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光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!  作者: のほほん


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202/222

第201話 ヴォルグの絶望

その頃、ヴォルグは王宮への扉入り口で警備の兵士に足止めを食らっていた。


「ここを通せ!」

「なりません!ヴォルグ団長」

「えーい邪魔だ」

「ヴォルグ団長おやめください」

押し問答をする兵士とヴォルグ。


「先ぶれをお出しになってから来てください」


「ええーい、そんな場合ではないのだ!」

ヴォルグの後を追いかけていたハリスが合流した。


「団長、このままでは埒が明きませんので、まずは先ぶれを出しましょう」


「くそー! すぐに書くぞ!」


「一番近い場所は何処だ!?」


「魔道士の執務室が少し行くとあります」

ヴォルグが駆け出し、それをハリスが追いかけた。


そんなやり取りをしている間にも、クライムと雷蔵の話は進んでいた。


「何故、ヴォルグとナタリーを婚約させる意味があるんだ!」

キレ口調でクライムが雷蔵に問いかけた。


「これからナタリー殿は政治的に取り込まれる可能性があるからでござる」


「それを阻止する為に防波堤が必要なのでござる」

雷蔵の言葉にハッとし、クライムはレオンに話しかける。


「ヴォルグに婚約者は居なかったな」


「はい、居ません」


「確かに最善ですが、身分の差があります」


「ヴォルグ団長は公爵家の次男、ナタリーは筆頭聖女とは言え平民です」

レオンの言葉にクライムは考え込む。


「うーん……ヴォルグは何と言っているのだ」


「ヴォルグ殿は陛下の許可が入ると言っていたでござる」

クライムは大きく溜め息をつく。


「はぁ……だから我の所に許可を貰いに来たということか」


「左様でござる」

雷蔵は頷いた。


レオンはある事を思い付きクライムへ助言する。

「陛下、ちょうど良いかもしれません」


「何がだ?」


「ここで前例を作れば、クラウ卿とモニカ嬢を婚約させるのも可能になるかもしれません」


さらに考え込むクライム。

「確かに一石二鳥と言うことか」


「はい。聖女と聖女を守る盾、聞かん坊と手懐ける聖女という構図になります」


レオンの助言は、政治的なメリットと、クラウの問題解決を同時に満たすものだった。


「悪くはないな」

クライムもレオンも、あまりにも突拍子もない事態の連続に、完全に頭が麻痺していた。


「いいだろう。許可する」


「良かったでござる」

雷蔵は恭しく頭を下げた。


その時、扉をノックする音が聞こえた。

「なんだ?」


「はっ! ヴォルグ団長より先ぶれが届いております」

兵士の声に、クライムは顔を上げた。


「ふむ、ちょうど良かったな」


「少し待っておれ」

クライム王は雷蔵にそう言うと、宰相のレオンに指示を出した。


「レオンよ、書類を持ってきてくれ」

レオンは婚約証明書を取りに向かった。


しばらくするとレオンが書類を持って戻って来た。

「陛下、こちらにサインをお願いします」


「うむ」


クライムは四枚の書類にサインをした。公爵家への書類とナタリーの御両親への書類、あとはヴォルグとナタリー用の婚約証明書だ。


クライムがサインを終わると、レオンが書類を回収し、ナタリー用を雷蔵に渡した。


「こちらをナタリー聖女にお渡しください」


「分かったでござる」


「では失礼するでござる」


「うむ、ヴォルグにはこちらから伝えておこう」

雷蔵は精霊の姿になると、雷鳴と共に部屋から出ていった。


すぐに速度を上げ、世界樹へと戻った。

残ったのは、かすかな雷鳴と、間もなく執務室に飛び込んでくるであろうヴォルグの叫びだけだった。


クライムはヴォルグとナタリーの婚姻書に署名をした事実を前に、再び深く溜息をついた。


「ハァ……これであの聞かん坊も少しは落ち着くかのう……」


雷蔵は雷の速度で世界樹へと戻った。


(ヒカリ殿の頼み、果たしたでござる)

雷蔵はすぐさまヒカリの元へと向かう。


「ヒカリ殿、戻ったでござる」


「お、雷蔵くん早いね!どうだった?」

ヒカリはソラリスたちの作業を見守りながら、雷蔵に尋ねた。


「無事、陛下から許可をいただいたでござる」

雷蔵はそう言うと、レオンから預かった書類をヒカリに差し出した。


「これ、ナタリー殿に渡すようにとのことでござる」


「お、雷蔵くんありがとう!」


ヒカリは書類を受け取ったが、それが婚約証明書だとはまだ知らず、単なる王からのメッセージか何かだと思っていた。


(これでナタリーの身の安全は確保された。ヴォルグなら文句は言ってもナタリーを大切にするだろうし、何より権力者たちの魔の手は届かなくなる)


