62・どうやら家族が増えたようです
『同属がいます』食事が済むなり、帰ってきた白がそう告げた。
今回のスタンピードは白の同属が長い眠りから目覚めた為、魔物達がパニックを起こした様だ。
『会いに行っても大丈夫ですか?』
1人で行かせる訳にはいかないので、私とアッシュ君も着いていく事にした。
同属はここから見えるあの一番高い山の頂上付近の洞穴に居るらしい。
同属と言う事は蛇なんだろうか?あんまり大きかったら遠くから見ているだけにしよう。
『ここです』
浮遊魔法で一気に山を登ると白が言っていたように大きな洞穴があった。
どうやら白はその同属とやらと脳内で会話をしているようだ。
白に言われるがまま洞穴を進むと居ました白竜が!ファンタジー定番のドラゴンです。
『私のお母様です』
白がそう言うと起き上がった白竜が丁寧に頭を下げ、挨拶してくれた。
『始めまして私はシェイロン。母様が有名なアニメ?からちょっと拝借した名前だといっていましたが、とても気に入っています』
「アニメ?」
あれっ?っと言う事はこの子の母親って…
『貴女からは母様と同じ匂いがします』
シェイロンの母親は佐藤陽子という名前らしい。覚えがあると思ったら、初代聖女の日記に書かれていたのを思い出した。
シェイロンは初代聖女の子供だったのだ。
確かに日記にちょくちょく「いでよ、シェイロン」って台詞があった気がする。この子の事だったのか…
シェイロンは初代聖女の最後の願い「子供達をお願いね」をきちんとやり遂げた後、悲しくて悲しくてこの洞穴で何ヶ月も泣き続けた後、いつの間にか眠りに付いてしまっていたとか。本当は女神様の元へ帰るはずだったけど、女神様も泣き続けているシェイロンが可哀想だったのだろう…そのまま起こさずにいてくれたみたいだ。
女神様に接触を試みたそうだが、応答が無いらしく困っていると言う。
そういえば、力を制御されている様な事を言っていた気がする。原因はそれかもしれない。
「1人じゃ寂しいし、シェイロンもうちの子になる?」
私から発する懐かしい匂い?で目覚めてしまったのだからこのまま放置する訳にはいかないし、白にも兄弟が欲しいと思っていた。
シェイロンは嬉しそうに羽やら尻尾をぶんぶん振り回している。
「シェイロンも白みたいに小さくなれる?」
『勿論です』
シェイロンの体が見る見る小さくなり、小鳥の様に飛び私の肩に掴まった。
「これなら魔力も制御装置されているし、連れて帰っても問題ないよね?」とアッシュ君に向きを変えると呆然と突っ立っているアッシュ君がいた。
「アッシュ君?」「……」
どうしちゃったのだろう?反応無しである。
「どうしちゃったの?私達の子供がもう1人増えたよ?」
まだちょっと恥ずかしいがそう伝えてみる。
「… そうか。そう思えば…」
何か吹っ切れたように清々しい顔になったアッシュ君と元いた王宮図書室へ戻ることにした。
まだ、私達は退城書にサインをしていないからね。後で、とやかく言われるのは面倒だし…
光に包まれ、着いた先は王宮図書室。
行きとは違い、数名の王宮職員が行来していた。
私達が突如現れたことに驚き、ある者は腰を抜かし、ある者は奇声を発している。
そんなに驚かせたかな?
白とシェイロンは何事も無かったかのように嬉しそうに遊んでいるし、アッシュ君は苦笑い。
そのうち国王様達が来たので一応戻った事を伝えると、皆何故か渋い顔をしている。
何かあったのだろうか…
そして国王様から一言怒られちゃった…
「ここはそう簡単に出入りしていい場所では無いんだよ」っと…
う〜ん…確かに。




