6・どうやら間違われたようです
学園生活2日目。
今日は朝から新入生は学園内にある聖堂に集められた。聖堂内に入ると前方に大きな祭壇が見える。その中央には巨大な女性の石像が置かれ、ステンドガラスから射す色とりどりの光が石像を神々しく見せている。近くには祭司らしき男が石像へ祈りを捧げていた。
私達が住む聖王国は女神メーティスを信仰している。遥か昔、魔王誕生と共に何処かの国の第2王子が女神メーティスより神託を受け、勇者になった。それと同時に異界より現れし、白いベールを纏った聖女が勇者一行と共に魔王を滅ぼし、後に二人は結婚。この国、聖王国を建立したと歴史に記されている。
この異界より現れし聖女は私と同じ転生、もしくは転移した人だったのだろう。そう考えると魔王討伐する世界に落とされたこの娘より私はマシだったと思う。
今から私達はこの聖堂で女神メーティスの儀式を行う。司祭の話ではこの儀式を行うと体の中の魔力循環器 魔力の血管のようなものが開くらしい。昔、魔力暴走を起こす子供たちが数多くいて、女神メーティスはその事に悲しみある程度 体も精神も安定するまで魔力を使えないようにし、この儀式方法を聖女に託した。
儀式中、稀に女神より神託を受け、特別なギフトを貰う者が何十年に1人の確率でいるらしい。例えば 薬師スキル=王国専属医者 剣豪スキル=騎士団長 魔力増幅スキル=魔法団長 ギフトを貰うとその能力値がずば抜けて高くなる。国はギフトを貰った者を何がなんでも縛り付けておきたいみたい。給料もとびきりいい。だからみんなちゃんと自己申告するそうだ。
この国には鑑定スキルのようなものがないみたい。少しホッとした。もしあったら異世界から来た私は聖女再降臨なんて祀り上げられる可能性がある。そしたら面倒くさい。
「では、始めます。女神メーティス様に祈りを」
祭司の声と共にみんな胸の辺りに両手で1つの拳を作り、祈り始めた。私も慌てて祈り始めたけど、いつもの癖で私だけ手のひらを合わせるスタイルになってしまった。
祈り始めて数分… なんだか体がぽかぽかと熱くなってきた。
「もし… もし…」おやっ?頭の中に女性の声が聞こえる。
「あっ!やっと繋がった。ごほんっそなたに神託を授けましょう。一度しか申さないので良く聞きなさい」
わお、神託イベントきたー!ドキドキッ
「ごめんなさいねぇ〜 わたくしの眷属が妹ちゃんと貴女を間違って転生させちゃったみたい〜」
はぁ?
「本当は〜妹ちゃんをマリアちゃんに転移させる予定だったのよ〜ほらっ貴女の妹ちゃんマリアちゃんに性格そっくりじゃない?波長が合うのよ〜だから転移。あの物語もそうだったでしょ?」
はいっ?確かに言われてみればマリアの性格は妹と良く似ている。世共のヒロインは転移者の設定だったのか…
「それがねぇ〜わたくしこっちの世界を貴女の国のゲーム?でしたかしら、それに似せようと思って忙しくしてたから妹ちゃんの方は眷属に任せていたのよ〜」
それから女神は日本に派遣している眷属が資料として持ってきた乙女ゲームがどれほど素晴らしかったか長々と話し、最後に ちゃんと叱っておいたから〜と軽く言った。私はブチギレ寸前である。
「それでねぇ〜貴女には申し訳ないから〜特別なギフトあ・げ・る。それとねぇ〜ヒントを2つ。1つは妹ちゃんが攻略していない対象者がもう1人いる事。隠れキャラね~勿論わたくしは攻略したわよ〜もう1つ、TRUE ENDは元の世界に戻りまーす。どう驚いた?」
えっ…私帰れるの?
「本当は妹ちゃんには聖女になって最推しの王子と結婚してほしかったのよ〜少しずつ衰退するこの国の為にね〜だけど貴方じゃ無理そうだし〜だから教えてあげたの。もし貴女がTRUE ENDを見つける事が出来たら転生したあの日に戻るよう話はつけてあるわ〜貴女は死んだ事になってるからそれが一番よね。今度はうまく避けてね〜それでは頑張って〜」
くそっ!色々聞きたい事があるのに口が動かん。私は話せない様になっている。一気に入ってきた情報量が多すぎてパンクしそうだ。忘れないうちにメモをとらなくては。うまく避けてね やはりあの日頭に何が落ちてきたのだろう…それで私 死んだんだ…
でもくよくよしている場合では無い。帰れる方法があるならそれを目指すしかない。特別なギフト…攻略本とかだったら嬉しいな〜
『♡鑑定スキル』『魔力無限スキル』『魔力調整スキル』を取得しました。
頭の中に響く機械じみた声を聞きながら、3つもギフトくれたんだ〜有り難いくらいで考えてました。この時はね。
目を開けるとかなりの至近距離に司祭のおじさんが居て、もうびっくり!!ビクッとなっちゃったよ。
そんで目を開けて直ぐの私の肩を掴み、ゆさゆさ揺らしてくんの。
「貴女!神託を受けましたね!」
目を限界まで見開いたおっさんが至近距離でだよ。周りに助けを求めようと見渡すとみんなこっちを見ている。何が起きたんだ?
あっ、今 碧頭と目が合った。
目が合うとエドワードは慌ててこちらに向かってきた。
あいつ、入学式の時からこっちをちらちら見てくるくせに話しかけてこない気持ち悪いやつだと思っていたが、やっと動き出したか。
「マ、マリアを離して下さい」
エドワードは司祭と私の間に無理やり割って入ると両手を大きく広げ、少し振り向きながら照れくさそうに言った。
「お前は俺が守るから」
キュンッ… 嘘… 今、胸が… でもこれ私の感情じゃない。と、すると… マリア… あんたチョロインだったのか…
とんでもないことが発覚しました!ヒロインのマリアは直ぐ恋に落ちるチョロインと判明しました!
「アーノルドさん、学園長がお呼びですよ」
後ろから声を掛けられて気付いた時には先生にガッツリ腕を掴まれて逃げられない状態だった。私こんな事してる場合じゃない!早くメモを…
「エドワード…」
助けてって手を伸ばしたら、あいつ目を逸らしやがった。
「チッ」
マジ使えん!あいつの裏切りは絶対忘れないからな。命名『ビビリ』で十分だ。
私は引きずられながら学長室へ連行された。