ヒカリは満足そうに微笑んだ。


ヴォルグは陛下への謁見の許可が出るまで待たされていた。


「ヴォルグ団長、少し落ち着いてはどうです」


「これが落ち着いていられるか!」


ハリスがなだめるが、ヴォルグはそれどころではないという表情を見せる。


「まだ陛下の許可は下りんのか!」


「しばらくお待ちください」


ヴォルグが待たされてしばらくすると、雷鳴が木霊した。雷蔵が王宮を去った音だった。


そしてすぐに兵士が案内の為にヴォルグの元へとやって来た。


「ヴォルグ団長、陛下からの謁見の許可が下りました」


「私の後ろを付いてきてください」

兵士はヴォルグを王の執務室へと案内した。


兵士は扉をノックし、ヴォルグが到着したことを報告する。


「陛下、ヴォルグ団長をお連れしました」


「うむ、通せ」


「は!」

兵士は執務室の扉を開けると、ヴォルグが陛下に駆け寄った。


「急な先ぶれ、お許しください!」


「かまわん」


「ヴォルグよ、なんの用だ?」

クライムはヴォルグが来た理由を知っているがあえて聞いた。


「は!先ほどこちらに雷蔵と言う精霊が来ませんでしたでしょうか?」


「うむ、雷蔵とやらかは分からんが、精霊は来たぞ」


(ん? 何かがおかしい……何故こんなに落ち着かれているんだ……)


ヴォルグはクライムの様子に違和感を覚えた。


「精霊からは話をうかがっている」

クライムはそう言って、優しく微笑んだ。


「心配するな」


(ふー、これなら大丈夫そうだな)

ヴォルグは、どうやら雷蔵が勝手に突飛な話を陛下にしたが陛下は難色を示したのだろうと思い安堵した。


「陛下のご配慮、痛み入ります」


「うむ、レオンよ、ヴォルグに書類を渡してやれ」


「分かりました」

レオンは、ヴォルグを見るなり同情したような目を向け、書類の束からヴォルグ宛の一枚を取り出した。


「これを取りに来たのであろう」

レオンはヴォルグに書類を渡した。


(書類とは何だ? 意味が分からん……)


とりあえず受け取ることにしたヴォルグだったが「は! ありがとうご……ざ……ん?」


書類の内容を視界に入れた瞬間、ヴォルグの顔色が青ざめる。


「え? あれ……あのこれは……」


クライムはニヤニヤとしながら答える。

「お主とナタリーの婚約証明書だぞ」


「え? なぜ?」

ヴォルグの混乱は極限に達していた。


「精霊が来て、ヴォルグ団長とナタリー聖女の婚約を許可してほしいと言われましたので、許可しました」

レオンが淡々と告げると、ヴォルグは頭を抱えて叫んだ。


「なぜだーーー!」


「陛下、なぜ止めてくださらなかったのですか?」


「こちらにも色々事情があってな」

クライムは愉快そうに笑いながら続けた。


「後日、公爵家に書類を送ります」


ヴォルグは膝から崩れ落ちた。彼の知らないうちに、彼の人生は一匹の雷精霊によって大きく動かされていたのだった。


「因みに公表は、まだできませんので、公表しないようにお願いします」


レオンの言葉に、クライムは首を傾げる。

「レオンよ、何かあるのか?」


レオンは頷いた。

「はい。このまま公表してしまうと、ナタリー聖女の御両親に危害が及ぶ可能性がありますので、公爵家と話をして保護する形を取りたいと思います」


「うむ、分かった」

クライム陛下とレオン宰相の話を聞きながら、ヴォルグはうなだれていた。


(な、なぜ話が進んでいるんだ……)


完全に蚊帳の外で、自分の人生が決定していく状況に、ヴォルグは絶望した。


「ヴォルグよ、取りあえず話は終わりだ。下がって良いぞ」


「あ、はい……」

ヴォルグは力なく立ち上がり、夢遊病者のように執務室を後にした。彼の頭の中は、ナタリーとの婚約という現実を受け入れられずに混乱していた。

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