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光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!  作者: のほほん


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第230話 ヒカリの凄さ

その日の夜、ヒカリたちは学園ダンジョンの四十九階層を目指して集まった。  


「そろそろ行こうか」


ヒカリが声をかけると、ルーファが不思議そうに辺りを見渡した。


「あら、まだカインが来てないわよ? あいつ、いつもなら一番乗りで騒いでるのに」


「あはは……カインは今日、何か大事な用事があるらしいよ。放っておいていいよ」


「あら、そうなの。珍しいわね。じゃあ、私たちだけで行きましょうか」


精霊たちはカインを残し、慣れた足取りで学園ダンジョンへと入っていった。


入り口には夜番の兵士が立っているが、毎晩のように潜っているヒカリたちを見ても、今では「いつものことか」と思い何も反応しなくなった。


「さぁ、今日は五十階層のボスまで一気に行こうか!」


「了解だ、ヒカリ。足並みを揃えていくのじゃ」


フロントが気合を入れると、一行はそのまま一階の転送装置へと移動した。ヒカリは転送装置の前で、いつものようにスッと魔力を練り上げ、金髪の青年「ザード」へと人化した。


「よし、準備万端。行くよ」


ザードの姿で転送装置に乗ると、景色が一瞬で歪み、一行は四十八階層の出口付近へと転送された。そこからすぐ近くにある階段を下りると、そこはこれまでの階層とは趣の異なる、冷たく無機質な岩が点在する四十九階層でした。


「……静かすぎるわね。四十八階層の騎士たちとは、また雰囲気が違うわ」


ルーファが、警戒を強める。


四十九階層は、植物一つ生えていない黒い岩の荒野が広がっていた。遮蔽物が少なく見通しは良いはずなのだが、点在する岩石が不自然な魔力を帯びており、索敵を妨害する。


「あの岩、ただの岩じゃないね」


ザードが冷静に指摘した瞬間、十数メートル先にある巨大な岩石が、地響きを立てて動き出した。


「『黒曜石の守護兵オブシディアン・ゴーレム』か……。四十八階層の騎士より硬そうだね」


ザード(ヒカリ)はレイピアの柄に手をかけ、薄く微笑んだ。


「それじゃあ、戦闘開始だね」


「やるのじゃ! 『氷結のフリーズ・ケージ』!」


フロントが魔法を放つと、ゴーレムの足元が瞬時に凍りつき、その巨体を固定した。


「今だ! 行くぞ!」


ザード(ヒカリ)は、光の足場を縦横無尽に駆け巡りながら、踊るような身のこなしで『黒曜石の守護兵オブシディアン・ゴーレム』の関節部へと的確にレイピアを突き刺した。


一方で精霊たちは苦戦を強いられていた。


「……っ、これじゃ拉致があかないわ!」


ルーファが放った鋭い風の刃は、ゴーレムの表面を覆う黒曜石に触れた瞬間、パッと霧散するように消えてしまった。


「これはかなりかかるわね……。物理的な衝撃は通るけど、魔法が芯まで届かないわ」


それはライン、エル、フロントも同様だった。黒曜石には魔力を分散・吸収する性質があり、精霊たちの得意とする純粋な魔力攻撃は、その装甲に阻まれて決定打にならない。


「……これは、きついのじゃ。魔法を撃つたびに魔力を吸い取られているような感覚がするのじゃ」


フロントが顔をしかめると、ラインも冷静ながらも困り果てたように呟く。


「どうするかな。魔法が無効化されるとなると、俺たちには相性が悪すぎる」


ラインの愚痴にザードが、口を挟む。


「みんなも『人化』してみれば? 」


ヒカリがひょいとゴーレムの攻撃を避けながら助言するが、ラインは即座に首を振った。


「いや、それは無理だな。即席でやれないことは、カインを見ていてよく分かった」


「そうよね。カインみたいに人化が解けた瞬間に、あの巨大な拳で潰されたら、ただじゃ済まなそうだわ……」


ラインとルーファの正論に、ヒカリも「うーん、そっか」と納得した。


カインの「ボフッ」という失敗は、仲間たちにとって強烈な反面教師になっていたのだ。


「じゃあ、今回は俺の出番だね」


ザード(ヒカリ)はレイピアを一度消すと、軽く肩を回す。


魔法が効きにくいなら、武の技と最小限の練り込んだ魔力で粉砕する。それはまさに、今ヒカリが「ザード」として磨き上げている技術の真骨頂である。


「みんなは後ろで下がっていて。――さて、黒い塊くん。少しばかり硬すぎるみたいだから、僕が解体してあげるよ」


ザードが指先をパチンと鳴らす。


『光速の縮地(シャイン・ダッシュ)


