60・どうやらお弁当のようです
「と、言う訳で白の食事にしようと思っております」
「なるほどな、マリアが防護魔法でスタンピートを囲い、段々と狭めれば一時に魔物が集まる。その中に白を投入するという事か」
「わたくしも心配ですが、どうしてもと白がおっしゃるので苦渋の決断を致しました」
「聖獣様をそんな危険な目に合わせて罰は当たらないのであろうな?」
大人しく聞いていたお父様が焦ったように聞いてきた。
『私は大丈夫ですよ、お祖父様』
「聖獣様…私をお祖父様と呼んで下さるのですか?」
『お母様のお父様ならお祖父様です』
「なんと可愛らしい…」
お父様は白にメロメロだ。だらしない顔で白の頭を撫でている。
「それで?何故図書館に?」
「勿論、サライズ辺境伯領の資料を探しに来たのよ。挿絵でもあればそこに転移出来るでしょ?今からちょっと行ってきて、またすぐ帰ってこれるじゃない」
「マリア、転移魔法は危険だ。この間、あんな事があったばかりだろ」
「大丈夫よ、今度はきちんと場所のイメージをしてから行くもの」
「ならば、俺も行くぞ」
「いいの?学園は?」
「白は2人の子供だろ?父親の俺が行くのは普通ではないか?」
「そうだけど…」
「決まりだな。これじゃないかサライズ辺境伯領の資料は」
アッシュ君が手に取った本をパラパラとめくると特産品の翡翠が採れる鉱山が写っていた。
その挿絵をじっくりと観察する。よし、行ける気がする。
「では、お父様、行ってまいります。白おいで。後は宜しくお願いします、転移魔法」
「マリア待て、ちゃんと説――――」
光に包まれ、目を開くと挿絵に描かれた鉱山入口が目の前にあった。
「上手く行った。後は浮遊魔法で上から魔物の群れを見つければ」
浮遊魔法と唱えるとふわりと体が宙を舞う。
おおっ、あっちの方に砂埃が見える。多分あれがスタンピートに違いない。地上にいるアッシュ君に指で合図を出し、砂埃が出ている場所まで近づいてみる。
どうやらスタンピートの群れはホーンサウルスと言うトリケラトプスによく似た魔獣の群れだった。
「白、この量食べられる?角付だけど」
『問題ありません。早く食べたいです』
「じゃあちゃちゃっとやっちゃうね。砂埃が出てるのがこの範囲なんだから…これくらいの防護魔法を張れば…あれっ?こんな歌合ったよね?」
これっくらいのお弁当箱におにぎりおにぎり(ホーンサウルス)チョイっと詰めて とな。
「出来上がり白のお弁当だよ」
『うわぁ~美味しそうです。それでは行ってまいります。お母様』
「ちょっ…」
白は空中にいる私の手から飛び降りると防護魔法の中に落ちていった。
頭の中に聞こえてくる『お母様のお弁当美味しいです』がとても可愛くて顔が緩むのが止められない。下の方でアッシュ君が手を降っているのでお返しに手を振り返り返すと、手をクロスさせ、バツと返されてしまった。
慌ててアッシュ君の元へ行くとアッシュ君が顔を真っ赤にさせていた。
「どうしたの?」そう私が問うと「見えているんだ。気を付けてくれ…」と言われてしまった。
何のこっちゃ?
白が食事中の間、その事を考えていたが最後まで答えが分からなかった…




