65・進級試験 後編
あの後、国王様には怒られて学園長に聖獣様を明日から部屋に置いてくるように頼まれてしまいました。
どうにか白とシェイロンを説得して大人しくお留守番してもらう事に成功したので、試験会場に向かう。
今日は薬草採取と調合のテストだ。
薬草を採取する場所はオーハイ森林。例の初めて魔の穢れを見た所だ。
そういえば最近は魔の穢れの浄化を頼まれないけど、ちょこちょこ眼鏡先生に涙や血を請求されているからそれでどうにかしているのだろう。
別に白とシェイロンのご飯になるから討伐に参加してもいいのだが、自分から行きたいとは言い出せない。だって、騎士様達って準備や移動に凄く時間がかかるし、私を何処かのお姫様の様に扱ってくるからちょっと面倒臭い。
「マリアちゃんこっちだよ〜」
会場に着くとエマに呼ばれ、受付を済ます。
「今日は一緒に行こうね」と腕に抱きつくエマは笑顔の奥に不安な色を宿している。私に出来ることがあるなら協力したいんだけどなぁ…
先生の合図で一斉にスタート。
「こっちこっち」とエマに腕を引かれ、必要な薬草を採取して行く。
どのくらい時間が経ったのだろう…
結構奥まで来てしまったと思う。
もっと手前で全て揃う薬草ばかりだった筈なんだけど、「こっちにもっと良質なのあるよ〜」「あっちに生育環境の良い場所があるから」とどんどん奥へ。他の生徒は多分近くには居ないと思う。
途中からエマは私を何処かに連れていきたいんだろうなぁとは気付いていた。
ここ数日、エマの様子がおかしかった理由が分かるのだとしたら、付いていくしかないと思った。
「全部揃ったね~、はいっ、休憩に一杯どうぞ。私が作った特製栄養ドリンクだよ」
エマに差し出された飲み物を近くの石の上に座り「ありがとう、いただきます」と一気に飲み干す。味は美味しい。
「あれっ?急に眠気が…」
私はわざと横に倒れるとそのまま地べたに倒れ込み寝た振りをした。
エマに渡された飲み物を【鑑定】したら睡眠薬入フルーツジュースと出たからだ。私は状態異常無効な体だから睡眠薬は効かない。だからわざと寝た振りをする事にしたのだ。
倒れた私の横でエマの啜り泣く音と小さな声で何度も謝る声が聞こえてきた。
私はエマを慰めたい気持ちをぐっと堪え、寝た振りを続ける。
「よくやった、エルマミヤ」
現れた人物の声は多分エマの婚約者だった男だろう。一度ダンスパーティーで挨拶を交わしただけだが、やたら媚を売る喋り声とギラギラした目付きが印象深く残っていた。
「泣いているのか?情けない、お前は名誉ある事を成し遂げたのだぞ?これは聖女様の為でもあるんだ。泣いてないで誇りに思え」
「しかし、マリアちゃんはこんなの望んで居ない筈です」
「マリアちゃんだと?聖女様と呼べ!お前ごときが聖女様の名前を軽々しく呼ぶな!おいっ、この方を丁重に扱え、いいなぁ?このまま純ゴッデス教会総本山に向かうぞ。ルートはわかっているな?絶対に見つかるんじゃないぞ?行くぞ、エルマミヤぐずぐずするな」
ちょっと脇とは脇腹触らないで!
笑うのを必死に堪えて私はエマと一緒にそのなんちゃら総本山に向かう事にした。
あっ?テストどうしよう?
後で追試してくれるかな?
そればかりが気になって、いつの間にか深い眠りについていた…
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