 俺はお前の味方だからな!)
「……ふふ、なんだか心強いわ」
クラリスは少し瞳を潤ませながら、優しく微笑んだ。
「これからは、もっとたくさん話せるわね」
(もちろん! 俺はクラリスのそばにいるからな!)
「……ヒカリ、本当にありがとう」
クラリスの小さな手が俺の光を包むように差し出される。
俺は、その手のそばで静かに光を灯した。
(推しがこんなに喜んでくれるなら……もう、それだけで俺は満足だ!)
こうして、クラリスと俺の絆は、さらに深まっていったのだった。