61・おやっ?もう終わっただと…(国王視点)
「準備の方はどうだ?進んでいるか?」
「今日中には整う予定でおります。明日には出発出来ますが、後は聖女様次第ですね」
「そうか… 女子の支度は時間がかかるやもしれんな…」
第5騎士団長を呼び出し、出立の状況を確認する。
今から聖女が行く北のサライズ辺境伯領は隣国マダリア国との国境の要。
マダリア国は複数の人種が統治する国で、我が国とは余り友好ではない。民主主義国家で、今元首はラインラ人。ラインラ人は肌が薄茶色で身体能力が高い人種である。
我々聖白人はこのラインラ人を迫害した歴史があり、我が国は聖女様の遺言により差別は禁忌だが、他の国の聖白人は奴隷としてラインラ人を活用してきた。
ラインラ人にとって聖白人は忌嫌う存在になってしまっているのだ。
「規模からして、片が付くのはどのくらい掛かりそうだ?」
「直接確認していないのではっきりとは言えませんが報告から察すると最短で6日7日掛かるでしょう。なにせサライズ辺境伯領までは距離がありますので…」
「なるべく迅速に行うように、サライズ辺境伯領の被害が心配だが仕方あるまい。これ以上拡がらぬよう願うしかないな」
後は、聖女の奇跡に期待するしかないとは、我ながら情けない。
まだ成人ともならぬ、女子にあまり期待しずぎるのも考えようだな…
コンコンッ
「入れ」
「お話の所申し訳ありません。陛下、アーノルド男爵が至急お話したい事があるそうなのですが、どうなさいますか?」
アーノルド男爵は聖女の父親、もしかしたら聖女に何があったのかもしれぬ。「直ぐに連れて参れ」と告げると外に待機していたのか慌てた小太りな男が転がるように入ってきた。
「へ、陛下、我が娘が消えてしまいました!」
「なんだと!?」
近くに居た第5騎士団長に指示を出し、宰相と騎士団長を呼ぶように伝える。
これは一刻を争う一大事だ。
まさか、ナバス帝国が拐かしたのか…嫌、それは無いか、聖獣様への怯え方は尋常では無かったはず、ならばサイラスが?護衛騎士にサイラスを呼ぶよう伝える。
どうなっているのだ…
儂の代で次から次に厄介事が舞い込むのは何故だ?何か罰当たりな事をしたか儂…
皆を集め、アーノルド男爵から話を聞く。
サイラスが居たことにホッとしたのは黙っておこう。
アーノルド男爵の話だとアーノルド嬢は単独でサライズ辺境伯領へ向かったとのこと。スタンピードは聖獣様の食事になるそうだ。一体どうなっている?
状況が飲み込めず、準備が整い次第第5騎士団は聖女の後を追うことになった。
「大変です陛下!」
「次から次へと何だ?」
慌てた第4騎士団長が駆け込むように姿を現す。もうちょっとの事では驚かんぞ儂。
「サライズ辺境伯領にいる私の部下より魔法伝書が届きました!見て頂けますか?」
第4騎士団長から渡された手紙に目を通す。
【スタンピード消滅、原因不明、突如現れた光の壁により被害は無し】と書かれていた。
もう、理由が分からん…
誰か説明してくれ…
「た、大変です陛下!」
もう勘弁してくれ、儂の頭はパンク寸前だ。
「次は何だ」と慌てて入って来た騎士に睨みを聞かせながら問う。俗に言う八つ当たりだ。
「アーノルド男爵令嬢が…」それだけでも嫌な予感しかしない…次は何をやらかしてくれたのだ?
「聖獣様を2匹連れ、王宮図書室に突如現れました。数名がパニック状態になっております」
えっー…アーノルド嬢よ、数時間の間にお主の身に何が起きたのだ…
儂、もう、疲れちゃった…
皆で図書室へ向かうとアーノルド嬢の手の上には小さな白蛇と小さな白竜が戯れていた。それを嬉しそうに見守るアーノルド嬢とレオナルド候爵令息。アーノルド嬢はこちらに気付くと一言。
「只今戻りました」と…
いや、何が?と儂は言いたい。




