75・どうやら日常が戻ったようです
公爵家でのパジャマパーティーから数日たった。
エマは無実潔白だったオルティース家に養子としてタクト君と一緒に引き取られることに。オルティース夫妻はゴッデス教会の勧めでエマを養女にしただけで他には関与していなかった。エマの事を本当の娘の様に可愛がっていたのでエマが真実を話し、誠心誠意謝ると夫婦は快く許してくれたそうだ。そして弟のタクト君の世話もさせて欲しいと願い出てくれたみたい。
なんていい人なんだ、オルティース夫妻。
「マリアちゃん今日は何食べる?」
「うーん、迷うけど今日はチキンソテーにしようかな」
「じゃあ私も同じのにしよーと」
「おばちゃん、チキンソテーセット2つで!1つ大盛りね」
「はいよ。いつも仲良しでいいわねぇ」
「ありがとう」と軽く会釈をし、2人で並んで食事を受け取る。
席を見渡すと、アッシュ君がこちらに手を挙げた所が見えた。
先に来ていた騎士科のメンバーが座っているがよくよく見るとかなり目立つ人物ばかりだ。って言うか、攻略メンバーばかりだ。
避けていたはずなんだけど、どうしてこうなってしまったのだろうか…
「行こう、皆が待ってるよ〜」
席に着くと、変わらないメンバーの顔触れにホッとしている自分に気付く。
こんな日常がずっと続けばいいなとすら思ってしまっている。
隣を見るとアッシュ君が不安そうにこちらを見ていた。
この間、白とシェイロンの食事にダンジョンに潜った時、アッシュ君に「マリアはたまに遠い目をする時がある。私はそんな君を見ると不安に駆られてしまう…」と言われてしまった。多分日本に帰る事を考えている時なんだと思う。
学園生活も残す所、あと1年…
エンディングは卒業パーティーだ。
私の選択は…
「マリア、どうした?食べないのか?」
影の薄くなったビビリことエドワードが不思議そうにこちらを見ている。周りを見るとみんな不思議そうに私を見ていたことに気がついた。
「どうしたの?上の空ね?」
「あ、あぁ私達が3年に上がればリヒュルド先輩は卒業でしょ?こうしてみんなで食事できるのも残りわずかだと思ったら急に寂しくなっちゃって」
「なんだ?俺と離れるのが寂しくなったのか?おいおい冗談だ、そんなに睨むなアッシュ」
「貴女何言ってるの?別に全員卒業したってこうして集まって食事会すればいい話じゃない?今みたいにほぼ毎日は無理かもしれないけれど、いつだって貴女が望めば会えますわ」
「私が望めば?」
「そうよ、わたくしたち貴女が繋いだ縁でしょう?貴女を中心に普通では経験出来ないことをたくさんさせて頂いたわ。トラブルメーカーだから貴女は。あっ、いい意味でよ?」
でたよ、いい意味で…
そっか…私が繋いだ縁なんだ…
みんなで食事楽しんでいると、学食入口がザワザワとし出した。
どうしちゃったのだろう?
視線を向けると学園長と数名の兵士がこちらに向かって来るのが見えた。
校門野郎が席を立ち、兵士の元へ向かい、何やらこそこそ話を聞くと慌ててこちらに駆けてきた。
そして蛍のケツに耳打ちする。
「なんだって!?」蛍のケツは少し焦ったようにこちらに目線を向けると「食事中に申し訳ないがみなにはこのまま学長室に付いてきてほしい」と告げる。
何があったのか…
「早速トラブルメーカー発動ね」
アンジェリカがぼそっと呟いた…
えっ、これって私のせいなの?




