第4話 クラリスの悩み
「ヒカリ、今日も来てくれたのね」
クラリスが微笑みながら俺――光精霊ヒカリに話しかける。
(推しに名前をつけてもらえるの、やっぱり最高だな……!)
俺はふわりと宙を舞いながら、クラリスの周囲をゆっくり回るように飛ぶ。
「ヒカリ、今日はね、お父様とお母様が王城の会議に行っていて、お屋敷にはいないの」
(なるほど、つまり今日は親の目を気にせず過ごせるってことか)
クラリスは寂しそうな表情を浮かべるが、すぐに笑顔を作る。
「だから、今日はヒカリとたくさんお話しできるわね」
(そうだな、推しとおしゃべりできるなら何時間でも付き合うぜ!)
俺はキラキラと光を瞬かせ、クラリスに同意を示した。
「ふふ、ヒカリはやっぱり優しいのね」
クラリスは嬉しそうに微笑み、庭のベンチに腰掛ける。俺はその近くをゆらゆらと漂いながら、彼女の様子を観察することにした。
***
クラリスの生活を知るために、俺は彼女が日々どのように過ごしているのか探っている。
彼女が屋敷の中に戻ると、メイドたちが丁寧に挨拶をし、彼女の服を整えたり、お茶の準備をしていた。クラリスは落ち着いた様子でそれに応じている。
(幼いのに、すでに公爵令嬢らしい振る舞いをしているんだな)
しかし、ふと彼女の表情がわずかに曇るのを見逃さなかった。
「お嬢様、本日はピアノの練習がございます。その後は礼儀作法の復習をいたします」
「わかりました」
淡々とした返事。しかし、俺にはクラリスが少し疲れているように見えた。
(遊ぶ時間とか、ないのか……?)
そう思っていると、クラリスがちらりと俺のほうを見る。
「ヒカリ……私、頑張っていると思う?」
(もちろんだ!)
俺は力強く光を瞬かせた。
クラリスは小さく微笑むが、どこか寂しそうだった。
「ありがとう。でも、たまにね、少しだけ……自由になりたいと思うの」
(自由に……?)
俺はクラリスの言葉に驚いた。
「私は公爵家の娘だから、きちんと振る舞わなくてはいけないわ。……でも、本当は、誰かと楽しく遊んだり、おしゃべりしたり、そういうことをしてみたいの」
(……そっか。クラリスはずっと、孤独だったんだな)
ゲームでは彼女は冷徹で完璧な令嬢として描かれていた。でも、それは幼い頃から努力して作り上げた姿だったのかもしれない。
俺は光を大きく揺らしながら、クラリスの前を飛び回る。
「ふふ、ヒカリは元気ね」
(クラリス、お前が楽しいって思えることを、俺が見つけてやるよ!)
俺はそう決意し、クラリスのそばで光を輝かせ続けたのだった。




