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第63話 ラインの特訓

ヒカリは腕を組んでラインを見つめた。

「じゃあ、理解したらしいから実際にやってみて!」


ラインは少し後ずさりしながら渋々頷く。

「お、おう……やってやるよ!」


ヒカリはニコッと微笑みながら手を前に出した。

「それじゃあ、俺のやることを真似してね」


ヒカリはゆっくりと魔力操作を始めた。

「まず、自分の魔力を感じて、それを動かすイメージでこうやって流していく」


ヒカリの周りに淡い光の魔力がゆらゆらと漂い始める。

「で、その流した魔力を形にするんだ」


すると、光の魔力が小さな球体になってふわふわと宙を舞った。


「なるほどな、簡単そうだ」


ラインは腕を組んで頷いたが、カインがすかさず茶々を入れる。

「おいおい、言うのは簡単だけど、できるかどうかは別だぞ?」


「うるせぇ! やればできるんだよ!」


ラインは勢いよく目を閉じ、魔力を操作しようとした。


だが――


「……ん? んんっ? なんか、全然動かねぇぞ?」


カインは大笑いする。

「はははっ! 全然動いてねぇじゃねぇか!」


ラインはムッとしてカインを睨む。

「黙れ! お前はすっこんでろ!」


カインは余裕の表情で肩をすくめた。

「まぁ、頑張れよ、雷精霊さん?」


ヒカリは苦笑しながらラインに声をかけた。

「大丈夫、最初はみんなそんな感じだから。焦らずやってみよう」


ラインはもう一度深呼吸して集中し直す。

「……よし、やるぞ」


しかし、またもうまくいかない。


ファナが心配そうに声をかける。

「ライン、大丈夫?」


「……いや、ダメだ。魔力は感じるんだけど、どう動かせばいいのか分からねぇ」


ヒカリはしばらく考えた後、優しくアドバイスをした。

「ラインの場合、雷の属性だから、無理に魔力を静かに流そうとしないほうがいいかもね」


「……どういうことだ?」


「雷って一気に弾けるものだから、力を溜めて、それを解き放つイメージを持つといいかもしれないよ」


「なるほど……試してみる!」


ラインは再び目を閉じ、魔力を溜めるイメージを持った。


「うぉぉぉぉ……!」


バチッ――!


突然、ラインの周りに青白い雷が走った。


「おっ、今度は動いたな!」


カインが驚きながらもニヤリと笑った。


ラインは息を整えながら、自分の手のひらを見つめる。

「今度は……いけるか?」


もう一度、ラインは魔力を溜め、それを小さく放出しようとする。


「おぉぉぉ……!」


バチッ――!


「おおっ!」


ファナが嬉しそうに声を上げる。

「ライン、今のすごかったわよ!」


「はっ……へへっ! だろ?」


ラインは得意げに笑ったが、カインがすかさず指摘する。

「まぁまぁ、まだまだだな」


「なんだと?」


「さっきのはただの放電みたいなもんだ。そこから形を作らないと“魔法”にはならないぜ?」


ラインはムッとしながらも、ヒカリを見た。

「……確かにそうだな。次はどうすればいい?」


ヒカリは優しく微笑んだ。

「じゃあ、今の雷を小さな球にしてみようか?」


「雷を……球に?」


「うん、最初は小さく、だんだん形を作る感じで」


「やってみる!」


ラインはもう一度集中し、魔力を溜めてからゆっくりと放出した。


バチッ――!


雷の光が揺らめきながら、少しずつ形を作り始める。


「いけ……るか?」


バチバチッ――!


雷のエネルギーが収束し、小さな雷の球がラインの手のひらに現れた。


「できた……?」


ファナは目を輝かせてラインを見つめる。

「ライン、すごいじゃない!」


カインも腕を組んで頷いた。

「まぁ、形になってきたな。ここからどう使うかが課題だな」


ヒカリも満足げに微笑んだ。

「うん、最初としては上出来だよ!」


ラインは得意げに胸を張る。

「へへっ! まぁ、俺様にかかればこんなもんよ!」


カインがニヤリと笑う。

「じゃあ次は、その雷の球を飛ばしてみろよ」


「なっ……!? そんなのまだ無理だろ!」


「へっ、だったらまだまだ初心者だな」


「くそっ、見てろよ! 絶対にやってやるからな!」


ラインは一人、黙々と魔力操作の練習を続けた。


(くそ……ヒカリの言う通りにやってみるけど、やっぱり上手くいかねぇな)


自分の手のひらに魔力を集中し、雷の球を作ることには成功した。しかし、それを安定させるのが難しい。


少し離れたところでは、クラリスとファナが談笑していた。


「そうなんだ。クラリスの通う予定の学園に私も通おうかな。すごく面白そうだし!」


ファナは目を輝かせながらクラリスに言う。


「えっ? ファナ様がこの国の学園に? それは……きっと大変なことになりますよ?」


「えー? なんで?」


「だって、隣国の王女様がこの国の学園に居たら、色々と問題になりそうで……」


クラリスが困ったように微笑むと、ファナは頬を膨らませた。


「でも、面白そうなんだもん! クラリスと一緒に勉強したいし!」

「それに私のお母様はこの国の元王女だからきっとこの国の学園に行けると思うの」

そんな微笑ましい会話の中、突然――


バチバチバチッ!!


「お、おい!? なんかヤバくないか!?」


ラインの周りに雷のエネルギーが激しく渦巻き始めた。


「う、うぉぉ!? 止まんねぇ!」


暴走した雷の魔力が周囲に広がり、今にも爆発しそうな気配を見せる。


「まずい!」


ヒカリがすかさずラインに向かって手をかざした。


「シャインプリズン!」


バシュッ――!


黄金の光がラインを包み込み、彼の魔力を一瞬で封じ込めた。


「ぐっ!? またこれかよ!」


ラインは再び光の檻の中に閉じ込められた。


「ふぅ……間に合った」


ヒカリは安堵のため息をつく。


カインは腕を組んでラインを見つめ、ふとあることに気づいた。


「……ヒカリのシャインプリズンって、魔力そのものを拘束できるんだな」


ヒカリはカインの言葉に首を傾げる。


「え?」


「見ろよ、さっきまで暴走してた雷の魔力が完全に収まってる。普通、精霊の魔力って流れ続けるものだろ? それがピタッと止まってるんだ」


確かに、暴走していたラインの魔力は、シャインプリズンによって完全に封じられていた。


「なるほど……つまり、ただの拘束魔法じゃなくて、魔力を強制的に制御する力もあるってことか」


「ちっ、また俺だけ閉じ込められるなんて納得いかねぇ!」


ラインは光の檻の中で不満そうに唸る。


ファナが心配そうに駆け寄った。


「ライン、大丈夫?」


「お、おう……けど、さっきよりマシだな」


ヒカリはラインの檻を解除しながら、微笑んだ。


「暴走は収まったみたいだね。ラインも、これをヒントに魔力のコントロールを覚えれば、もっと強くなれるよ」


ラインは悔しそうに舌打ちしながらも、ヒカリを見据えた。


「……チッ、仕方ねぇ。もうちょっと練習してやるよ」


カインがニヤリと笑う。


「へっ、じゃあ今度はその雷を自在に操れるようになれよ?」


「言われなくてもやるっつーの!」


こうして、ラインの特訓はまだまだ続くのだった。

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