7.「まずは枝打ちなんてどうですか?」
「まずは枝打ちなんてどうですか?」
セリアがにこやかに提案してくる。
「枝打ち?」
「街の周りの防風林の枝を切り落とすんです。低い箇所にたくさん枝があると、キャラバンや軍が通行する際の妨げになるので」
「草むしりとあまり変わらないのでは?」
「タクトさん、白指輪ですし……」
なんてことだ。せっかく冒険者登録をしたのにやれることが枝打ちとは。
しかしつべこべ言っても仕方がない。
地道にコツコツ経験値を積み重ねる他ないか…
「わかりまーー」
「ちょっとまっっった!」
張り上げられる男の声。
タクトがややびっくりしながら振り返ると、そこにはややぽっちゃり体型の男が立っていた。身長はタクトと同じくらいでいたって平均的そうで、年齢もタクトと同じくらいだろうか、若そうである。
額には、やや緩んでいる体型に似合わず、赤の鉢巻がキツく巻かれていた。
「タクト氏と言いましたかな?よろしければ、拙者たちとパーティーを組みませぬか!?」
ニカっと笑う男。白い歯がきらりと光る。
「ええっと…」
「これは失礼!自己紹介がまだでしたな。拙者の名はバキオ!今はまだ黄指輪でござるが、後に金指輪の格闘家となる男!!」
男は包帯の巻かれた両の拳でビシッとポーズを決める。一緒に腹の肉もやや揺れていた。
「バキオさん、いきなりタクトさんをパーティー勧誘ですか!?タクトさんも冒険者になりたてですし、まだ早いような……」
セリアはこのぷよぷよ格闘家の突然の勧誘に難色を示しているようだ。
タクトとしても、まさか異世界で「ござる口調」の変な男に会うとは思っておらず、一言も発せていない。その口調といい体型といい一方的に捲し立てる感じの話し方といい、どことなく現実世界のオタクに見える。
「こっちの世界でもオタクと絡むのは流石に……」
だがこのバキオという男が醸し出すオタクっぽさに、なんだか懐かしさと安心感を覚えている自分に気づく。
いやでもしかしさすがに知らない人といきなりパーティーを組むというのは……
「拙者と組めば黄指輪のクエストを受けられるぞ!報酬は白ランクの倍だ!あと報酬は全てタクト氏に渡す!拙者は金には困ってないのでな!」
「マジか。乗った」
「ええ!?タクトさん!?」
すみませんセリアさん。
何かと心配してくださってるのなら申し訳ないが、推しが出来た今、資金を稼ぐことは何よりも優先しなければならんのです。
「ようこそ!我らのパーティー『黄昏に掲げる拳団へ』!」
「ああ、よろしく頼む」
なんだその名前。
とは口にせず、タクトはバキオとガッチリ握手した。