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光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!  作者: のほほん


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第214話 鐘の響きとガルド王国の歓喜

ヒカリはソフィアたちとゆっくりと塔を降りて行く。塔にいたアンデッドの敵は全て浄化されたはずだが、万が一残っていた場合、ユーリアを抱えているカルマは戦闘に参加できない。


ヒカリは、塔の入り口で始まるイベントを観るのと、護衛を兼ねてソフィアたちと行動を共にしている。


塔の入り口への道中、ヒカリとソフィアは他愛もない会話をしていた。


「これでソフィアもB級になれるね」


「あ、はい、これで『ぶとうかい』に出れます」


(何故、舞踏会に出るのにB級ライセンスがいるんだろ?)

ヒカリは特に聞き返すことなく話を進めた。


「へー、そうなんだ」


「はい!優勝を目指してます」


「え?優勝?」

(社交ダンスの一番を決めるのかな)


「ひ、ヒカリさんも出られるんですか?」


「え?俺は出ないよ」


(いやいや、何故俺が舞踏会に出るって話になるんだろ)


「そ、そうですか……」

ソフィアは落胆から尻尾が下がり、耳がペタンと垂れ下がる。


「どうしたの?」

ソフィアの異変に気付いたヒカリは、ソフィアの顔を覗き込む。


「キャー!」


ドン!


ヒカリはソフィアに突き飛ばされ、壁へと激突した。突き飛ばしたソフィアは手で顔を塞いでいる。


(まじかー!思いっきり突き飛ばされたけど!てか絶対ソフィア前衛だよな!)


ヒカリはスッと、ユーリアを抱えるカルマへと移動した。


「ねーねーカルマさんよ、みた?みた?どう考えてもソフィア前衛だよね?ねーねー」


ヒカリがカルマに絡むが、カルマは何も言えない。すると魔道士と短剣持ちの獣人女性が代わりに答えた。


「ソフィア様は女性の中では一、二を争う怪力の持ち主です」


「怪力だけではありません。戦闘の実力も兼ね添えています」


「今度の武闘会の優勝候補です」


「だよね、だよね!……え?そっち?」


(舞踏会じゃなくて武闘会かよ!)


ヒカリがソフィアの怪力に同意したのも束の間、話題が武闘会に移り驚いた。


「はい!出場条件を今回で満たしますので」


「B級が出場条件ってことか」


「そうです」


「じゃあ何故後衛なの?」

ヒカリの素朴な疑問に、魔道士の獣人が答える。


「護衛するのに前衛だと支障が出かねないので、回復魔法も使える事から後衛にしています」


ソフィアが後衛にいるのは、あくまで王女としての安全と、護衛騎士との連携を優先した結果であり、彼女自身の適性や実力ではないことが判明した。


ヒカリはガルド王国の武闘会を思い出す。


この武闘会は、ゲームの主要イベントでは無かったが、開催された年には全世界に激震が走る事件の舞台となった。


獣人だけが出場できるガルド王国で三年に一回行われる武闘会で、今年はガルド王国の第一王子(グレン)と第一王女が参戦する。


ルールは獣人族ならではの厳しいものだ。


男性の部で優勝した者は、第一王女の婚約者になる。

女性の部で優勝した者は、第一王子グレンの婚約者になる。


強さを求める獣人族ならではのルールである。


そして、ヒカリの記憶では、今年の武闘会で最悪の事態が発生する。


第一王子のグレンが殺され、第一王女が連れ去られる。多くの獣人族が殺され、それを契機に魔族が全世界に宣戦布告する。


全世界の王族に一報が入った時には、全てが終わっていた。多くの血が流れたことから、この事件は後に『血の武闘会』と言われるようになる。


連れ去られた第一王女は、魔族の実験材料にされ、後にヒロインたちに牙を剥く中ボスとして登場する。


(あの中ボス、本気でめんどくさいだよな。攻撃力はえげつない上に回復持ちだから戦闘は長くなるし、味方をひたすら回復しないといけないから、魔力を補うためにマナポーションを大量に使うんだよな)


ヒカリはゲームでの苦戦を思い出す。しかし、その時、一つの事実が頭の中で繋がった。


(ん?あの中ボスってソフィアかよ!)


敵として出現した時の名前は、魔族の実験体としてのNo.158としか記載されていなかった。


(敵の名前が実験体のナンバー表示だったし、かなり改造されて面影も無いから分からなかったけど、怪力と回復って、ソフィアだな)


ヒカリは、ソフィアが辿る悲劇的な運命、そして自分たちが将来対峙する強敵の正体を知り、戦慄した。


あの中ボスがソフィアだと確信したヒカリは、塔の入り口でのイベントを観る為に同行していたが、すぐにイベントを利用することにした。


「よし!俺も武闘会に出よう」


(お!声の質が変わってきた)

