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光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!  作者: のほほん


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第231話 黒曜石の守護王

ザード(ヒカリ)から「核への魔力を辿り、核を突く」というコツを教わった精霊たちは、四十九階層の攻略を再開した。


「なるほど……魔力の『流れ』を意識する、か。確かに、集中すれば岩の隙間を縫うように走るラインが見えるわね」


ルーファは不敵に微笑むと、広範囲を薙ぎ払う風ではなく、極限まで圧縮した「真空の針」を指先に作り出した。


ラインも同様に、雷の出力を一点に凝縮し、細く鋭い「迅雷の刺突」を練り上げる。


目の前に立ちふさがる三体の『黒曜石の守護兵オブシディアン・ゴーレム』。


「そこよッ!」


ルーファが放った風の針は、ゴーレムが魔法を分散させるよりも早く装甲の隙間を潜り抜け、内部の核を正確に貫いた。


ガッ、とゴーレムの動きが止まり、そのまま音を立てて砂へと還っていく。


「やったわ……! 魔法が散らされる前に中枢を叩けば、こんなに簡単なのね!」


ラインも無言で雷の刺突を放ち、二体目を一撃で沈める。魔法との相性が最悪だったはずの精霊たちが、ヒカリの助言による「技術」で次々とゴーレムを無力化していった。


「みんな、飲み込みが早いね。」


ザードが感心したように頷き、一行は四十九階層をかつてない速度で突き進んで行った。


その頃、王都郊外で一角ウサギに蹴り飛ばされたカインは、怒りで全身を真っ赤に発光させていた。


「お、おのれ……! この我が、あのような名もなき獣に不覚を取るとはッ! 許さぬ、断じて許さぬぞ!」


地面から這い出したカインは、プライドにかけて再び「人化」の特訓を開始した。

 

人化と大剣を作り出しては一角ウサギに挑み蹴り飛ばされるを繰り返すうちに徐々に安定していく。


(ヒカリに出来て、この我に出来ぬ道理はない……! 魔力を外に漏らすな、内側で限界まで固めろ……!)


「はぁぁぁぁっ!!」


凄まじい熱風と共に魔力が渦巻き、霧が晴れた後には、燃えるような赤髪と鋭い瞳を持つ一人の青年が立っていた。右手には、まだ輪郭が微かに揺らいでいるものの、重厚で巨大な炎の大剣が握られている。


「ふ、ふははは! 見たか! これこそ我が真の姿よ! ……って、あーっ! もう夜ではないか! 皆、我を置いてダンジョンに行ってしまったかーッ!!」


月が高く昇っていることに気づき、カインは血相を変えて学園ダンジョンへと飛び込む。人化と大剣の維持に全神経を使いながら、凄まじい速度で四十九階層を駆け抜ける。


四十九階層の最奥の階段を下りると五十階層の巨大な扉が見えた。その扉の前にザードたちが到着していた。


扉の奥から禍々しい魔力を感じたザードが呟く。


「これって亜種かもしれないな」


「確かに異常な魔力量だな」


「そうね」


ヒカリ以外にラインとルーファも扉の奥から禍々しい魔力が流れていることに気付いた。


「ここで考えても仕方ないし行こうか」


ザードが扉を開けようとした、その時、階段の上からカインの声が聞こえた。


「待てぇぇぇい! 我を置いていくなぁぁぁ!!」


背後の階段から猛烈な勢いの足音と叫び声が響いてきた。


「人化姿のカイン」が、炎の大剣を振り回しながら全速力で突っ込んできたのだ。しかし、速度を上げすぎたカインは、止まることができない。


「え、カイン!? その姿……」


ザードが驚いて声をかける暇もなく、カインは一行の横を弾丸のように通り過ぎ、そのまま五十階層の重厚な扉へと真正面から激突しました。


ドガァァァン!!


激しい衝撃音と共に、五十階層のボス部屋の扉が豪快に開いた。


「え? 何やってるのカイン!」


ザード(ヒカリ)が思わず叫ぶが、勢い余って扉を突き破ったカインは、そのままボールのようにボスの足元まで転がっていき、派手な音を立てて止まった。


目の前に鎮座していたのは、四十九階層のゴーレムをさらに巨大化させ、四本の腕に巨大な黒曜石の剣を持った『黒曜石の守護王オブシディアン・ジェネラル』。


その巨大な王の足元で、カインはフラフラと立ち上がる。


「くっ、おのれ、この我の華麗なる登場に驚いたか!」


カインは、必死に格好をつけながら、まだ少し形が揺れている炎の大剣を構えた。


「ヒカリ! 見るが良い、これこそ特訓の成果! 我の『人化』と『炎の魔剣』、その目に焼き付けるが良いぞ!」


「いや、焼き付ける前に後ろ! 後ろ見て!」


ザードが指差した先では、『守護王』が、ゆっくりと四本の剣を振り上げる。


「ガァァァァァッ!!」


守護王の咆哮と共に、巨大な黒曜石の剣がカイン目掛けて振り下ろされる。


「ぬぉっ!? 『爆炎の構え』!」


カインは咄嗟に大剣で受け止めようとしますが、人化と武器の維持に魔力を割いているため、いつもの精霊らしい素早い動きができません。


ドォォォォンッ!!


