6.「おめでとうございます!冒険者登録完了です!」
「おめでとうございます!冒険者登録完了です!」
眩い光に包まれた鏡にたくさんの文字が浮かび上がった。
ちなみに見たことのない異世界の文字だが、何故だかタクトには読める。不思議だ。
浮かび上がった文字は、タクトの能力を表しているようだ。
「えーっと、なになに…」
【パワー 1】
【スピード 1】
【スタミナ 1】
【テクニック 1】
ん?雲行きが怪しいぞ。
「あ、あらら〜…」
受付嬢セリアもなんだか気まずそうだ。
タクトは若干焦りながらさらに下を見る。
【メンタル 20】
お!どうやらメンタルは高そうだ。
「あら!メンタルは素質がありそうですね!」
セリアの反応も上上だ。
「最後は魔力です!」
ついに来たぞ、魔力!異世界といえばやはり魔法だ。俺にはパワーやスピードの素質は無さそうだったが、そのような人間は大抵魔術師の素養があったりするものだと思う。タクトは完全にファンタジーゲームの知識を元にした期待をしながら、最後の文字を見る。
【魔力 0】
「「ぜ、ぜろお!?」」
タクトとセリアのハモリ声がギルド内に響き渡った。
まさか魔力もないとは。現実世界ではそこそこ運動も勉強もやっていただけに、ここまで低い結果に、さすがにふつふつと不満が湧き上がってくるタクト。
が、よくよく思い返してみると、
「大学入ってからはほぼバイトと推し活だったもんな…」
それに現代人の自分に魔力の素養が眠っているはずもないか。
「少しはチート能力をもらえると思ったんだけどな…」
うなだれるタクト。
その目の前にセリアが顔を覗かせると、
「このパラメータですと、いちばん下の白指輪ですね……。でも!そこまで落ち込まないでください!クエストをこなして経験値を貯めていけば、それぞれのパラメータも、上がっていきますよ」
「そうだぞ新入り!」「顔上げろ若造!」「俺も白スタートだったぜ!」
差し込まれるガヤに周りを見回すと、屈強な男や洗練された男たち、溌剌とした女たちがニヤニヤしながらタクトを見ていた。
「そうですよ!みなさん、スタートのときはタクトさんと同じようなものだったんですよ?……まあ、タクトさんよりはちょっと……違うか、そこそこ上でしたけど……」
「ほとんど1はなかなかいねえなあ!」
「魔力0なんて初めて見たぜ!」
こいつら、俺を励ましたいのか落ち込ませたいのかどっちなんだ……。
しかし自分の今の能力を嘆いていても仕方がない。
この受付嬢と周りの冒険者が言う通り、毎日コツコツクエストをこなすしか無さそうだ。
そして金を稼いであの可憐なアイドルに貢ぐのだ!
決意を新たにするタクト。
「セリアさん。早速骨太なやつを頼みます」
「はい!では受付に戻りましょう」
セリアとタクトが去った後、鏡にうっすらと文字が浮かび上がるが、誰も気づかない。
【支援 100000000】