第206話 レイン復活
ソラリスたちが装置の回収に来た次の日、レインに変化があった。
ヒカリはすぐにその変化を察知し、レインの様子を伺う。
「お! レインの魔力が回復したな」
ヒカリがレインの魔力を確認すると、魔力は完全に回復していた。瘴気によって枯渇していた魔力が、再び満たされている。
「あとは目覚めるのを待つだけだな」
ヒカリは、回復したとはいえ、闇精霊であるレインがどのように目覚めるのか、緊張と期待を抱きながら静かに見守ることにした。
しばらくすると、レインの身体がピクリと動いた。
「お!お目覚めかな」
レインがゆっくりと身体を起こし、あくびを一回した。次の瞬間、レインが飛び起きた。
「俺様復活!」
レインは右腕を突き上げて叫んだ。
「いやーやばかった。まじ消えるかと思ったわ」
レインは安堵した様子だったが、ヒカリは不安を覚えた。
レインは落ち着き、ヒカリの方を向いた。
「ヒカリの兄貴、ありがとう」
「それじゃ行くか。俺をこんなふうにした奴らをギッタンギッタンのボッコンボッコンにしてやる」
「じゃあヒカリの兄貴、また!」
レインが飛び立とうとした瞬間、ヒカリはレインを捕らえる。
「シャインプリズン」
レインは光の牢獄に捕らえられた。
「何するんすか!」
「やべー、カインと同じ匂いがする!」
ヒカリの言葉に、レインは自分の匂いを嗅いだ。
「クンクン……俺、臭くないっすよ」
「え?カインって臭いの?」
「え?分からないっす」
「そうじゃねー!」
ヒカリは額に手を当て、レインの突っ走る性格がカインと似ていることに頭を抱えた。
「レインは、まず、現状を把握して状況も聞かずに飛び出したら、また消えかかるよ!」
ヒカリは、回復したばかりのレインが暴走することを防ぐため、光の牢獄から出す気はなかった。
「えー、カインの兄貴なら絶対に仕返しにいくぜ」
レインは光の牢獄の中でぶつぶつと文句を言う。
(カインならそうするよね……カイン居なくて良かった……)
ヒカリはカインの不在に心の中で安堵した。
「今行っても同じ事になるだけだよ」
それでもぶつぶつと文句言うレインに、ヒカリは試練を与えることを思いついた。
「じゃあさ、そのシャインプリズンから出れたら行っていいよ。但し、出れなかったら俺の言う事を聞くこと」
「え? そんな事でいいの? 楽勝だぜ」
レインはすぐに飛びついた。
「期限は、あの太陽が真上に来るまでね」
「そんなにいらないっすよ」
レインは自信満々だったが、ヒカリの光魔法は、魔力を効率よく封じるように調整されていた。
「じゃあ頑張ってね」
ヒカリは残された装置の残骸を確認する為に、プカプカと浮遊しながら飛び立った。レインは光の牢獄から脱出しようと、全力で魔力をぶつけ始めた。
「うらうらうら!砕け散れ!」
レインは、あらゆる魔法を光の牢獄に叩きつけるが、光の牢獄はびくともしい、それどころか、魔法を撃つ度に、レインの魔力が光の牢獄に吸収されていくのを感じた。
「だー、くそ!魔力が吸われるってどんな構造だよ!」
レインは焦り始めた。闇、火、氷、雷、風、地、水魔法を属性を替えながら撃ち続けたが、全ての魔力が光の牢獄に吸収されてしまう。最後は物理攻撃を試みるがやはり結果は同じだった。
「ちくしょう、太陽が真上に来るまでもう時間ねーぞ!」
焦れば焦るほど、レインの魔力は消耗していく。ヒカリの「シャインプリズン」は、魔力を吸収して封じる、ヒカリの経験値に基づく特殊な魔法であった。
太陽が真上に来た瞬間、装置の残骸を確認し行ったヒカリが戻ってきた。
「はい、時間切れー」
ヒカリは手をパンと叩いた。
「くそっ、あとちょっとだったのに!」
(あとちょっとってどこが⋯⋯はぁ、全然ダメだったのに言い訳もカインだな)
ヒカリは内心でツッコミを入れ溜め息をついた。そしてレインに取引の確認をする。
「じゃあ、約束通り、俺の言うこと聞いてよ?」
光の牢獄が解除され、解放されたレインは不満そうに腕を組んだ。
「ちぇっ、分かったよ。ヒカリの兄貴の言うことなら聞くさ」
