48・どうやら生まれるようです
「おはよう、卵ちゃん」
朝起きたら、女神様から貰った卵に挨拶をするのが習慣になったこの頃…
いつもと同じ朝だと思ってたら…
おやっ?卵の様子が…
明らかにカタカタと中身が動いている。
「大変だ!生まれる」
慌てて寝間着のままエマの部屋へ行き、午前中は休むことを伝えた。勿論学園にも連絡してもらう事も忘れずにお願いした。
「どんな子が生まれるかな?」
ベッドに寝そべり、今か今かと卵を見つめる。
ファンタジー定番と言えば、ドラゴンか?はたまた巨大な狼や虎とのもふもふライフも捨て難い。精霊とか妖精もありか…
なんて、想像は膨らむばかり楽しみで仕方がない。
「早く生まれておいで」
人差し指で軽く突きながら魔力を流す。
この卵にはたっぷりと魔力を注いだのだから、私に似ている子が生まれてくるかもしれない。
防護魔法を応用して産まれたての赤ちゃんが入る保育器の様な物を作り、いつでも持ち歩き、私の魔力を絶えず流す設計にした。寝ている時も、授業中でも、あの仮面舞踏会の時だって。
ピキッ…ピキッピキッ
殻が割れ、口先が出てきた!
肌質は鱗のようだ。
「ドラゴンだ!」
ど、どうしよう!?
ドラゴンなんて飼えるのだろうか?
大きくなったら?食べ物は?許可とか…
あれっ?
卵の割れ目からニョロニョロと出てきた白くて細長い物… これってまさか…
「へ、ヘビ!?」
蛇とは予想外だ、前世の頃から蛇は苦手。あのニョロとした動きとかギョロリとした目、一番頂けないのは食事風景だ。TVで見た鼠の丸呑みは衝撃的だった。
ぐるぐると思考を回していたら『おはようございますお母様』と声が聞こえてきた。
ふと白蛇を見るとばっちりと目が合った。
「今の声、あなた?」
『はい、そうです』とまた頭の中に声がする。蛇と会話出来るだなんて不思議な気分だ。
「お母様って私の事?」
『はい、そうです。お母様』
なんだか急に可愛く見えてきた白蛇に私は恐る恐る右手を差し出すと、手の上に乗ってきた。
「意外に可愛いかも?」
『お母様、私に名前を下さい』
「名前か… 白蛇だと定番の白とかは直ぐに思いつくんだけど…」
『は…く…私の名は白。とても気に入りました』
白は嬉しそうに手のひらの上でくるくると回っている。
白と色々な事を話している内に、すっかり打ち解けて愛着すら湧いてきた頃、私のお腹がぐぅーと鳴り始めた。
「いっけない!そろそろ学園に登園しなくちゃ、だけど白をどうしよう…白、お腹すいてない?白は何を食べるの?」
『お母様の魔力でも大丈夫ですが、出来る事なら魔物を少々…』
「そっか…直ぐに魔物は無理だから取り敢えず、私の魔力あげるね。白はどうする?一緒に行く?」
『いつでもお母様と一緒がいいです』
「でも、どうしよう?何処に隠せば…」
すると、白はするすると腕を伝って胸の谷間から下着の中へ。
『ここにいます』
「そんなところじゃ、何かあった時に潰れない?」
『大丈夫です。こう見えて私の体とっても硬いのです』
「じゃあ、とりあえず今日はそこね。白、大人しくしててね」
『勿論です』
我が子はなんて良い子なんだろう…
私の魔力を吸ったのに私の要素はどこ行った?
取り敢えず学園に着くと丁度お昼の時間で、いつものメンバーで食事をする事になった。
「いっただきま~す」
朝ご飯を逃しちゃったからお腹ペコペコ、いつもより多めに頼んできちゃった。
いつ食べても美味しいわぁ〜
今日の私のお昼ご飯はふわふわのオムレツに肉汁たっぷりのウィンナーに焼き立てのクロワッサン。それとチキンサラダだ。
「おいおい、そんなに急いで食うなよ。蛇じゃないんだからウィンナーは良く噛め、丸呑みするなよ?」
「へっ?」
まさか蛇の話題が出てくると思わなくて、動揺してウィンナーを落としてしまった。
「あっ!ウィンナーがマリアのむ、服の中に… お、お、俺が取って…」
真っ赤な顔をしたビビリが私の胸を凝視してくる。破廉恥な。
「その役目、私がやろう」と蛍のケツが立ち上がり、「マリアに触るな」とアッシュ君が怒り出す。
全く男子はいつの世もおっぱい好きだな…
「ご心配なく。既にウィンナーは取りました」
そう言って私は自分の谷間を覗き込む。谷間では白がウィンナーを丸呑みしているところだった。
自分の子と言うだけでなんでこんなに可愛く見えちゃうんだろう…
つい、顔がニマニマしてしまう。
「やめなさいよ、自分の胸を見てニヤつくの、破廉恥よ」
最後はアンジェリカに怒られた…




