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第31話 精霊たちの秘密話

ピクニックから戻ったヒカリとカインは、クラリスの魔法について話し合っていた。


「クラリスの魔法、すごかったな」ヒカリが感心したように言うと、カインも頷いた。

「うむ、まさかあそこまで見事に適応するとはな」


今回の魔法では、カインの火属性の魔力を抑え、ヒカリの光属性の魔力を多く送ることで、闇を浄化する効果が生まれた。それが見事に機能し、闇墜ちした魔物を元の姿へと戻すことができたのだ。


「今後もクラリスに送る魔力を調整しつつ、俺たちも魔法の特訓を開始する頃合いだな。俺たちの魔力操作も、かなりいい感じにできるようになってきた」

カインが続けると、ヒカリも嬉しそうに頷いた。


そこへ、水精霊が興味津々といった様子で近づいてきた。

「ま、魔力操作って君たちは、な、何をしてるんだ?」


ヒカリが説明する。

「俺たちはクラリスに魔力を送って、彼女の魔法を強化してるんだ」


水精霊は驚いた顔で目を丸くする。

「そ、そんなことができるのか?」


「まあな。ただし、クラリスが適応できる範囲の魔力に調整する必要があるけどな」

カインが答えると、水精霊はしばらく考え込んだ。


やがて、水精霊は自信ありげに言った。

「ぼ、僕もクラリスに魔力を送ってみたい!」


その瞬間、カインが表情を引き締めて、きっぱりと言った。

「それはやめておけ」


「えっ?」水精霊は驚いてカインを見る。


「クラリスは火属性持ちだ。水属性の魔力を無理に流し込めば、どんな影響が出るか予想できない。最悪の場合、クラリスの魔力回路が壊れる可能性すらある」


ヒカリも「確かに……。光属性の俺の魔力を送るだけでも、カインの火属性と組み合わせないとクラリスに負担がかかるんだよな」と納得する。


しかし、水精霊は納得がいかない様子だった。

「で、でも、僕もクラリスの役に立ちたい……!」


「気持ちはわかるが、無理にやる必要はない」

カインが冷静に言い聞かせる。


「ど、どうしてもダメなの?」


「火と水は相反する属性だ。もしお前の魔力を直接流せば、クラリスの魔力回路が反発を起こし、混乱するかもしれない」


「そ、そんな……」


水精霊は肩を落とした。


ヒカリが少し考え、「でも、水精霊の力を活かせる方法があるかもしれない」と提案した。


「どういうこと?」水精霊が顔を上げる。


「直接クラリスに魔力を流すんじゃなくて、俺たちの魔力操作を通して、ごく少量ずつ混ぜてみるんだ。もしそれで問題がなければ、少しずつ調整しながら試せるかもしれない」


カインは腕を組みながら考え込む。

「……確かに、その方法ならすぐに危険な影響が出ることはないかもしれんな」


「そ、それなら試してみたい!」

水精霊が目を輝かせる。


カインはしばらく黙っていたが、やがて深く頷いた。

「いいだろう。ただし、俺とヒカリが常に監視する。少しでもクラリスに異常が出たら、すぐに止めるぞ」


「う、うん!」水精霊は嬉しそうに返事をした。


「じゃあ、水精霊、お前の魔力をほんの少しだけ試してみるぞ」

カインが慎重に言う。


「わ、わかった……」水精霊は緊張しながら返事をする。


「クラリス、準備はいいか?」

ヒカリが尋ねると、クラリスは小さく頷いた。


「はい、大丈夫です。でも……本当に問題ないんですか?」


「俺たちがしっかり調整する。もし少しでも異変を感じたら、すぐに止めるから安心しろ」

カインが自信を持って言った。


「わかりました」クラリスは深呼吸して、魔力の流れを感じる準備をした。


カインとヒカリがまずいつも通りのバランスでクラリスに魔力を送る。クラリスの体がじんわりと温かくなり、魔力が循環するのを感じる。


「じゃあ、水精霊、ほんの少しだけ魔力を送ってくれ」

カインが指示を出す。


「う、うん……!」水精霊は慎重に水属性の魔力をクラリスに向けて放出した。


その瞬間――


「っ……!?」

クラリスの体がびくっと震えた。


「カイン、まずいぞ!」

ヒカリが警戒する。


カインはすぐに魔力の流れを制御し、水精霊の魔力がクラリスの体内に広がらないように調整した。


「クラリス、大丈夫か?」


クラリスは少し息を整えながら、「……はい、なんだか少し冷たく感じました。でも、それほど辛くはなかったです」と答えた。


カインは眉をひそめる。

「なるほどな……火属性と水属性はやはり根本的に相性が悪い。ただ、即座に拒絶反応が出るわけではなかった」


「もしかして、もう少し調整すれば、クラリスも水属性の魔力を少しだけなら扱えるようになるのか?」

ヒカリが興味深そうに言う。


「いや、それは危険だ。今回のように少しずつなら問題なくても、無理に水属性の魔力を流し続ければ、クラリスの魔力回路が傷つく可能性がある」


水精霊は肩を落とした。

「や、やっぱり僕の魔力はクラリスには合わないのか……」


クラリスはそんな水精霊に優しく微笑んだ。

「でも、あなたの魔力を感じることができました。もしかしたら、少しずつ慣れていけば、水属性の力をうまく扱えるようになるかもしれません」


カインは考え込む。

「……そうだな。現状では難しいが、完全に無理というわけではなさそうだ。少しずつ訓練すれば、水属性の影響を和らげる方法が見つかるかもしれん」


ヒカリがクラリスの顔を覗き込み、「無理しなくていいからな。お前が苦しむようなら、すぐに止めるぞ」と言った。


「ええ、ありがとう、ヒカリ」

クラリスは笑顔で答えた。


水精霊も少し元気を取り戻し、「ぼ、僕もできることがあったら協力する!」と意気込んだ。


こうして、精霊たちとクラリスの新たな挑戦が始まった。火属性のクラリスが水属性の魔力をどこまで受け入れることができるのか――それは未知の領域だったが、彼女の成長の可能性を広げる重要な一歩となるかもしれなかった。

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