レインは、ヒカリが自分を助けてくれた恩義を感じていたため、いやいやながらも約束を守る姿勢を見せたがシャインプリズンに対して抗議してきた。
「こんなん絶対破れないよ!反則だよ!」
レインはまだブツブツと文句を言っている。
「そうかな。吸収出来ない魔力量の魔法とか、あとは斬れば出れるんじゃないかな」
(多分、雷蔵くんは斬るだろうな)
ヒカリは雷蔵の能力を思い浮かべた。
「約束は、約束だからね」
光の牢獄が解除され、解放された後もレインは不満そうに腕を組んでいたがヒカリは話を進める。
「じゃあ始めるね、まず知っといて貰いたいのが、レインは光属性以外の属性を強弱はあるけど持っているんだよね」
「うん、そだよ」
「レインの姿はほとんどの人が認識出来るって事だから、捕まるリスクが高いんだ」
「そこで、視認阻害と隠密を覚えてもらいたいんだ」
ヒカリは、レインの属性と性質に基づいた、最も重要なスキルを教え始めた。
「視認阻害はレインを見えにくくする効果があって、隠密は極力魔力を悟られないようにするんだ」
「この二つを覚えると、捕まるリスクがかなり減ると思う」
「視認阻害と隠密、か……よく分からないけど分かった。やってみるぜ!」
(分からない事が分かったのかな⋯⋯)
レインは自分の身の安全と、ヒカリの言うことには従うという取引のため、すぐにその訓練に取り掛かった。
ヒカリはレインが闇属性を持っていることを踏まえ、最も効果的な方法、すなわち物理的な視覚情報と魔力的な探知の両方を遮断する訓練を組み合わせることにした。
「よし、じゃあまずは『視認阻害』からだ」
ヒカリは、レインに周囲の光と魔力を操作する方法を教え始めた。
1. 視認阻害(物理的・視覚的遮断)
「『視認阻害』は、自分の周りの光を吸収したり、空間を歪ませたりすることで、視覚から自分の存在を消す技術だ」
「レインは闇属性を持ってるから自分の身体を覆うように極薄い闇の膜を作るイメージを持て。外の光をその膜で吸収して、影に溶け込むように見せるんだ」
レインは言われた通り、体に闇の魔力を集中させようとするが、魔力が安定しない。
「うわ、なんか全身がモヤモヤするっす……」
「最初はそれでいい。完全に姿を消すんじゃなくて、まずは自分の輪郭を曖昧にするところからだ」
ヒカリが見てもヒカリより弱いレインでは出来ているのか分からない為にプニを呼び寄せる事にした。
ヒカリは心の中でプニに呼びかけた。
(プニ、ちょっと手伝って欲しいんだけど、今、大丈夫かな?)
(うん、いいよ。ナタリーに断わってから行くね)
プニはナタリーに一言伝えると、すぐにヒカリとレインの元へとやって来た。ナタリーはプニがヒカリと一緒なら安全だと知っているので、快く送り出した。
しばらくしてプニがやって来た。
「お兄ちゃん、何するの?」
プニがヒカリの隣に浮かぶ。レインはまだ闇の膜を扱いきれず、モヤモヤとした状態だった。
「レインの『視認阻害』の修行を手伝って欲しいんだ」
「レイン、プニがいるからって気を抜かないでね。プニは光精霊だから、レインの闇の膜が少しでも光を漏らしたらすぐに気づくよ」
「くそっ、手厳しいっすね!分かったぜ!」
ヒカリはプニに、レインが完全に姿を消した瞬間を知らせるよう頼んだ。プニは小さく頷き、目を凝らす。
光精霊の厳しい監視の下、闇精霊レインの基礎訓練は加速していった。
2. 隠密(魔力探知の遮断)
「次に『隠密』だ。これは魔力探知や知覚から自分の魔力の波を隠す技術だ」
「レインの魔力は今は全快だけど、その魔力を外に漏らさないように、自分の内側にギュッと閉じ込めるイメージを持て。魔力の波を平坦にするんだ」
ヒカリは、レインの魔力が常に波打っている状態だと説明した。
「魔力は水面みたいなもんだ。静かな水面は探知されにくいけど、大きな波が立ってたらすぐにバレる。その波を抑えて」
「なるほど! 存在感をゼロにするってことっすね!」
「そういうこと。この二つをマスターすれば、復讐も楽になるよ」
レインは、すぐにでも復讐に行きたい気持ちを抑え、目の前の修行に集中し始めた。