ドスの効いた声から、青年らしい声に変化した。


ヒカリの言葉に、ソフィアの耳と尻尾がピーンと立ち上がった。


「ひ、ヒカリさん武闘会に出るんですね!」


「うん、出ることにした」

ヒカリの言葉に、カルマが呟く。


「ヒカリ様、武闘会は獣人族しか出れません。さらにB級ライセンスが必要になります」


カルマが確信を付くが、ヒカリはニヤリと笑う。


「要は尻尾と耳が有ればいいんだよね」


ヒカリはイメージを固めると、人化の状態から尻尾と耳を付け足し、獣人族へと変化する。


「どお?」


カルマたちはヒカリの変化に呆気に取られ、ソフィアは顔を赤くした。


「ん?どうしたの?これじゃダメ?」


カルマは我に返った。

「あ、いえ、問題ありません」


「ただB級ライセンスは、どうするんですか?」

武闘会まで残り二カ月。今から冒険者になっても到底B級にはなれない。


「それは、俺に考えがあるんだ」

ヒカリは腕を組み、自信満々に言った。


「ユーリアの救助の報酬を武闘会出場権って事で話を進めれば問題無いよね」


(俺って頭いいな)

自画自賛するヒカリだった。


「確かにそれは通ると思います」

カルマが頷いた。


ユーリアを闇落ちから助け出したことは、ガルド王国にとっては国の恩人になる。その恩人からの要望なら必ず叶うと、カルマたちは思った。


そうこうしている内に、塔の入り口の扉前に着いた。


「カルマ、悪いけどユーリアを俺に渡して」


「あ、はい」


カルマはヒカリの言葉に戸惑いながらも、ヒカリにユーリアを託した。ヒカリは、ユーリアを優しく抱きかかえる。


「さあ、イベントの始まりだ」


遡ること数時間前ヒカリが嘆きの塔を金色の光で包み込んだ頃、ガルド王国の首都ガオンでは、一人の兵士が宮殿に駆け込んできた。兵士の言葉に、ガルド王国がざわついた。


ダダダダダ!バン!

勢い良く王の部屋の扉が開く。


「何事だ!」

国王が声を荒げる。


「王よ、嘆きの塔にて金色の光を確認しました!」


「な、なんだと!鐘を鳴らせ!直ちに嘆きの塔に向かうぞ!」


「ハ!」


カーン カーン カーン !

鐘の音が王都を包み込む。獣人族たちは、その音を聞くや否や慌ただしく支度をしだした。


鐘が鳴った意味を、獣人族は理解していた。


それは、「嘆きの塔の預言成就、ユーリア様の帰還」を意味すると思われていた。王国の最大の緊急事態であり、歓喜の報せでもあった。


「こうしちゃいられねー!」


「行くぞ」


冒険者ギルドに居た獣人族の冒険者たちは、直ぐに嘆きの塔へと動き出した。


獣人族以外の種族たちは呆気に取られていた。一人の冒険者が獣人族を捕まえ質問する。


「何かあったのか?」


「ユーリア様が帰ってくるんだ!」


「ユーリア様?」

質問された獣人族はそれだけを告げ、走り去った。


王都ガオンは、一瞬にして興奮と熱狂に包まれた。


嘆きの塔の前に多くの獣人族が集まり騒然としている。


ガルド王国のカイゼル王は塔の入り口に居る冒険者ギルドの職員に詰め寄っていた。


「何故中に入れない!」


「ですから中ではB級試験が行われていますので誰であろうと中に入れません!」


「あなたも冒険者なら分かりますよね」

獣人族のほとんどが冒険者ギルドに登録しておりますカイゼルも例外では無い。


「そこを何とか出来ないかと言いておるのだ!」


「今、あなたが入れば中で試験を受けている者は失格になります。さらにあなたのA級ライセンスも剥奪されます」


「王よ」

カイゼル王の側近が話しかけた。


「なんだ!」


「中ではソフィア様がB級試験を受けています。失格となればソフィア様は武闘会に出れなくなります」


「うぉーーーん⋯⋯クソ!」

カイゼル王の遠吠えが響いた。


その頃、ヒカリは塔の扉前のエントランスでイベントの流れを考えている。


(演出が大事だな……うーん、どうしようかな)


ヒカリはイベントを楽しんでいた。そして考えが纏まると、ソフィアたちに指示を出す。


「流れ説明するね」

完全に素に戻ったヒカリは説明する。


「ソフィアを先頭に扉から出てもらって、両サイドに分かれて。最後に俺がユーリア抱いて出るから、わかった?」


ソフィアは頷くが、カルマたちは首を傾げる。


「何故その様な事をするのですか?」

カルマの質問に、ヒカリは簡潔に答える。


「ユーリアを助け出した俺を印象付ける為と、楽しむ為だよ」


ヒカリの言葉に呆気に取られるカルマたちを他所に、ソフィアは再度頷く。


(ヒカリさんを皆に印象付ければ……)


「必ず成功させましょう!」

ソフィアのテンションの高さにヒカリは、たじろいだ。


「う、うん。後は名前はザードにするね」


(病院のベッドで、よく聞いてたな……)


「名前を替える意味はあるのですか?」

カルマが疑問に思い質問した。


「ヒカリは俺的にまずいので、お願いします」


「あ、はぁ」


「ヒカリさん、分かりました!」

ソフィアは迷いなく賛同する。


ヒカリ改めザードのためのイベントが、今、幕を開けた。

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