第13話 ヒカリの火の精霊探し
「まずは火精霊を探すぞ!」
俺――ヒカリは意気込んで空を飛び回った。
クラリスの属性が火だと判明し、俺とは契約できないと分かった以上、代わりに火属性の精霊を見つけるしかない。
「クラリス、俺が火の精霊を探してくるから待っててくれ!」
「……ヒカリ、本当に探せるの?」
クラリスはまだ少し落ち込んでいるようだった。
「任せろ!精霊同士なら、なんとかなるかもしれない!」
俺はクラリスの肩に軽く触れるように光を輝かせた。
「ヒカリ……」
「絶対にクラリスにぴったりな精霊を見つけてくる!」
俺はそう言い残し、一気に屋敷の庭を飛び出した。
***
(さて……火属性の精霊ってどこにいるんだ?)
俺は空を飛びながら考え込む。
火の精霊なら、やっぱり火山とか、熱い場所にいそうな気がする。でも、そんな場所は公爵家の敷地にはない。
「うーん……そうだ!」
俺は以前、屋敷の奥にある温室のことを思い出した。そこは貴族の庭師が珍しい植物を育てている場所で、温度管理のために火属性の魔法が使われているらしい。
(もしかして、そこに火の精霊がいるかも?)
期待を胸に、俺は温室へ向かった。
***
温室の中は湿気が多く、まるで熱帯のジャングルのようだった。大きな葉が生い茂り、赤や黄色の花々が咲き誇っている。
「うわぁ……ここ、意外と広いな……」
俺は辺りを見渡しながら、火精霊がいそうな場所を探した。
すると、温室の奥から、小さな炎がチラチラと揺らめくのが見えた。
(あれは……!?)
俺はそっと近づくと、そこには小さな火の玉のような精霊が浮かんでいた。
「おお、いたぞ!火の精霊だ!」
俺は嬉しくなって声をかける。
「やあ、俺はヒカリ!光の精霊なんだけど、お前にちょっと頼みたいことがあってさ!」
火の精霊はくるりと回転し、じっと俺を見つめてくる。
「……お前、光の精霊か?」
「そうそう!俺はヒカリ!お前、名前は?」
「……名前?ない」
「えっ、ないの?」
「火の精霊は、契約者が名を与える。それが習わし」
「へぇ、そうなんだ……」
火の精霊は小さく燃えながら、俺をじっと見つめてきた。
「で、お前、何の用?」
「実はさ……クラリスっていう公爵令嬢がいるんだけど、火属性なのにまだ精霊契約できてないんだ。だから、お前、クラリスと契約してくれないか?」
「クラリス……?」
火の精霊は少し考える素振りを見せた。
「お前はそのクラリスの精霊なのか?」
「いや、俺は光属性だから、クラリスとは契約できないんだよ。」
「なるほど……」
火の精霊はしばらく沈黙したあと、小さく炎をゆらめかせた。
「……会ってみないと分からない」
「えっ、じゃあクラリスのところに来てくれるのか?」
「興味はある。でも、契約するかは分からない」
「それでもいい!クラリスに会ってくれるだけで助かる!」
俺は嬉しくなり、火の精霊の周りを飛び回る。
「よし、じゃあクラリスのところに行こうぜ!」
「……分かった」
火の精霊はゆっくりと俺の後について飛び始めた。
(よし!これで一歩前進だ!)
俺は胸を躍らせながら、クラリスのもとへ向かった。
***
「クラリス!連れてきたぞ!」
俺は勢いよくクラリスの部屋に飛び込んだ。
「ヒカリ!?そんなに慌てて……えっ?」
クラリスが驚いた顔をするのも当然だ。俺の後ろには、真っ赤な小さな火の精霊が浮かんでいた。
「こいつが火の精霊!名前はまだないけど、クラリスに会いに来てくれたんだ!」
クラリスは驚いた表情のまま、火の精霊をじっと見つめる。
「……あなたが、火の精霊?」
火の精霊はじっとクラリスを見つめ返し、静かに口を開いた。
「お前がクラリスか?」
「……そうよ。私はクラリス・フォン・ルーセント」
クラリスは緊張した様子で答えた。
火の精霊はしばらくクラリスを見つめたあと、ポツリと呟いた。
「お前、まだ精霊契約をしたことがないんだな」
「ええ……ヒカリと契約できなかったから……」
クラリスは少し寂しそうに答えた。
火の精霊はクラリスの言葉を黙って聞いていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「……少し考えさせてくれ」
「えっ?」
「お前と契約するかどうか、まだ分からない。でも、お前がどんな人間か、もう少し見極めたい」
クラリスは驚いた表情を浮かべたが、やがて小さく微笑んだ。
「……分かったわ。私のことを知ってもらえれば、それでいい」
火の精霊は小さく燃えながら、クラリスの前に浮かんだ。
「しばらく、お前のそばにいる」
「ありがとう……!」
クラリスの表情に希望の光が戻ったのを見て、俺もほっと胸をなでおろした。
(よし……まずはここまで!あとはクラリスが火の精霊と絆を築けば……!)
こうして、クラリスと火の精霊の出会いが始まった。