目にも留まらぬ速さで、ザードが一体のゴーレムの懐へ潜り込む。


黒曜石の巨拳が振り下ろされるが、ザードはその衝撃波さえも利用するように紙一重で回避。


「そこだ!」


魔力を極限まで一点に集中させた「寸止めの一撃」が、ゴーレムの胸部――魔力の核がある一点に突き刺さった。


パキィィィィィィィンッ!!!


魔法を分散するはずの黒曜石が、その圧倒的な浸透力に耐えきれず、クモの巣状に亀裂を走らす。


「……一丁上がり」


ザードが背を向けた瞬間、巨像は音を立てて崩れ落ちた。


「な、なんて出鱈目な威力なの……」


ルーファが呆然と呟く中、ザードは残りの四体を見据えて不敵に微笑む。


金髪をなびかせ、ザードは再び黒い巨像の群れへと飛び込んだ。


次々とゴーレムを沈めていくザードの背中を見ながら、ラインが不意にそんな言葉を漏らす。


「別に人化に拘る必要は無いんじゃないか」


「……どういう事よ、ライン?」


ルーファが不思議そうに聞き返す。自分たちの魔法が効かない以上、今はヒカリに任せるしかないと思っていたからだ。


「いや、見てみろよ。ヒカリの戦い方は、人化による筋力や体格を活かした力押しじゃない。あいつはただ、武器をゴーレムの核へ的確に、一点に集中して突き刺してるだけだ。あれなら、人化してなくても――いつもの精霊の姿のままでも、同じことがやれるよなと思ってな」


ラインの冷静な分析に、他の精霊たちもハッとした表情を浮かべる。


「確かに……。ヒカリは、人の姿をしていても、動かし方は精霊のそれだわ。ただの『物理攻撃』というよりは、魔力を極小の点に凝縮して、装甲の隙間にねじ込んでるだけに見えるわね」


ルーファも納得したように頷く。つまり、ヒカリが圧倒的なのは「人の姿」だからではなく、単に彼の魔力制御と精密動作が、精霊の常識を遥かに超えているからに他ならない。


「あはは、バレちゃった?」


最後のゴーレムを砂に変えたザードが、照れくさそうに振り返ります。


「ラインの言う通りだよ。姿がどうあれ、やることは変わらないからね。でも、今の僕には『ザード』としての体の大きさに慣れるのが一番の修行なんだ。このリーチ、この重心……精霊の時とは感覚が全然違うからさ」


ヒカリは自分の手を見つめ、握ったり開いたりする。


納得したラインは、自らの魔力を練り上げ、一本の鋭い雷の槍を作り出した。人化はせずとも、威力を一点に凝縮すれば貫けるはず――そう確信して槍を放つが、ゴーレムはそれを巨大な岩の拳で無造作に叩き落とした。


バキーン!


「単調な攻撃だと、やはり弾かれるか……」


「そうね。それに、そもそも核がどこにあるかも分からないし……」


ルーファが肩を落とすと、フロントがずっと抱いていた疑問を口にします。


「……何故、ヒカリはあんなに的確に核を貫いているのじゃ?」


「確かにそうね。ヒカリに聞くのが早そうだわ」


精霊たちは、ゴーレムを解体し終えたザードに詰め寄った。


「ヒカリ、なんであんたには核の位置が分かるのよ?」


ルーファの問いに、ザード(ヒカリ)は不思議そうに首を傾げます。


「え? ……んー、見れば分かるよ?」


「……分からないから聞いてるの!」


ルーファがキレ気味に反論するとヒカリは慌てて、もっと分かりやすい言葉を探した。


「えっとね……この子たちは核から魔力を流して、バラバラの岩をゴーレムの形に維持しているんだ。だから、その魔力の流れを逆に辿っていけば、自ずと核に辿り着くよ」


ルーファのキレ口調にヒカリは思う。

(てか、人化してないのに思考は、人化してるよな)


その説明を聞き、ラインたちは納得すると同時に、改めてヒカリの異常なまでの観察力と精密な魔力制御に驚かされた。


そんな仲間の視線を知ってか知らずか、ザードは楽しそうにレイピアを回した。

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