「あぐっ……!? お、重い、重すぎるぞ!」


剣を受け止めたものの、カインの足元が衝撃でひび割れた。


「カイン、下がって! みんな、さっきの練習通りに行くよ!」


ザードが指示を飛ばすと同時に、『光の階段シャイン・ステップ』!光の足場が無数に現れ、ザードは光の足場を蹴って守護王の死角へと回り込んだ。


「任せろ! 『迅雷の刺突』!」


「逃がさないわよ、『真空の針』!」


ラインとルーファが、精密射撃を放つ。狙うは守護王の巨大な体の中に隠された、複数の「魔力の結節点」。しかし、守護王の剣がラインとルーファの魔法を叩き落とす。


「ぬぐぐ……我を助けるなど百年早いわ! 見ておれ、このまま……ボフッ!?」


案の定、踏ん張りどころでカインの魔力制御が乱れ、人化が解けていつもの「赤い精霊」の姿に戻ってしまった。


「むぉー、またか⋯⋯!」


精霊の姿に戻ったカインの目の前に、守護王の二本目の剣が迫ります。


「ま、まってくれ! 」


カインが情けなく叫ぶが、当然ながら魔物に『待て』など通用しない。守護王の巨大な黒曜石の剣が、無慈悲にカインを叩き潰そうと振り下ろされた。


『シャインシールド』!


間一髪、ザード(ヒカリ)がカインの前に光の盾を展開した。 


重厚な破壊音と共に、激しい火花が飛び散る。しかし、その直後……。


パリンッ!!


澄んだ音を立てて、ヒカリの光の盾が粉々に砕け散りました。


「……っ! 俺の魔力を、ボスの攻撃力が上回ってる!?」


ザードの顔に驚愕の色が走る。これまでの階層の魔物とは、一撃の「重み」が桁違いだった。盾を砕いた剣の勢いは衰え無いが、剣の軌道が反れ、そのまま地面を激しく叩き、凄まじい衝撃波を撒き散らす。 


「カイン、逃げて!!」


ザードの叫びと同時に、守護王の二本目、三本目の剣が追撃のために持ち上がった。


「もうっ、本当に世話が焼けるわね! 『風の防壁エアリアル・ウォール』!」


後方からルーファが、巨大な風の渦を巻き起こし舞い上がった土煙と突風が守護王の視界を遮り、わずかな隙を作る。


「あわわわわわっ!!」


カインはその隙を突いて、短い手足をバタつかせながら必死にその場から離脱した。間一髪、彼がさっきまでいた場所には四本の剣が同時に突き立てられ、クレーターのような穴が空いた。


「……何やってるのよ、カイン!!」 


合流したカインに向け、ルーファが烈火のごとく怒鳴りつけました。


「う、うるさいのだ! 我はただ、新しい技の威力を試そうとしただけで……」


「試す前に消滅したら世話ないでしょ! 人化も解けてるじゃない!」


精霊たちの叱責を背に、ザードは冷や汗を拭いながら再びレイピアを構え直しました。


「……みんな、茶化してる余裕はないよ。あいつ、今までのボスとはレベルが違う。本気で連携しないと、こっちがやられる!」


『黒曜石の守護王』が、視界を遮る風を力任せに振り払い、赤い眼光を妖しく光らせた。


「俺が引きつけるから、みんなは腕を攻撃して!」


ザード(ヒカリ)の鋭い指示が飛ぶ。盾が砕かれた今、まともに受けるのは得策ではない。ザードは即座に機動力重視の戦法に切り替えた。


「わ、分かった! 」


「分かったわ! あの図体、いい的にしてあげる!」


「任せろ!」


「やるのじゃ!」


精霊たちがそれぞれの位置に散ると同時に、ザードが地を蹴った。


「こっちだよ、デカブツ!」


ザードは『光の階段シャイン・ステップ』を展開する。


空中に無数の光の足場を出現させ、重力を無視した三次元的な動きで守護王の顔の周りを飛び回ります。


「ガァァァッ!!」


苛立った守護王が、四本の黒曜石の剣を荒々しく振り回す。一撃ごとに空気が爆ぜ、衝撃波が部屋の壁を削るが、ザードは紙一重の差で見切り、翻弄する。


「今だ、やって!!」


ザードが守護王の注意を完全に引きつけたその瞬間、四方から精霊たちの研ぎ澄まされた魔力が放たれた。狙うは、「魔力の流れ」が集中する腕の関節部。


『迅雷の刺突』!!


ラインが放った極細の雷が、右上の腕の肘関節を正確に貫通。内側から魔力の結合を焼き切る。


『真空の断頭刃』!!


ルーファの圧縮された風の刃が、ラインが攻撃した右上の腕を深く切り裂く。  


フロストが守護王の動きを封じ、エルが放った水魔法が、右上の腕の動きを上から押さえつけ、地面へと叩きつけた。


バキィィィィィンッ!!!


凄まじい破壊音と共に、守護王の右上の腕が根元から砕け散り、巨大な黒曜石の剣が一本、床に転がった。


「よし、一本! このまま畳み掛けるよ!」


ザードの叫びに、精霊たちがさらに魔力を練り上げる。しかし、腕を一本失った守護王の瞳が、より深い不気味な赤色に輝き始めました。


「ギギ……ガガガガッ!!」 


守護王は残った三本の腕を交差させ、全身から黒い魔力を噴出させる。どうやら、ここからがボスの真骨頂のようだ。


ボスの腕を一本破壊したことにより、守護王が「狂暴化モード」に突入する!

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