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79・浄化作戦 前編


ひどい目にあった。

蛍のケツに報連相ほうれんそうについてくどくどと説教されてしまった。これで何度目だろう…


「マリア嬢はどうしてそう闇雲に実行するのか…少しは私を信用して次回からは相談してから行ってほしい。私達は友…気軽に話して欲しい、そうだろう?まあ、騎士達の疲労を軽減してくれた事には感謝するよ」と最後はお礼も言われたけどね。


「私の方からもお礼を言わせてください。我が国の者にも同等の回復魔法をかけてくださり、ありがとうございます」と何処かでみたことあるなぁと思っていた人にもお礼を言われてしまった。一体誰だったか…


「マリア、覚えてる?彼、いつぞやの仮面舞踏会でわたくしと踊った方ですわよ」とアンジェリカに言われ、あぁと納得した!そういえばあのいけ好かないアッシュ君の兄の横にいつもいた人だ。

確か名前は…


「カーミアン・デル・ヤルトガ だ。帝国の宰相をしている男だよ」とアッシュ君がこそっと教えてくれた。


って事は今回はアッシュ兄はいない訳だ。ちょっと一安心。


魔の穢れに汚染された湖には明朝に行く事になったので、今日は女子だけのテントで久しぶりにアンジェリカとエマと沢山話をする事が出来た。


後何回、こうして2人と楽しく過す事が出来るのか…考えただけで目頭が熱くなるの感じてしまった…




「ここが浄化出来ない魔の穢れか…」


目の前に広がる湖は見渡す限り真っ黒でいつもの魔の穢れとは違っているのは明白であった。


あらかた周りにいた魔物達は騎士団と兵士団の方達が排除してくれたが、次から次に現れる魔物をどうにかするにはやはりこの穢れを浄化しなければならないんだけど…


さっきから何度か浄化魔法クリーン聖癒魔法ヒールをかけたり、涙を零したりしたけど綺麗になった場所も直ぐに穢れた場所に侵食されてしまって一向に浄化できない。どうしたものか…


『お母様、それは普通の浄化は効きません』

『母様、本気の気持ち大切。もっと想いを強く』


そう言われもなぁ~

白とシェイロンはぴょこんと胸元から飛び降りると2人でぴょこぴょこと「頑張れ〜」と踊り出す。あまりの可愛さに集中力が途切れてしまったので、一度休憩を入れてもらう事にした。


「あれっ?そういえばアッシュ君がいない…」


いつも片時も離れず見守ってくれているアッシュ君の姿が何処にも見当たらず、不安感に襲われる。いつの間にかアッシュ君は私の心の安定剤になっていたのだと改めて実感した。


私がキョロキョロと周りを見渡していると白が『お父様ならあそこに』と顔を動かし教えてくれた。


白が顔指してくれた方向を見ると湖の反対側の畔にアッシュ君ともう一人、男性が見えた。

アッシュ君は一体誰と一緒にいるのだろう?

なんだか胸騒ぎを覚え、2人から目が離せなくなってしまっていた。


「あっ!!」

次の瞬間、男に突き落とされるようにアッシュ君が湖へ落ちる。

私は転移魔法ワープを使い、湖畔の反対側へ。そこにいたのは…


「一一ナバス皇帝… 貴方が何故ここに?」

「聖女… 何故だと思う?」


ギラついた目つき、興奮状態なのか呼吸も乱れている。いつもはオールバックに整っている金色の髪も無造作だ。


「ねぇ、その手に持っている物は何?」

声が震えてしまったかもしれない。けれど仕方が無いじゃないか…だってあいつが手に持っている物は…


「これか?」

私に見せ付けるように皇帝はそれを顔の傍まで持ち上げるとうっとりとそれを魅入る。


「それが何なのか早くいいなさいっ!」

大きな声で怒鳴ると皇帝はこちらに視線を向けニヤニヤと笑いながら話し始めた。


「これはな、魔のものを殺す為に作られたナイフだ。穢れを浄化する魔法が付与されている特注品だぞ。これで奴を刺してやった…ついにこの手で魔を葬る事が出来たのだ!はっ、見てみろ、魔の癖に一丁前に赤い血を流しているだなんて生意気な奴だ、だが、これでやっと…やっとお母様…僕はやりました…アハハハハッ」


「なんてことを…」

皇帝の持っているナイフは血で真っ赤に染め上げられていた。


急いでアッシュ君が落ちた付近の湖を見渡すがアッシュ君が一向に浮き上がってくる気配がない…


泣いている場合じゃないのに、一刻を争う時なのに…

腕で乱暴に涙を拭くが次から次へと止めどなく流れ視界を遮る。


無力な自分には只々泣くことしか出来なかった…

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