52・ダンジョン攻略 パート2(森風の道編)
『お腹いっぱいです。当分食事はしなくても大丈夫になりました』
最後にそう言うと戻ってきた白はいつもの指定位置で眠り始めた。
たくさん食べたと言った白のお腹は全然膨らんでいないのが気になって聞いてみたら、食べた魔物はお腹の中で魔力に変換され、蓄積されるからほとんど何も残らないらしい。だから便とかは出ないんだって。
だけど唯一消化出来ない魔石だけは出さなくちゃならなくて、魔石を外に排出する時、一番無防備になるから守ってもらうため私達の元へ帰って来たみたい。
目の前には魔石が山のように積まれている。どんだけ食べたのやら…
これを全て冒険者ギルドに売れば、結構な儲けになるだろう。
この間の火の穴ダンジョンで稼いだ魔石はお国に全部没収されてしまったから私達の取分とか無かったんだよね…あんなに張り切って集めたのにさ…
「これは貴女に何かあった時、直ぐに動かせる資金に回す」とか上手いこと言って、新手の詐欺師さながらだったなぁ…
取り敢えず、白の魔石はアッシュ君の闇霧魔法の中にしまってもらうとして、ボスの祠まで魔物に遭遇する事無く辿り着いてしまった私達はこれに挑戦するか悩み中だ。
だってさ、ダンジョンエリアの魔物を倒す事によって何となくダンジョンのレベルやボスはこんくらいの強さとか予測が立てられるのにそれが一切無く、すっ飛ばして来ちゃったから未知数の敵に挑む理由だ。
「アッシュ君どうする?ボス挑む?」
「倒したいんだろ?なら、付き合う」
アッシュ君のこういう所が好き…
私の事を理解し、配慮してくれる。
優しい彼に…私…どんどん我儘になっちゃうよ?それでも私のそばに居てくれる気がするんだよね…甘えかな…あぁ好きだな…
ぽーっとアッシュ君を見つめていたらしく「マリア?」って心配そうに顔を覗き込まれドキッとする。あぁ好き…
重症だな…
まさか自分がこんなに人を好きになるとは思わなかったなぁ。
止めどなく溢れるこの気持ちをどうやったら止められるのだろう… だって私は―――
「マリア行こう」
差し出された手をそっと握る。
いつか来るその日までは…どうかこのまま…
祠の中に入るとそこには群れを成す狼の集団いた。
その中に一匹だけ、大きな狼がいる。多分あれがダンジョンボスだろう。
取り敢えず防護魔法を展開させ様子を見ることにした。
「あれはフォレストウルフの群れだな、一番デカいのがフォレストキングウルフ、群れの長だ。一体一体はそこまで強くないが、あれだけ群れをなされると厄介だな。何故あそこまで警戒しているのか…何かに怯えている?」
「怯える?私達の他にもこのダンジョンに訪れている人がいるとか?」
「もしくは、強敵の存在か…だとすると…」
突如現れた何者かによってフォレストウルフ達は群れをなしてその強者との争いの為備えている訳か…
その強者… なんてタイミングで現れちゃってくれてんの!!迷惑な…
「どうする?攻撃してみる?」
「そうだな、この防護魔法があれば向こうの攻撃は通さないからな、攻撃してみてもいいんじゃないか?」
「なら、私に任せてくれない?試したい魔法があるの」
「いいよ」とアッシュ君のお許しが出たので、新しく覚えた初代聖女の魔法、電撃魔法を発動させる。
フォレストウルフの頭に白い稲妻が落ちると数匹がその場に倒れ落ちた。
やったぁ成功だ。続けてもう一度詠唱しようとしたら頭の中に声が聞こえてきた。
『あれっ?まだ、ご飯いたんだ。いい匂いがする』と…
胸元からぴょんと飛び降りた白は、またまた巨大化するとフォレストウルフの群れ目掛けて突撃して行ってしまった。
何が起きているのか解らず、ぽかんっと白を眺めていたが「マリア!」と隣から焦る声が聞こえて我に返る。慌てて白を追いかけて行ったのだが…
目の前で繰り広げられている光景にまたまた呆気に取られてしまった。
そう言えば、昔こんな感じのゲーム機あったな…
確か名前はパッ◯マン…まさにそれだった…
強者はあんたかい!?白さんよ…




