【番外編】木乃伊の花
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
花は何故散るのか。という疑問を此処で解消しました。
尊厳を守る為です。
という訳で幻想奇譚です。
夏と冬。この二つの墓参りはそれぞれ違った側面を見せてくれる。中でも取り分け顕著なのは、献花であろうか。あれは夏と冬で朽ち方が違う。
夏場の献花というのは、たった一週間で朽ち果てる。花は開き切り、草は枯れ果て、体の半身を埋める水は緑に腐る。そうして周りには甘くも濁った香りが充満している。
其れはまるで、美しさが失われることを恐れた美女のように。
真夏の太陽に焼かれた大地が陽炎を作り出し、全てを幻想へと溶かし切る。けれどもそれには救えない程の生々しい現実が相見える。
けれども冬の献花というのは、当たり前だが夏とは間逆なのだ。一ヶ月経過しても花は朽ちゆくことは無い。花はだらしなく開き続けるが、葉も、水も、前回訪れた時と同様、透き通る様な真水を映し出す。けれども決して芳香は放たない。放つ必要が無いのだ。なんせ時が止まってしまったから。全てを凍り付かせて、その時の美しさを留めてしまうから。
故に触れたくなった。真夏の朽ちゆく花達は触れたら脆くも崩れ去ってしまうが、この冬の花はきっとそのままだろうと。だから手を伸ばし、そっと触れた。
触れたの花弁を開きつつあった菊。重そうな頭を支える様に包み込み、頬でも撫でる様に親指で擦る。中心部にはまだ潤いが残っており、しっとりとした水の感触がした。けれども外側に行くに連れて乾燥し、カサついた感触がする。其れは紙で出来た造花の様に。
そうして思ったのだ。本当に時が止まってしまったのだと。最も美しい時に収められたのだと。生きながらに木乃伊になった其れを私は暫く愛で続けた。
知人と共に出掛けた時に、彼女は道行く木々を見ながらぼんやりとこう言った。
「生き物だから仕方がないだけどさ、なんで皆朽ちていくのかな。ずっと咲いててくれればずっと綺麗なのに」
其れを聞くと最も美しい時に、全てを奪われた菊の花を思い出す。外面の美しさだけを残し、他は全てもぬけの殻。其れはとても……残酷な事の様に思えた。
「生き物の尊厳を守るためだよ」
人を楽しませる為だけに、全てを奪われるのは、ある意味とても残酷でしょう?
三味線を通じたアニメ、あるじゃないですか。
そのOPに『木乃伊』って言葉、あるじゃないですか。
冬とか雪、関係なくない? 木乃伊はエジプトだよ?
って思ってたんです。
でもね、今日わかりました。
冬って乾燥してますし、温度が低いじゃないですか。
だから朽ちないんです。もうずっと綺麗なまま。
木乃伊って、乾燥してそのまんまの死体って意味なんですよ。
だから 生きながら殺す。綺麗なまま保存させる。 って意味だったんだな。と解釈しました。
奥深いですね。歌詞を書かれる方。
夏場の花って直ぐに朽ちるんです。
それでも生に縋って、甘ったるい芳香を放つんです。
『私はまだ綺麗だし生きている。勝手に殺すな』
って言ってる気がするんです。
凄い人間臭い。
でも冬の花って、そうじゃないんですよ。
一ヶ月経過してもずっと綺麗。添えた時のまんま。
けれども腐りゆく芳香は放たないんです。
多分、生きてる時に瞬間冷凍させられて、殺された。そして、そのまま添えられている。だから話す事も出来ない。
だから木乃伊と言いますか、綺麗な死体に近いんです。
だから夏場より冬場の方が残酷だと思います。
一番綺麗な状態で、刈り取られて、生に縋る事も、死ぬことも許されずにただそのまんま。
余りにも惨い。
だから花が朽ちる、散るのは、単純に生きてる証なんだよな……。としんみりしました。
でも献花はこれからも添えます。