表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/199

第2話 推しを探して

俺は精霊として世界樹の森を旅立ち、人間界へと降り立った。


 まずやるべきことは、この世界が本当に『エテルニアの誓い』の舞台なのかを確認することだ。そして、俺の推し――悪役令嬢クラリス・フォン・ルクレールを探し出す。


(まずは情報収集だな)


 俺は光精霊だから、人間には基本的に見えない。だが、魔力が強い者や精霊と縁のある者なら、俺の姿を見ることができるはずだ。


 俺はふわふわと街を飛びながら、人々の会話に耳を傾けた。


「今年の王立学園の入学者には、ルクレール公爵家の令嬢もいるらしいな」

「へえ、ルクレール公爵家って言えば王国屈指の名門だろ?」

「そうそう。しかもその令嬢、まだ五歳なのにすでに賢くて美しいらしいぜ」


 俺は思わず飛び跳ねそうになった。


(やっぱりこの世界、乙女ゲームの世界じゃねーか!!)


 そして、クラリスの名前も出た。だが、問題は"まだ五歳"という部分だ。


(俺が知ってるクラリスはゲーム本編で18歳。……つまり、今は本編が始まる前の時代か!)


 よし、とにかくクラリスのいる場所へ行ってみよう。


 ルクレール公爵家の屋敷があるのは王都の高級住宅街のはずだ。俺はすぐにそちらへ向かった。


 ルクレール公爵家の屋敷は、広大な敷地に堂々と建つ立派なものだった。


 俺はそっと庭へ入り込み、様子をうかがう。しばらくすると、一人の少女が庭で本を読んでいた。


(……クラリス!?)


 黄金の髪に美しい碧眼。顔立ちも気品に満ちている。でも、小さい。小さすぎる。


(五歳のクラリスか……!)


 ゲームで見た彼女とは違うが、どこか面影がある。


 俺は彼女の周りを飛びながら、じっくり観察した。


「……?」


 クラリスはふと顔を上げた。そして、俺のほうをじっと見つめる。


(まさか……見えてる!?)


 彼女は静かに立ち上がり、俺のほうへ歩いてきた。


「あなた……精霊?」


(うおおお! やっぱりクラリスには俺が見えるのか!)


 驚きながらも、俺は小さく頷いた。


「……光の精霊さん?」


 クラリスは不思議そうに俺を見つめる。


「なぜここに?」


(いや、それはこっちのセリフだよ! いや違う、俺がここに来たのはクラリスを探すためなんだけど!)


 俺は何とか伝えようと、光を少しだけ揺らしてみた。するとクラリスはふっと微笑んだ。


「ふふ、あなた……綺麗ね」


(ぐおおお、推しにそんなこと言われたら尊死する!!)


 俺はクラリスの笑顔に感動しつつ、とりあえず彼女のそばにとどまることにした。


「ねえ、あなたは名前があるの?」


(やべ、名乗ってなかった!! どうする!?)


 俺はしばらく考えたあと、光を強く輝かせた。クラリスはしばらく考えた後、優しく微笑んだ。


「じゃあ……あなたのこと、ヒカリって呼んでもいい?」


(え、今ヒカリって言った? 俺の名前……光精霊だから? それとも適当に言っただけ?)


 俺はしばらく悩んだが、結果としてクラリスがつけた名前だし、それでいいかと思い頷いた。


「ヒカリ……ふふ、素敵ね」


(うおおおおおおおお!! 推しに名前つけてもらったああああああ!!!)


 俺は感動しながら、クラリスのそばにとどまることを決意した。


 こうして俺とクラリスの出会いは、思いもよらぬ形で始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