5.「今日は骨太のやつを頼みます」
「今日は骨太のやつを頼みます」
「は、はい?」
突然のタクトの申し出に、この町の愛想の良さナンバーワン受付嬢セリアも、流石に困惑を隠せなかった。
「太めの草むしりということですか?」
「いえ、違います。草むしりより稼げるクエストをお願いしたいのです」
「あ、なるほど」
あとで「それにしてもどうして急に?」と尋ねようと心に決めつつ、セリアは後方のクエスト掲示板を見る。
「そうですね、見習いの方が受けられるクエストとなると、どれも草むしりと同じくらいの報酬になりますね……」
「なるほど。では『見習い』とやらを抜けるにはどうすれば良いですか?」
「でしたら」
セリアは受付から出ると、ギルドの中央にスタスタと歩いていく。
後ろをついていくタクト。
そこには台座があり、姿見ほどの大きな鏡が設置されていた。
入口と受付を往復するだけだったタクトは、「こんなものがあったのか……」としげしげと眺める。
セリアはそんなタクトを振り返ると、
「こちらで冒険者登録をしていただきます。そしてタクトさんの持つ能力、適正に従って、ランクが決定します」
「ランク……?」
「一番下が白指輪、次に黄指輪、青、紫、黒、銅、銀と上がり、金が最高のランクになります」
なるほど。ランクによって受けられるクエストが変わるのか。
「大体の方は白指輪スタートですが、ポテンシャルによっては黄指輪や、青指輪スタートの方もいます。その後は、こなしたクエストによってランクが上がっていきます」
俺の冒険者人生が始まる。タクトはそう思いながら、鏡に手をかざす。
途端、鏡が強烈な光を放つ。
「ま、眩しい!」
「なんだあれは!」
周りの冒険者もその光に驚き、口々に騒ぎ出す。
その反応からも、タクトの素質が並のものでは無いことが感じられる。
改めて、俺の冒険者人生が、始まる。