第14話 火の精霊と光の精霊
火の精霊がクラリスの周りをゆらゆらと漂いながら、じっと俺を見つめてきた。
「なあ、お前に聞きたいことがある」
「ん?何だ?」
火の精霊は、炎をチラチラと揺らしながら、低い声で言った。
「なぜ、お前は火属性持ちのそばにいる?」
「え?」
「お前は光の精霊だろう?なのに、なぜ火属性のクラリスのそばに長く留まっている?」
「そりゃ……クラリスが大切だからだ!」
俺は即答した。
火の精霊はじっと俺を見つめ、少し間を置いてから続けた。
「……おかげで、他の精霊が寄り付かなかったんだぞ」
「え!?俺が原因だったのか!?」
驚きのあまり、俺は宙を舞いながら光を揺らす。
「そうだぞ。一人の人間に対して精霊は一体。基本的に、契約できる精霊は一体だけだ」
「えっ……そんな設定、聞いたことないぞ!」
俺が思わず叫ぶと、火の精霊は不思議そうに首を傾げた。
「設定?お前、何を言っている?」
「えっ……あ……いや、なんでもない!」
やべぇ……ついゲームの話をしちまった。
俺は誤魔化すようにふわふわと宙を舞いながら、火の精霊に話を戻した。
「で、つまりどういうことだ?俺がクラリスのそばにいたから、他の精霊が近寄れなかったってことか?」
「そうだ。精霊は本能的に、一人の契約者に対して一体の精霊しかつかないようになっている。すでに強い精霊がそばにいると、他の精霊は近寄らなくなる」
「……マジか」
俺は思わず肩を落とした。
「お前が長くクラリスのそばにいたせいで、他の火の精霊たちは寄り付かなかった。だから、クラリスはずっと契約できなかったんだ」
「そ、そんな……」
俺はクラリスを守るつもりでずっと一緒にいた。それが結果的に、クラリスが精霊契約できない原因になっていたなんて……。
「ごめん……クラリス……」
俺が申し訳なさそうに呟くと、クラリスはゆっくりと首を横に振った。
「ヒカリのせいじゃないわ。だって、私は……ヒカリと一緒にいたかったもの」
「クラリス……」
俺は言葉に詰まった。
火の精霊が小さく炎を揺らしながら呟く。
「……お前たちは、強く結びつきすぎているのかもしれないな」
「え?」
「普通、属性の違う精霊と人間は、自然に距離ができるものだ。しかし、お前たちはそうならなかった」
「そりゃ、俺とクラリスは……」
「……お前たちが特別なのかもしれないな」
火の精霊はそう言いながら、クラリスの顔をじっと見つめた。
「クラリス、お前はどうしたい?」
「私は……」
クラリスは一瞬、迷ったような表情を浮かべた。しかし、すぐに真剣な眼差しになり、はっきりと言った。
「私はヒカリと契約したかった。でも、それができないなら……私はどうしたらいいの?」
火の精霊は静かに考え込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「……契約を焦る必要はない。精霊契約は、一生の絆だ。慎重になるべきもの」
「でも……」
「お前は、本当に俺と契約したいのか?」
クラリスは少し戸惑いながらも、火の精霊をじっと見つめた。
「……正直に言うと、私はヒカリと契約したかった。でも、それができないのなら……私はまだ、どうすればいいのか分からないわ」
火の精霊はしばらく沈黙したあと、ゆっくりと頷いた。
「……しばらく、お前を見させてもらおう」
「え?」
「契約するかどうかは、俺が決めることだ。お前の強さを見て、俺が納得したら契約する」
クラリスは驚いた顔をしたあと、ゆっくりと頷いた。
「……分かったわ」
「お前が本当に俺と契約するにふさわしいか、見極めさせてもらう」
火の精霊はそう言って、ふわりとクラリスの周囲を舞う。
「お前の力を試させてもらうぞ、クラリス」
クラリスは真剣な表情で頷いた。
「私、頑張るわ……!」
俺はクラリスの決意を感じ取り、そっと光を揺らした。
(クラリス……大丈夫。俺も、お前を見守ってるからな)
こうして、クラリスは火の精霊と向き合うことになった。




